小さな町の 冬の おはなし

みるく♪

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きっかけは、幸助じいさんの昔話

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 20XX年。冬。

 正月を迎えても、どこのスキー場も雪が足りないとのニュース。
この冬も暖冬か━━と思いきや、2月になると いきなり、全国的な豪雪ごうせつに見舞われた。

 さてもさても、こんなに雪が降るのは何十年ぶりだろうか。

 ここエヌ町でも、大人たちは雪片付かたづけに大わらわだった。
その厄介やっかいなこと、この上ない。
 朝。仕事へ出かける前に雪片付け。仕事を終えた後にも雪片付け。きりがない。

 しかも雪は置き場に困る。
川に流しきれなかった残りは、とりあえず、町民広場に運び入れられていた。

 そんなある日。
朝の除雪作業じょせつさぎょうを終えた大人たちが、公民館で一服していた時のこと。
「うほん。おほん。あー。うほん」
咳払いしてから、幸助じいさんが皆に こんな提案をした。

「雪を使って、子どもたちの遊び場を作ろうじゃないか。昔、オレらの親たちも、そうしてくれたもんだ。
雪かたしは、そりゃあ難儀なんぎだ。
しかし、子どもらの楽しみになれば、なあんも苦ではなくなると」

「ああ。言われてみれば、そうだったねえ。
 地球温暖化ちきゅうおんだんかだとか。雪のない正月を過ごすようになって久しい。
 だがよう、オレらが子どものじぶんは11月になると初雪が降った。 翌年4月のアタマまで、雪ん中で過ごしたもんだ」

「ああ思い出したよ。懐かしいねえ。
大人衆が、オレたちの遊戯場ゆうぎじょうを作ってくれたっけ。
 かまくら。滑り台。陣取り遊びのとりで……」
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