僕の初恋の超絶美少女が僕のストーカーだった件。

kazy

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第一部

第1話 それは一週間前のこと。

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一週間前
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 それは、いつもと変わりない、学校から帰宅している途中だった。


 ……なんだか後ろから視線を感じる。

 だがまぁ、今通っている道は比較的人通りが多く、見られている、と感じてもおかしくはないだろう、と思って特に気に留めていなかった。

 我が家は、学校から20分ほど歩いたところに建っていて、いつもは友達の池田と帰るのだが、今日は池田が学校の委員会ということで一人で帰っている。
 
 少し歩くには遠いので、バスや、地下鉄などを使うべきだったのだろうが、池田といつも歩きで帰っている癖でつい、そのまま歩いて帰宅している途中である。

 


 15分ほど歩いただろうか。家まであと五分ほど歩けば着くくらいの距離だろう。

 しかし、いつもの帰り道ではなく、曲がり角の多い道をわざと通っていた。

 なぜなら、さっき感じていた視線、というよりかは、さっきから感じ続けている視線の送り主を振り払うために足早に歩いている。

 のだが、なかなか振り切れない、どころか、気持ちだんだん近づいてきているように感じた。

 これはまずい。と、思い、三つほど角を曲がったところで一気に駆け出した。

 さすがにそこまでして追いかけてこないだろう、という予想は的中し、とりあえずその日は、無事に家に帰れたのだった。

 次の日、昨日あった出来事を池田に話した。

 すると池田が少し考え込んだ後、いつもとは違う真剣な雰囲気で、口を開いた。

 「それって、ストーカーじゃないのか?」

 「いやいやいやいや、まだクラスで人気の白王子君ならまだしも、俺がストーカーされるのはさすがにないだろ」

 「いや、でも、実際昨日追いかけられたんだろ?気が付かれないようにずっと」

 それは確かに事実ではある。

 しかし、やはり自分なんかにストーカーをする人がいるのか、という点だけが頭に残っていた。

 自分で言うのも虚しくなってくるのだが、特に特技も取り柄もない至って普通の男子高校生なのだから。

 そんなことを考えながら黙りこくっていると、考えている内容を見透かしたように池田が言った。

 「お前、俺なんかに、なんて思ってんだろ?自己肯定感もっと上げろよなぁ。ほんと。お前の顔は男の俺から見ても悪いものじゃないし。それにお前に好意を抱いてる奴はわからんが、お前に対して感謝している奴は大勢いるんだぜ?」

 鋭いな、こいつ。

 いつもはぽかんとしていて馬鹿っぽくてうざったらしいのに、こういうときだけめちゃくちゃ鋭い。

 まぁ、そんなところがこいつのいいところなんだが。

 「……まぁ、そうかもしれないけど、やっぱりなぁ」

 感謝されていることは否定しない。昔っから、両親に誰からも感謝されるように生きなさい、と言われ続けてきた。すべての場面で守れていたか、と言われるとさすがにそこまでの自信はないが、大体の場面では親の言いつけを守ってこれていた、と思う。

 「……それにストーカーじゃなくて、単純に嫌がらせをするために後ろをついてきている、っていう可能性だってあるだろ?」

 「……はぁ、もういいわ。お前の自己肯定感の低さはわかった。とりあえずそいつ捕まえるぞ」

 と、なぜか自分に対して呆れたような顔で池田は言った。

 「分かった、お前がいてくれると心強いよ」

 高校ではなぜか続けていなかったようだが、中学まで池田はボクシングをやっていて、全国的にも有名な選手だったらしい。ほんとにいつもはふざけていてチャラチャラしているが、こういう時にはとても頼りになる。

 「ああ、じゃあ今日から一度委員会を休んで、お前と一緒に帰る。そんで、もし視線を感じたら俺に言ってくれ、おれが捕まえて見せる」

 珍しく池田がとても頼りに見える、なんてことは本人には言わないでおこう。

 「あ、今めっちゃ頼りになるなって思っただろっ!?」

 なんてふざけた感じで言ってきたのでああ、そうだなと、返してやった。

 本当に今日こいつ、鋭いな。

 

 
 結局、そのままストーカーは現れず、今週の学校は終わった。

 もう大丈夫だろう、ということで来週からは池田も溜まった委員会の仕事があるので一人で帰宅することを伝えると、柄にもなくかなり心配してくれていたが、渋々、といった感じで一人で帰ることになった。

 もうあれから6日ほど出ていないので正直もう大丈夫だろうと思っていた。

 しかし、その考えは大いに外れることになる。。

 一人で帰宅し始めた、まさかの一日目で視線を感じる。
 
 しかしあちらも警戒しているのか、なんとなく視線が弱い。

 だが一週間前に感じた視線と同じようなものだった。

 どうするか迷ったが、池田に迷惑をかけることはできないな、と思い、自分で捕まえようと判断した。もちろん極力安全に配慮した上で、だ。

 今更だが、警察に届ける、という手もあったが、できるだけ使いたくなかった。

 親にも心配をかけたくないし、ストーカーをしている人に一度言ってそれで終われるのなら、それが両方にとって一番いいと思うからだ。

 とりあえず、もしものために交番が近くにあり、人通りが多い、大通りの近くで捕まえよう。

 五分ほど歩くと運がいいことに完全に一致した場所を見つけられた。少し狭い裏路地の様な雰囲気だが近くにショッピングセンターがあり大通りに出るとかなり人も多い。それにこの路地をまっすぐ100メートルほど行くと同じく大通りに出て交番がある。

 一度ぐるっとあたりを回りもう一度その場所へ向かう。

 確固たる意志を持ち、ストーカーを捕まえるために。

 緊張で足が震える。心臓もこれまでにないくらい鼓動を早めている。

 捕獲スポットについた。ちょうどいい感じに隠れられる場所があったのでそこへ隠れる。しばらくすると、少し焦ったように小走りで路地裏に入ってくる一人の人物が、目の前を通ろうとしていた。

 顔はよく見えないが、服装からして同じ高校の女子だということが分かった。

 改めて警察に届けて大事にしないで良かったと感じる。

 少し先に行ったところで隠れていた場所から出て声を掛ける。

 「ちょっと君、待ってくれ」

 「!?!?」

 彼女は声を聴いたとたん、逃げ出すように走った。しかし逃げ出すと同時に背を向けて走ろうとしている彼女に、

 「そっちへ行っても交番だし、俺の友達が待ち伏せてるよ」

 なんて、嘘をついたが効果は抜群だったようで、びくっ、と動きを止め、まるでロボットのようにギギギ、なんて効果音が出そうな様子でこちらを向いた。

 しかし、一つ、予想もしてなかったことが起きた。

 「……さやまさぁぁぁぁぁんんんん!?」

 そう、冒頭にも出た通り、俺にストーカーをしていたのは、初恋相手の佐山さんだったのだ。 
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