行き遅れた私は、今日も幼なじみの皇帝を足蹴にする

九條葉月

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ぴしゃーん


「――てぇい」

「あいたっ」

 子猫に続き、阿呆なことをほざいた雪花の頭に手刀を叩き込む。まったくもーこの子は……。

「うぅ、私と対応が違いすぎるっす……」

 身体を痺れさせながら文句を付けてくる子猫だった。日頃の行いね。……雪花も日頃の行いは別に良くはないか。

 ため息をついてから、周囲の状況を確認。

 集まった妃や侍女たちはざわついていた。まぁ、そりゃそうよね。

 ちなみに瑾曦様はとても愉快そうな顔をしていた。まぁ、そりゃそうよね。

 で、海藍様はというと――ものすごーく嫌そーな顔でこちらを睨み付けてきていた。まるで害虫に向けるかのような美人台無し顔。

 そもそもなんで海藍様がこんなところにいるのか。私の借りている宮に移動していた雪花と鉢合わせするとか、まるで私の宮に用事があった・・・・・・・・・・みたいじゃない?

 ま、そんなわけないか。海藍様から呼び出すならともかく、海藍様が私に会いに来るだなんて。

 海藍様が何を考えているかはとりあえず置いておくとして。今は雪花が考え無しに行動した結果すごいことになった雰囲気を何とかしなくちゃね。……この子の場合は色々考えた結果としての行動でもおかしくないのが怖いのだけど。

 衆人環視の目は私と雪花に向けられていて。驚きとか訝しみとか敵意の目が向けられている。何か言い訳したところで納得してくれそうもない。というか言い訳しても雪花が即座に否定してきそうな。さらにいえば群衆は私たちを取り囲んでいるので脱出するのも一苦労。

 うーん……。
 悩む私が視線を漂わせると、相変わらず愉快そーな顔をした瑾曦様と目があった。助けてくれる気は……なさそうですね。

 これは、あれだ。瑾曦様の近くに雷落としてやりましょうか。見物を決め込んでいる彼女への報復……じゃなくて、雷が落ちればみんな逃げるでしょうし。

 というわけで。雷魔法を発動するために右手を掲げ、雷気を集めていると――

 ――ぴしゃーん、っと。

 落雷した。
 掲げた右腕に。

「ひぎゃあ!?」

「ぴぁああ!?」

 被雷した私と、私に抱きついていた雪花が叫び声を上げる。

「きゃあ!?」
「雷よ!」
「晴れているのに! なんて恐ろしい!」
「きっと道士が雷を呼んだのだわ!」

 我先にと逃げ出す妃や侍女たち。まぁそりゃあ落雷したら逃げるわよね。次は自分に落ちるかもしれないし。というか誰が道士か。

 ……あれ? 落雷はしたけど痺れはないわね? というか掲げた右手に異物感が?

 手中で何かが蠢いている。
 私がおそるおそる自分の右手に視線を向けると――

『――モォ!』

 まるで牛のような鳴き声を発していたのは……小動物。

 小さな頭。
 つぶらな瞳。
 細長い胴体に、短い手足。そして長い尻尾。

 イタチ?
 いや、テンかしら? そういえばテンを『雷獣』とする地域もあるんだっけ?

 あら、それじゃあもしかして……この子が雷獣とか?

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