84 / 92
あとしまつ・1
しおりを挟むなんかよく分からないけど、私は魔力を暴走させてしまったらしい。意識を取り戻すなり、滅茶苦茶に破壊された店内で、カラック様から懇々とお説教をされてしまった。
魔力暴走の原因はアリスとかリュヒト様だと思うのに。お店を壊したのは私の魔力風じゃなくてアリスとゴロツキなのに……。
…………。
……いや、もしかしたら私の破壊の方が規模が大きかったかもしれないけどね♪
ちなみに店舗についてはクロちゃんが魔法で直してくれた。以前『すぱーん』と切れてしまった作業台を元通りにしたみたいに。
カラック様はむしろクロちゃんに興味を抱いたようで、猫vs人間の追いかけっこをしながらどこかに行ってしまったので私へのお説教も中断された。そういう意味でもグッジョブよクロちゃん。
アリスとゴロツキたちは破壊行為の咎で逮捕され、牢屋に入れられてしまったのだとか。もちろん、アリスは王城の地下にある貴族用の牢屋らしいけど。
お店はクロちゃんのおかげで元に戻ったのだし、お店の破壊行為の罪で罰を受けさせるのはどうなのかなーっとは思ったけど、まぁ、アリスも反省するいい機会なんじゃないかしら? 伯爵令嬢なんだからそんな重い罪にはならないでしょうし。
とにかく。
こうして一応の解決をしたので、私はまたお花屋さんとしての日常に戻ったのだった。
戻った、はずだったのだけど……。
◇
「――というわけで、王宮へとご招待しよう」
いきなり現れてそんなことを宣ったのはクルード王太子殿下。相も変わらず冗談が下手な御方である。
「……相変わらず、冗談が下手……?」
なぜだか精神的ショックを受けているっぽい。相も変わらず打たれ弱い御方である。
「ぐっ、と、とにかく。今から一緒に王宮へ来て欲しいんだ」
「……なるほど、理解しました」
「ほんとに理解してる?」
「えぇ。つまりは妹が犯した罪で私も連座(連帯責任)。王宮の地下にあるという地下牢に叩き込まれてしまうんですね?」
「う~んやはり理解していなかった」
「理解していない、つまりは違うとなると……あぁ、貴族の処刑は王宮で行う場合もあったそうですし、それですか?」
「それではないですね」
なぜか敬語の殿下だった。
「誰かに謁見するわけではないが、一応王宮に入るのだからね。ちゃんとしたドレスはこちらで用意させてもらったよ。何着か持ってきたし、サイズ調整ができるものばかりだから何とかなるだろう」
殿下が両手を叩くと、店の外に停めてあった荷馬車から数人のメイドさんが降りてきた。ドレスが入っているっぽい箱を手にしている。
あれ? もしかして、これからドレスに着替えて王宮に行くの……? 平民になった私が? 貴族令嬢時代もほとんど行ったことがないのに? 前世的に言えば仕事中に皇居とかバッキンガム宮殿に連れて行かれるようなものですよ?
「大丈夫だよ、私が付いているんだからね」
にっこりと笑った殿下は悪魔にしか見えなかった。
◇
素顔の私は銀髪で、それなりの顔をしているらしい。
ただし銀髪は悪目立ちするのを恐れたお母様によって魔導具の髪紐が与えられ、くすんだ茶髪になっている。
顔についてはお母様に似ている顔を父親が疎んでいたので、これまた魔導具の眼鏡によってモブ顔に見えるようにしていた。だからたぶん義母もアリスも私の真の姿は知らないはずだ。
で。
今の私は眼鏡を取った素顔に、銀髪という姿で馬車に押し込まれていた。もちろん服装は殿下が持ってきたドレスである。めっちゃキラキラしているし肌触りもいい。これ、お高いヤツなのでは……?
「女性にドレスを送るのは男の使命だからね。値段については気にしなくてもいいよ」
と、いかにも女性にドレスを送り慣れていそうな発言をする殿下だった。
「……私がドレスを送ったのは、シャーロットだけだよ?」
「え? それって……」
真っ直ぐに私を見つめてくる殿下。どうやら嘘ではないっぽい。学生時代からあれだけの貴族令嬢を口説いてきた殿下が、ドレスを送ったのは私だけ?
「つまり、私が特別な存在であると?」
「うん、そうなるね」
「まさか、あまりのみすぼらしさに同情され、ドレスを送ってくださるとは……」
「う~ん、違うかな?」
懇々と。私がいかに特別で、どれだけの思いを込めてドレスを送ったのか説明してくださる殿下だった。私が気にしないようここまで心を砕いてくださるとは、これが未来の国王陛下(予定)の器か……。
っと、それはともかく。せっかくメイドさんにお化粧をしてもらって、髪も櫛で梳いてもらったところ恐縮なのですが、そろそろ眼鏡と髪紐を返していただいてよろしいですか?
「ダメだね」
「なんでです?」
「とりあえず、王宮に行く間はその格好でいてもらおうかな? もちろん花屋をするときは今まで通り変装してもらってもいいんだけど」
「どういうことですか?」
銀髪は高位貴族などから利用されることを防ぐため。眼鏡は父親や義母から身を守るため。どちらも必須の装備なのだけど……。
「まずは『銀髪』について説明しようか。……あのとき、魔力の暴走は押さえ込んだが、現場にいた騎士や周辺住民には広く知られることになったし、シャーロットの銀髪姿も多くの人に目撃されてしまった」
「あー」
そういえば、あのとき意識を取り戻したら眼鏡も髪紐も外れていたっけ。どうやらリュヒト様が外してしまったみたい。まぁあの人は裸眼フェチだからしょうがないわよね。
「そこでだ。もはやシャーロットの『銀髪』は隠し通せないと判断したので、騎士団や王宮には『銀髪持ちが暴漢に襲われ、自分の身を守るために魔力を暴走させてしまった』という説明をしておいたんだ。幸いにして王宮や魔導師団ではあの膨大な魔力は観測されなかったし、証言だけではどれだけ膨大な魔力だったかは分からないからね。そういうことにしておくのが一番シャーロットにとってマシだと思うんだ」
「あ、はぁ、なにやら色々と心を砕いていただいたようで?」
なんか私がのんびりお花屋ライフを続けている間にも色々と動いてくださっていたみたい。有難くもあり、申し訳なくもあり。殿下への好感度が三つくらい上がった私だった。
「……参考までに。現在の好感度を聞いてしまってもいいかな?」
あはははは。まさかそんな恐れ多い。あはははははは。
※第17回ファンタジー小説大賞応募中です! 投票していただけると嬉しいです!
ブックマーク、ご感想などお待ちしております
359
あなたにおすすめの小説
【完結】番である私の旦那様
桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族!
黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。
バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。
オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。
気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。
でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!)
大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです!
神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。
前半は転移する前の私生活から始まります。
【完結】天下無敵の公爵令嬢は、おせっかいが大好きです
ノデミチ
ファンタジー
ある女医が、天寿を全うした。
女神に頼まれ、知識のみ持って転生。公爵令嬢として生を受ける。父は王国元帥、母は元宮廷魔術師。
前世の知識と父譲りの剣技体力、母譲りの魔法魔力。権力もあって、好き勝手生きられるのに、おせっかいが大好き。幼馴染の二人を巻き込んで、突っ走る!
そんな変わった公爵令嬢の物語。
アルファポリスOnly
2019/4/21 完結しました。
沢山のお気に入り、本当に感謝します。
7月より連載中に戻し、拾異伝スタートします。
2021年9月。
ファンタジー小説大賞投票御礼として外伝スタート。主要キャラから見たリスティア達を描いてます。
10月、再び完結に戻します。
御声援御愛読ありがとうございました。
【完結】さようなら。毒親と毒姉に利用され、虐げられる人生はもう御免です 〜復讐として隣国の王家に嫁いだら、婚約者に溺愛されました〜
ゆうき
恋愛
父の一夜の過ちによって生を受け、聖女の力を持って生まれてしまったことで、姉に聖女の力を持って生まれてくることを望んでいた家族に虐げられて生きてきた王女セリアは、隣国との戦争を再び引き起こした大罪人として、処刑されてしまった。
しかし、それは現実で起こったことではなく、聖女の力による予知の力で見た、自分の破滅の未来だった。
生まれて初めてみた、自分の予知。しかも、予知を見てしまうと、もうその人の不幸は、内容が変えられても、不幸が起こることは変えられない。
それでも、このまま何もしなければ、身に覚えのないことで処刑されてしまう。日頃から、戦争で亡くなった母の元に早く行きたいと思っていたセリアだが、いざ破滅の未来を見たら、そんなのはまっぴら御免だと強く感じた。
幼い頃は、白馬に乗った王子様が助けに来てくれると夢見ていたが、未来は自分で勝ち取るものだと考えたセリアは、一つの疑問を口にする。
「……そもそも、どうして私がこんな仕打ちを受けなくちゃいけないの?」
初めて前向きになったセリアに浮かんだのは、疑問と――恨み。その瞬間、セリアは心に誓った。自分を虐げてきた家族と、母を奪った戦争の元凶である、隣国に復讐をしようと。
そんな彼女にとある情報が舞い込む。長年戦争をしていた隣国の王家が、友好の証として、王子の婚約者を探していると。
これは復讐に使えると思ったセリアは、その婚約者に立候補しようとするが……この時のセリアはまだ知らない。復讐をしようとしている隣国の王子が、運命の相手だということを。そして、彼に溺愛される未来が待っていることも。
これは、復讐を決意した一人の少女が、復讐と運命の相手との出会いを経て、幸せに至るまでの物語。
☆既に全話執筆、予約投稿済みです☆
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
【完結】特別な力で国を守っていた〈防国姫〉の私、愚王と愚妹に王宮追放されたのでスパダリ従者と旅に出ます。一方で愚王と愚妹は破滅する模様
岡崎 剛柔
ファンタジー
◎第17回ファンタジー小説大賞に応募しています。投票していただけると嬉しいです
【あらすじ】
カスケード王国には魔力水晶石と呼ばれる特殊な鉱物が国中に存在しており、その魔力水晶石に特別な魔力を流すことで〈魔素〉による疫病などを防いでいた特別な聖女がいた。
聖女の名前はアメリア・フィンドラル。
国民から〈防国姫〉と呼ばれて尊敬されていた、フィンドラル男爵家の長女としてこの世に生を受けた凛々しい女性だった。
「アメリア・フィンドラル、ちょうどいい機会だからここでお前との婚約を破棄する! いいか、これは現国王である僕ことアントン・カスケードがずっと前から決めていたことだ! だから異議は認めない!」
そんなアメリアは婚約者だった若き国王――アントン・カスケードに公衆の面前で一方的に婚約破棄されてしまう。
婚約破棄された理由は、アメリアの妹であったミーシャの策略だった。
ミーシャはアメリアと同じ〈防国姫〉になれる特別な魔力を発現させたことで、アントンを口説き落としてアメリアとの婚約を破棄させてしまう。
そしてミーシャに骨抜きにされたアントンは、アメリアに王宮からの追放処分を言い渡した。
これにはアメリアもすっかり呆れ、無駄な言い訳をせずに大人しく王宮から出て行った。
やがてアメリアは天才騎士と呼ばれていたリヒト・ジークウォルトを連れて〈放浪医師〉となることを決意する。
〈防国姫〉の任を解かれても、国民たちを守るために自分が持つ医術の知識を活かそうと考えたのだ。
一方、本物の知識と実力を持っていたアメリアを王宮から追放したことで、主核の魔力水晶石が致命的な誤作動を起こしてカスケード王国は未曽有の大災害に陥ってしまう。
普通の女性ならば「私と婚約破棄して王宮から追放した報いよ。ざまあ」と喜ぶだろう。
だが、誰よりも優しい心と気高い信念を持っていたアメリアは違った。
カスケード王国全土を襲った未曽有の大災害を鎮めるべく、すべての原因だったミーシャとアントンのいる王宮に、アメリアはリヒトを始めとして旅先で出会った弟子の少女や伝説の魔獣フェンリルと向かう。
些細な恨みよりも、〈防国姫〉と呼ばれた聖女の力で国を救うために――。
異世界の片隅で、穏やかに笑って暮らしたい
木の葉
ファンタジー
『異世界で幸せに』を新たに加筆、修正をしました。
下界に魔力を充満させるために500年ごとに送られる転生者たち。
キャロルはマッド、リオに守られながらも一生懸命に生きていきます。
家族の温かさ、仲間の素晴らしさ、転生者としての苦悩を描いた物語。
隠された謎、迫りくる試練、そして出会う人々との交流が、異世界生活を鮮やかに彩っていきます。
一部、残酷な表現もありますのでR15にしてあります。
ハッピーエンドです。
最終話まで書きあげましたので、順次更新していきます。
[完結]困窮令嬢は幸せを諦めない~守護精霊同士がつがいだったので、王太子からプロポーズされました
緋月らむね
恋愛
この国の貴族の間では人生の進むべき方向へ導いてくれる守護精霊というものが存在していた。守護精霊は、特別な力を持った運命の魔術師に出会うことで、守護精霊を顕現してもらう必要があった。
エイド子爵の娘ローザは、運命の魔術師に出会うことができず、生活が困窮していた。そのため、定期的に子爵領の特産品であるガラス工芸と共に子爵領で採れる粘土で粘土細工アクセサリーを作って、父親のエイド子爵と一緒に王都に行って露店を出していた。
ある時、ローザが王都に行く途中に寄った町の露店で運命の魔術師と出会い、ローザの守護精霊が顕現する。
なんと!ローザの守護精霊は番を持っていた。
番を持つ守護精霊が顕現したローザの人生が思いがけない方向へ進んでいく…
〜読んでいただけてとても嬉しいです、ありがとうございます〜
転生調理令嬢は諦めることを知らない!
eggy
ファンタジー
リュシドール子爵の長女オリアーヌは七歳のとき事故で両親を失い、自分は片足が不自由になった。
それでも残された生まれたばかりの弟ランベールを、一人で立派に育てよう、と決心する。
子爵家跡継ぎのランベールが成人するまで、親戚から暫定爵位継承の夫婦を領地領主邸に迎えることになった。
最初愛想のよかった夫婦は、次第に家乗っ取りに向けた行動を始める。
八歳でオリアーヌは、『調理』の加護を得る。食材に限り刃物なしで切断ができる。細かい調味料などを離れたところに瞬間移動させられる。その他、調理の腕が向上する能力だ。
それを「貴族に相応しくない」と断じて、子爵はオリアーヌを厨房で働かせることにした。
また夫婦は、自分の息子をランベールと入れ替える画策を始めた。
オリアーヌが十三歳になったとき、子爵は隣領の伯爵に加護の実験台としてランベールを売り渡してしまう。
同時にオリアーヌを子爵家から追放する、と宣言した。
それを機に、オリアーヌは弟を取り戻す旅に出る。まず最初に、隣町まで少なくとも二日以上かかる危険な魔獣の出る街道を、杖つきの徒歩で、武器も護衛もなしに、不眠で、歩ききらなければならない。
弟を取り戻すまで絶対諦めない、ド根性令嬢の冒険が始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる