127柱目の人柱

ど三一

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学舎編 一

雷蔵と他夏の部屋

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学舎は二階以上が神様候補達の寝泊りする部屋となっており、雷蔵と他夏の部屋は西棟五階階段から四部屋目にある。ナジュは初めて三階から上に昇り、その様相を眺める。内装はどの階も殆ど変わりないが、窓から見える景色は高く、隣町の向こうまで見渡せて景色がいい。三階と同様にシンと静まり返っており、あまり人の気配はしない。きっと隣町を見物しに行っているのだろうとナジュが思っていると、二人の部屋の一つ奥、隣部屋の戸が開いた。そこから四人組の神様候補が出てきて、隣の部屋の前に居るナジュ達を見て少し驚いた顔をした。

(何だ…?)

ナジュが違和感を覚えていると、その神様候補達は特に声を掛けるでも無かったが、眉間に皺を寄せてナジュ達というより雷蔵を横目で見ながら隣を通り過ぎて階段を下って行った。それまで静かだった四人組だが、階段を降り始めて姿が見えなくなると、わいわいと楽しそうに会話をし始める。神様候補同士はもっと殺伐とした関係性だと思っていたナジュは、その和気藹々とした様子を見て意外に思った。

(もう色んな所で関係が出来てんだな…あいつらはそれぞれ目指す座が違うのかな…?仲良くなった奴と競うのは、心苦しい部分もありそうだが……)
「ここだ。まだ片付けが済んでいなくて、荷物がそこらに散乱しているが気にするな」

雷蔵は懐から二本の鍵が着いた輪を取り出した。それはナジュの部屋の鍵と同じ材質であったが、飾りの部分に“西五四“と彫られており、どうやら西棟は鍵それぞれに棟と階層、部屋の番号が記されているようだ。ナジュの持つ東棟の鍵はそういったどの部屋の鍵だと判別できる特徴は無い。輪についたもう一本の鍵を見ると、そちらにも西五四の刻印があった。部屋の鍵は雷蔵が他夏の分も管理しているようである。雷蔵が部屋を開錠し戸を開けると、他夏がふらふらと中に入って行って二つある寝床の片方に寝転んだ。ナジュも雷蔵に続いて中に入ると、複数の葛籠が部屋に点在していた。蓋が開いて中が見えている物や衣服が掛けられている物。部屋に相応しくない美しい調度品の数々が、斜めになって雑に箪笥の上に並べられていた。

「適当にそこらの頑丈そうな葛籠にでも座れ。箪笥の上の品は他夏の物だから、横切る時はぶつからないよう気を付けて歩けよ」
「…えらい高そうな品だな」
「御手付き様に与えられる対価だ。……もう他夏は御手付き様じゃなくなって、俺達配下が暮らす小部屋に移った。流石に元御手付き様だから雑魚寝は出来ない。貰ったのは一人部屋だが、屋敷に残しておくと欲が出て盗む奴がいるかもしれないだろ。盗まれたって他夏もこんなんだから宿舎まで持って来た」

そう言うと雷蔵は、早々に眠ってしまった他夏に布を掛けてやり、空いているもう一方の寝床に腰掛けた。ナジュは部屋の中をぐるりと見て、出入り口の横にあった大きい葛籠が頑丈そうであったので、そちらをぽんぽんと叩いて強度を確かめてから座った。
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