「ぜひとも死んでくれ」

中田 絢学(なかた けんがく)

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成人式

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    誠土は体育館前に着いた。家から程遠くはないが、母は誠土を精神異常とでも思っているのか学校までついて行ってやろうかと聞いたがもちろん誠土は断った。誠土は黒色のスーツに黒色のネクタイをしており、髭は剃ったが髪は切らなかった。まるで葬式にでも行くかのように飾りのない服装であった。少し太ったのか腹回りが苦しいような気がするが許容範囲内であった。誠土は少し緊張しながら物理的にも気持ち的にも重たい体育館の扉を開ける。中はやはり華やかであり、休み時間の学校のように人の喋り声や笑い声が入り交じっていた。誠土は混乱し、呼吸が荒くなった。しかしすぐに目的を思い出して小鳥遊を探すことを決めた。沢山の人をかき分け小鳥遊を探すが見つからない。小鳥遊か誰かに名前を呼ばれるのではないかと希望を抱きながら彷徨う、いずれ体育館の舞台が見え始めた。どうやら反対側まで来てしまったようだ。まさか小鳥遊は土壇場で来なかったのではないかと、自己中心的な怒りを感じた。しかし入って来た方向から「誠土?」と声がした。振り返って見るとそこには薄赤色のスーツを着た一際目立つ男がいた。誠土はアワアワしながら「まさか、小鳥遊か?」と問うと、男は首を縦に降り「そうだよ。久しぶり!元気してた?」と答えた。誠土は更に動揺してしまい小鳥遊に慌てて質問する。「お前、その格好は?いまは何やってんだ?」小鳥遊は丁寧に。「この格好はちょっとやり過ぎたかな?俺は高卒で○○会社に入社して普通にサラリーマンだけど。お前は医大で頑張ってるらしいじゃん。」小鳥遊が言い放った会社は誰もが名を知る大手会社であり、誠土はハイエナに負けたとに恥じた。そして何故医大に進学したことを知っているのか不思議になった。恐らく母が教えたんだろう。そうしていると「小鳥遊じゃん。」と新たに誰かやって来た。誠土は誰が来てもどうでもいいと思っていたが記憶に残っていた憎らしい顔を見た瞬間思い出した。雨宮であった。雨宮は真面目とは言えないやんちゃな奴で、クラスメイトからも先生からも好かれていた。真面目である自分が好かれず、やんちゃでうるさい雨宮が好かれていた事に納得できず。雨宮が嫌いであった。しかも雨宮の家は誠土の家から近く、友達と遊びに行くのを見ると恨めしくなった。ある時、休み時間に誠土は雨宮に「うるさいから静かにしろよ。」と言った。しかし雨宮が「休み時間なんだならうるさくしていいだろ。」と正論放った。それに対して真っ赤になった誠土は雨宮を殴ったことがある。誠土はクラスメイトと先生に責められたがその時でさえ納得はしなかった。その一連の屈辱を誠土は思い出し、雨宮に対する憎悪がこみあげてきた。雨宮は誠土に気づき「あ、誠土か。」と言った。小鳥遊は雨宮と誠土について紹介しはじめた。「おう雨宮!誠土覚えてるよな?コイツ難関の医大行ったらしいぞ!スゲェよな。んで誠土も覚えてるよな?コイツ△△大学(難関大学)に受かって彼女もできたらしいぜ。もう俺の周り幸せもんばっかで嬉しいよ。」と言った。誠土は小鳥遊の時以上の羞恥と絶望を感じ、心がほとんど虚無に達してしまった。すると誠土の目に色が無くなってしまった事に小鳥遊が気づき、雨宮と誠土を引き離そうとした瞬間誠土はポツリとこんなことを言い出した。「俺、死んだ方が良いかも。」小鳥遊と雨宮はそれを聞いて唖然としてしまった。小鳥遊は「おい、そんな事言うなよ。」と言った。雨宮は何も言わない。誠土は雨宮に聞いた「お前もそう思うだろ。俺こんだけ人生棒に振ってんだ。社会のゴミだ。死んだ方がいいだろ?」と言った。誠土は雨宮に優しい言葉を求めた。しかし雨宮は言った。「そうだな。ぜひとも死んでくれ。」と。誠土は頭が爆発したかのように真っ白になり、雨宮を突き飛ばした。小鳥遊は誠土が雨宮に殴りかかると思った。しかし誠土は雨宮の隣を通り過ぎて人混みをかき分けながら体育館を出ていってしまった。まさかと思い雨宮と小鳥遊は急いで誠土の後を追って探すが見失ってしまった。小鳥遊は急いで警察に相談しに行った。
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