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◾️◾️ フタツヌク公国

「ふむ…しくじったな。ミツーヌよ」

「お許しくださいニドー様、この者が王子ヨンガルを亡き者にしたと、今まで嘘をついておりました」

「王妃様、よくもそんな…ニドー様。私は嘘などついてはおりませぬ、部下が最期まで仕留めなかった、、ぁぁぁ」

 王妃の言葉を慌てながら否定し、弁明をしていたサリエルの首が喋りながら床を転げて絨毯を血に染めた。それを目の当たりにしたミツーヌが引き攣りながら叫ぶ。

「ひぃぃ…命ばかりは、、お慈悲を」

 自分も床を血で染めてしまうのかと思い、震えながら命乞いをするミツーヌ元王妃だった。

「私はな、役立たずを生かしておく無駄が大嫌いなのだ。ミツーヌよ、紛いなりにも我が妹として特別に最後のチャンスをやろう。5つの光のうち、ひとつでも消してこい。さすればこの地での安住の日々を約束してやろう」

「有難き幸せ、、、して5つの光とは…?」

「無能な奴よのう…サンジェルマンの双子、ヨンガルとその妹フォーシス、そしてイーチバァーンのムツキだ。さぁ行ってこい、その首を掛けてな。戻ってこなければ、そちの息子の命はないと思え。分かったかッ!」

 返事をそこそこに転がるように部屋を逃げだすミツーヌを憎々しげに眺めたニドーがニマリと表情を変えた。

「どうせ大した役にも立たないだろう、隠し玉の活性化を遂にする時が来たようだな、フタツヌクがこの世界をひとつにして支配するのだ、フハハハハ」

□□□ シヨーヌ

 まるでシヨーヌの国全体が明るさを取り戻したようだった。陰鬱な支配から解かれた街は華やいでいる。

「次の解放はサンジェルマン、君たちの故郷だ。共に力を合わせて取り組もう」

 王座からヨンガルが語る。それにサンノロが答えた。

「ヨンガル王よ、我ら兄弟にお力添え頂けたら故郷の解放は容易いでしょう、我らの父上も分かってくれるはず」

「すぐにでも出発しようぞ、スリーン」

「サンノロ兄さん、サンジェルマンには既に交渉の特使を送ってある。ファイゴならばうまくやってくれるはずだ。交渉の結果を待つその間にフタツヌク攻略を考えよう」

◾️◾️ サンジェルマン

「サンジェルマン王よ。既に戦わずして勝敗はついておりまする、新しき時代へと歩み出しましょう」

 シヨーヌ国特使としてファイゴが謁見している。

「その者、このワシに王位を明け渡せと申すか?」

「その通りでございます。双子のご子息のどちらでも跡目をしっかりと継いで下さるでしょう」

「ぐぬぬ、王を見限った息子などに渡さぬ…渡さぬぞ」

 謁見の間に不穏な空気が流れ込んできた。

「まさか、この妖気…」

 ファイゴは只ならぬ雰囲気を敏感に感じ取っていた。

「既に汚されていたか、残念だ。ひと筋縄ではいかなかった」
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