お〜の〜

秋庭海斗

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きんのおのぎんのおの

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正直者には良い事がある…らしい。

ひと知れぬ山深い秘密の研究所の
そばにそれはそれは美しい湖がある。

さしたる広さはないのだが、
たたえる水の美しさと透明度は
神秘の湖と称しても差し支えない。

ここには湖の精・妖精さまが住んでいる。
澄んだ水に住んでいる妖精だ。
よく女神と間違われる、そんな時は
出現の要請があってもシカトする。

元来、妖精にはヒネくれた奴が多い。

◾️◾️◾️

湖畔には、ごく稀にキコリがやって来て
木を切り倒しては、エンコラせと木材を
切り出していく。

妖精は、カンカンと斧を打ち込む音が
迷惑な騒音に感じ、腹立たしかった。

どぼッ~ん

派手な水音が水面でしたかと思うと
木こりが使うギラギラのどデカい斧が
頭の上に落ちて来た。

あっぶねぇ~!

スンデのところで衝突を回避した
妖精が顔を真っ赤に染めて怒る。

怒りに任せて、妖精が使う金と銀の
斧を掴むと水面へと浮上した。

「お前が落としたのはコレか?」

どデカい鉄の斧を差し出して
岸辺で斧を探す木こりに問い質した。

「その通りです、それが私のです」

申し訳なさそうに木こりが答える。
頭に血の上った妖精が後先考えずに
手にした鉄斧を男をめがけて投げる。

〈コレでもくらえッ〉

妖精は言葉にこそ出さなかったが、
斧に当たって怪我しろと願った。

幸か不幸か妖精の非力さでどデカい
鉄斧は木こりの目の前にボトりと
落ちる結果になった。

「ああ、女神さま、ありがとう」

男は優しく拾って戻してくれたと思い
感謝の言葉を口にして拾い上げた。

〈きぃ~ッ!くやしいッ〉

斧が当たるどころか、易々と拾い上げ
あまつさえ、女神だとッ⁉︎

妖精の怒りは最大限を迎えた。

手にした金の斧、銀の斧も投げつけ
男にブチ当てようとしたが
思うようにはならなかった。

「ありがたい、女神さま
これらも、もらっていいのですか?」

やけっぱちの妖精は言い放った。

「勝手に持っていきやがれ!」

□  □  □

それ以来、この湖はお宝を手に入れられる
不思議な場所として大小様々な斧が
毎日、投げ入れられポイントと化した。

湖の底で降り注ぐような危険な斧を
右に左に避けながら、妖精は怒りに
任せて斧を投げ返した事を反省した。

「欲の深い人間どもめ」
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