バッシング

秋庭海斗

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かぶりものとかぶきもの

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ふ、、、狐。

 私は悪くない私は悪くない私は悪くない
3回唱えたらあら不思議。悪くない気分。

◾️◾️◾️

 虎の皮が落ちている…
どう見ても虎でもなく虎の死体でもなく
虎の完璧な毛並みを残した虎革だ。

「は? ドゆコト?」

 キツネは一旦通り過ぎて立ち止まり
もう一度振り向いてその落とし物を
注視した、比喩の如く穴が開くくらい。

〈トラ、、、の、、、かわ
これは私のコレからを変える万能の
アイテムだわ、正に改革よ〉

 キツネは、サッと虎の革を拾い被った。

 身に纏うと果てない妄想が湧き上がる。

《これで、か弱い動物たちからは崇められ
今まで私を馬鹿にしていた奴らは恐れ慄き、
腰を抜かさんばかりに逃げ出すだろう。
 そうしてあわよくば、動物の王として君臨し
この世界を我が思い通りに動かせる》

 キツネが思い描いた身震いするほどの覇権、
輝かしい未来が今ここにやって来た。

 キツネは、落ちていた虎の革を
自分のものにすることにした。
 自分は狐なのに猫ババすることには
罪悪感も有ったが例の呪文を唱えた。

「私は悪くない悪くない悪くない…
落ちていた物は拾った者のモノなんだ」

 ほら、もう罪悪感はかき消えて、
輝かしい未来しか見えなくなった。

□  □  □

 さっそく、キツネは虎になりきって、
ノシノシと動物たちの前に現れた。
 キツネが大きな声で号令を…
掛けようとした時である。

 木の枝に居たシマリスが眼下の
トラのようなものに話しかけた。

「あら、キツネさんたら、
それは、トラのコスプレなの?
なかなか、奇抜ですわね」

 キツネは、木の上を見上げて言う。

「でしょでしょ、カワいいでしょ。
あそこの道端に落ちていたのよ。
ちょっと被ったみただけなの、
でもワタシには似合わなかったわ」

 そう言い残すと慌てて革を脱ぎ捨て
一目散に森の中へと走り去った。

「大恥をかくところだったわ、危なかった」

 虎狩りの猟師が入れ違いにそこに現れた。

「何だか虎がいたように見えたが逃げたか、
もう一息で撃ち殺せたのに惜しかった」

 周りから評価されない自分に分不相応な
行為はすぐに見破られて、下手すると
致命的な攻撃を受けることになる。

ふ、、、きつね…

 君よ、現代社会の狐になることなかれ。
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みんなの感想(2件)

2022.04.11 ユーザー名の登録がありません

退会済ユーザのコメントです

2022.04.13 秋庭海斗


かにさん
感想をありがとうございます

解除
万事サイオウ

某過激なざまぁを書いて炎上させてる作者の話を思い出しました。
悪口によって読者連帯感を煽る作者は、本当よくないですよ、本当。

2022.04.08 秋庭海斗


 ご感想ありがとうございます。

解除

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