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第2章 共同戦線

やっぱりクリスマス

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2作目を見終わったところで、そろそろ夕食の支度を始めようということになった。

泊めてもらっているのだから、私が積極的に料理をしなければ。
広いキッチンでいつもよりテンションが上がる。

流石にローストチキンはハードルが高かったので、簡単なオーブン料理を作ってみる。フライパンで塩胡椒で下味をつけた鶏のモモ肉に焼き色をつけて、輪切りにしたトマトと玉ねぎの上に乗せてさらにチーズをかけてオーブンでじっくり焼く。
焼いている間に、かぼちゃのポタージュを作る。レンジで温めたかぼちゃの皮を除き、牛乳、生クリームと一緒に潰しながら煮る。仕上げにコンソメ、塩胡椒で味を整える。
サラダは簡単にオリーブオイルと酢でドレッシングを作り、おつまみはクラッカーの上にチーズとスモークサーモンを乗せる。


気合いを入れて色々作ってしまった。食べきれない分は明日のお昼にでもしよう。

五十嵐くんも手伝ってくれたので、品数の割に早く作ることができた。

テーブルに料理を並べて、いよいよ食べようという時になって緊張してきた。今まで人に料理を作ることがあまりなく、五十嵐くんの口に合うだろうか心配になってきたのだ。

「味薄くない?大丈夫?」
気になって聞いてしまう。
「大丈夫、美味しいよ。朝霞さん、料理上手なんだね。」
五十嵐くんが笑いながら言ってくれた。その笑顔に心の中が暖かくなったような気がした。
その言葉に、嬉しくなってしまう。

その言葉は本当だったようで、作りすぎかと思った量もペロリと完食してくれた。


世間から見たら、私達は恋人同士に見えるだろう。だけど、私達が恋人同士になることはきっとない。なぜなら、五十嵐くんは絶対に恋人の距離に入ってくることはないのだから。彼が私と一緒にいるのは余計な人間関係で悩まないためだ。もし私が五十嵐くんの彼女になろうとしたら、きっと彼は距離を置こうとするだろう。だから、私も踏み込まない。私達はこれ以上近づくことなく、クリスマスが終われば元の関係に戻る。それでいいと思っている。でも、本音を言える人がいなくなるのは、少し寂しいと思った。
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