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冒険はお姫様抱っこのままで

回想 冒険

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真魚達は、真魚達の定宿に移動する。
真魚は、壁にお姫様抱っこされて移動してる。
お雪は複雑な思いで二人の後をついていく。
(まあ、仕方ないわよね。歩けないんだもの。嫉妬するのは良くないわ)
そう自分に言い聞かせるがやはり心穏やかではない。
「壁さん、受付に」
「うむ」
「おじさん、一人部屋から二人部屋変更して欲しいの」
えっ?一人部屋だった?
「おう!わかったぜ!これが鍵だ」
宿屋の主人が部屋の鍵をなげてよこす。
え?壁と同じ部屋に寝てるの?!え?どういうこと?!雪乃は混乱しながら様子を見守るしかなかった。(大丈夫!大丈夫!変な意味じゃないから!安心して!)
「ありがとう」
真魚は、壁の腕の中だと言うのに笑顔で器用にキャッチする。
雪乃は呆気に取られていると壁が立ち止まる。
その瞬間、真魚は飛び降りると、お雪の手をとり歩き出した。
二人は階段の方へ。
雪乃は訳がわかんないまま、真魚についていくと、そこは2階の一番端の部屋であった。
鍵を空けて入って行く。
「お雪さんも、早く」
真魚が手招きをしてる。
お雪は部屋の中に入る。
壁が真魚を、ベッド下ろす。
「じゃあ、また後で」と言って部屋を出ていく。
「お雪さんも座ってください」と隣の空いた場所を示す。
戸惑いながらも言われるまま腰かける。
「壁は?どこへ?」
外で立ったまま寝てます。と言われ唖然とする。そんな雪乃をお構いなしに真魚は話し出す。
「私ももう一部屋とって休んでと言ったんだけど無駄だと言って」
「らしいと言うか…」
思わずクスリと笑ってしまう。
そう、そういう男なのだ彼は、昔から変わらない、そしてそれが嬉しい。
「お雪さん、お先にお風呂どうぞ。実は、私お湯にはいれなくて水風呂派なんです。煮えちゃうので」

「私も水風呂派よ、溶けちゃうから」
と雪乃が笑うとおぉー!と感嘆の声をあげる真魚。
そう、彼女は人魚である。
お雪は、お風呂に入りにいき、上がってくる。
真魚が服を脱ぎ出してる。
「はしたなくてごめんなさい。でも服を脱ぐ時、ベッドにすわった状態の方が楽なんです」
真魚ちゃん……綺麗な身体……。雪乃はドキドキしていた。
「よっと」
床にすわるようにベッドから降りる。
そして床を這うように浴室に向かう。
その姿を見た雪乃が慌てて、真魚を抱き上げようとする。
お雪さん!? 驚く真魚。
お雪はおろおろとしている。
「真魚ちゃんが心配なんだもん!」と泣きそうな顔で言う。
お雪さんの過保護、少し困るけど
「気にしないでいつもこうしてるの。なれてるのお願い、手は貸さないで」
と頼むと渋々ながら納得してくれた。
浴槽の縁に手をかけるとての力だけで体を支えて浴槽に頭から飛び込むようには入る。
ザブンと水が溢れた。
真魚は水中で息ができる。
真魚ちゃん大丈夫?!と聞くと、 問題ありません!と返事がきた。そしてそのまま浮いている。
「ふうっ~、生き返る~」
真魚の気持ちがいいのか、心地良い声が聞こえる。
「あの~驚くかもしれないけど、私このまま、浴槽で朝まで過ごしますので気にしないでください。水の中で寝るの」
と宣言すると目を閉じた。
(さすが海の一族)
「おかしいでしょう?壁さんは、外で立ったまま寝るし、私は、水の中で寝てるの」
とケラケラ笑う。笑いが止まらないみたい。
(この娘、面白い子だわ)
二人で、ゲラゲラ笑ってる。
(こんなに楽しい時間、何年ぶりかしら)
お雪は、この子ともっと早く会えていたらと思う。現世で知り合ってたら、人間の世界も楽しかったかもと思う。「でも、どうして……魔女のこと知ってるの?」
真魚の目つきが変わる。真剣になる。その目に吸い込まれそうになる。
真魚は、自分の前世の話しを、始めた。
自分がエリーゼという人魚であったこと。人間の男性に恋したこと。
人魚を憎む魔女のせいで姉と恋人を失ったこと。真魚は途中から泣き出す。
「でも魔女は、なぜそんなにあなた達人魚を恨んでるのかしら?」

と不思議に思う。
それを聞いた真魚はうつむく、
「それはね……私が…あ、エリーゼの頃の私が生まれるもっと前にあの魔女は、人魚の肉を食べたのそれで不老不死になったんだけど永遠に死ねないことに悩み苦しんだらしく、それは私たち人魚が存在するせいだと怨みを持つようになったと本人が言っていた。」
「何!それ逆怨みどころか!人魚は一方的な被害者じゃない!」

怒りがこみ上げる雪乃!真魚は首を横にふる
「だから、私はあの女、魔女を許さない。転生するなら、異世界の果てだって追いかける」
そう、決意しているようだった。
そしてまた二人は黙り込んでしまう。今度は、真魚の沈黙だ。
「私もあの女は、許せない。私たちの学校を自分だけが生き残るため大勢の命を奪った魔女は許せない」
と雪乃もつぶやく。
しばし二人の間には無音の世界が広がる。二人の会話はない。ただ静かにお互いの心の内を話し合ったのだ。雪乃も真魚に心を開いた。真魚もまた同じだ。
☆☆☆☆
翌日、真魚達が現れると以前より騒然とするようになった。
真魚だけではなくお雪もくわわったのた。
美女が二人も同時にあらわれたのだ。ナンパしようとする冒険者達もヒートアップする。

「うざ!はなしかけないで!」
バッサリ拒否するお雪。
「また今度誘ってね!」
笑顔でことわる真魚。
だが男達はしつこい。壁はイラつくがここは耐える。
真魚は壁の方へ駆け寄り抱きついてる(ように見えるだけだが)と男達の嫉妬の目線が壁に集中する。何せ両手にはなにしか見えない。
(こいつら馬鹿なのか?)と思いながらも、これでしばらく大人しくしてくれるだろうとホッとする。真魚の方を見ると壁の腕の中から男達を睨んでいた。
(怖いわぁ)と身震いしながら、
「まあまあお雪さん落ち着いて、私がついているから」
となだめると、仕方なさそうにうなずいた。
☆☆☆
「おや、可愛い娘連れているじゃないか」
雪乃とお春に声がかかる。
雪乃と真魚の前にいるのは大柄な体格の男が一人。後ろに三人の仲間らしき男女がいた。
雪乃と真魚をじろりと見て
「おいガキ、そこの女俺達によこせよ、そしたら痛い思いしなくてすむぜ」
下品な笑いを浮かべながら話すか、がたいのある壁は、男達を見おろすようにらみつける。
後ろの三人はゲラゲラ笑っている。
「痛い思い?」
男達はあまりの迫力に縮みあがる。
男は慌てて言い訳を始める。
「す、すいません。冗談ですよ、ちょっと言ってみただけですよ。まさか本気にするとは思ってませんでしたよ。ほらいくぞ」
と言うと仲間を連れて足早に立ち去った。
真魚は、男達の背中に殺気を感じた。
依頼の掲示板前に到着。壁に抱っこされてる状態の真魚はじっくりと見ている。
「他の街に行く依頼を探しましょう」
真魚の提案に、みんな賛成した。
「これなんかどう?」
真魚は、指をさす。
☆北の街への護衛☆
・報酬額 50000G/日
・条件 腕に覚えがある者 パーティー人数5名以上 ランクE~D
(「北野町は言ったばかりでたいした情報は得られないと思う。他がいい」

真魚の言葉に賛成して別のものを探す。
「この辺りでどうかしら」雪乃が、見つけた。
☆南国地方での採集作業手伝い☆ 報酬額は18000G/時間~
2週間以上拘束あり、ただし泊まりはなし。食事付き。
「採取は、私不向き」と真魚は嫌がったが、
「採取が海ならいけるだろ。とにかく内容聞いてからにしょう」
と雪乃が言う。
「これはなんの採取なの?」真魚が受付で聞く
受付嬢のミウちゃんが答える。
「海の草だよ。海底に自生していてね、よく漁師さんたちがとってくるんの」

と、教えてくれた。早速3人は受ける事にする。
ギルドを出た時だった。
突然目の前に馬車が現れた! 馬に乗った中年のおじさんと若い男性が2人。
男性は女性と子供を引きづっていた! 3人とも縄に縛られている。
雪乃と真魚は驚いて言葉が出なかった! 真魚は 男性に声をかけた
「何があったんですか?」
と、男性の顔を見て驚いた 男性の頭には猫のような耳がはえていた。尻尾もあった。
真魚は、
「あなた……獣人ですか?」と男性に質問する
「ああ、そうだ。奴隷商に売られそうになっていたんだ。助けてやってくれ」
とお願いされた。
真魚は、雪乃と壁に向かって、
「あの人達を助ける!協力して欲しい」
と言った。
「おなた方、後ろの奴隷の扱いがひどすぎない?」
お雪が、奴隷商に話しかける。その声を聞いて振り向くと絶世の美女と美少女が立っているのを目に入る。
そして後ろの二人の少年?も見つめる。
(なんだこいつら?)
と怪しむ商人
「お前ら何ものだ!」
と怒鳴る。
 雪乃は、
「ただの冒険者よ」
とあっさり返事をする。
「この奴隷はどうして手に入れたのかしら?」
と雪乃に聞かれたので 商人はニヤッとして 自慢げに話し出す。
最近、大きな儲け話が転がって来ましてねぇ。それがこの子たちの事です。
珍しい人種でしょ。獣人のハーフなのですがね。こっちの娘も綺麗でしょう!ハーフとはいえ、希少価値が高いんで高値で売れますわ。しかもまだ10歳にもなってないし処女でしょ!高く売れると思いましたよ! さっき捕まえたばかりだからね。今のうちに楽しんでおかないと! はっはーと下品な笑い声でしゃべる商人!
「平たく言えば誘拐?」
お雪が聞く
「何が悪い。世の中金があればすべて買えるんだよ。俺にはそれを買うだけの財力がある。
それになぁこいつらはもうすぐ性奴隷にされる予定だったのだぞ」
「いくらで売れるの?」お雪は、奴隷商の気を引いてる。

「まあ金貨200枚くらいかなぁ」と、うそぶいてみる。お雪の眉間に少しシワができたのがわかる。
「そうなの、ちなみに私だったら、いくらの値がつくかしら?」
とお雪が聞き返した
「う~ん、あんたが欲しいのかい。なかなか良い娘だ。まぁ100万ゴールドぐらいだろうな」
「まあ!100万!」
お雪は奴隷商人の肩に触れるビクっと反応し後ず去る。
お雪が恐ろしい形相で睨み付ける。
「ずいぶん、安く見られたものね!このグズが!」
お雪の目が赤く輝く。
次の瞬間、奴隷商は、凍り漬けになっていた。
「すごい魔法ですね。一瞬で奴隷商を氷漬けにするなんて」
真魚はおどろいてた。
「ああ、汚いもの触っちゃった。」
奴隷商の肩に触れた手をぷるぷる振ってる。
そこに先ほどの冒険者達が現れた。
真魚達は奴隷を解放して、後を彼らに任せた。
「さあ、本来の仕事に行きましょう」
真魚は張り切ってる。
真魚とお雪、壁の三人は馬車で南国の街にむかう。
☆☆☆
南国の街についた真魚は、 壁に抱っこされたまま街を歩き回る。街の人はみな、優しかった。
真魚は露店で、アクセサリーを買い、首にかけてもらう。
(こんなものまで、売っているとは思わなかった)
真魚は満足していた。お雪の方を見ると、お雪も買い物をしていた。

街から離れた場所へ歩いていく しばらく進むと海岸に着いた。漁港の埠頭の先端まできた。
壁は、背中にしょってたバックパックを下ろし、それを椅子替わりに真魚を座らせる。
「そじゃあ、はじめますか?」
真魚は服を脱ぎ始める。
服の下に水着を来ているのだ。
「じゃあ、真魚いきまーす。」
真魚が海に飛び込む。
海中でも呼吸ができる真魚は、一度海中の潜るとなかなか海面にか顔を出さない。
しかし、顔を出す度に大量の海草を集めてくる。それをお雪が受けとる。
短時間で大量の採取ができてしまう。
次に真魚が顔出したとき、
「どう?そろそろ目標量採取できた?」
聞いてきた。
「沿うねん十分じゃないかしら?」
「では戻りますかね」と真魚は、陸に向かって泳ぎだす。
埠頭に着くと壁ががひっばりあげる。
壁が荷物背中にかついで依頼主まで届ける。
依頼達成の書類をもらい。
あとは帰ってこの書類をギルドに提出すれば依頼終了だ。報酬は明日ギルドに受け取りに行けばいい。
真魚達は、漁港近くの酒場にやってきた。
情報収集のためだ。
しかし、魔女に関する情報は得られなかった。
「では帰りますか」
真魚の一言によりお開きとなった。
翌日、3人は、ギルドに向かう。
「今日も、護衛依頼を受けたの」
受付嬢のミウちゃんに話しかける。
掲示板を見てどれを受けるかを考えている。
「ちょっと待ってくれ」と後ろにいた男に声をかけられる。男は、剣を持っていた。
「俺達と一緒に行動しないか?昨日見たが君は魔法使いだよな。俺は剣士なんだ。俺もパーティーに入ってくれ!」
と言う。
真魚は、お雪と壁に相談する。
お雪が答えた
「いらない」お雪の冷たい返答。
お雪の言葉を聞き、男が激昂した
「お前みたいな小娘の出る幕はないんだ。俺達の邪魔になるから、黙って見ていろ!」と怒る。
「お断りします」
真魚もお雪に同意する
「俺達はおまえを必要としない」
「そうよ。あなた弱いじゃないの!」
お雪はさらに挑発する その言葉で頭に血が上ってしまったようだ。
腰にある鞘から剣を抜き放ち切りかかる! 
お雪は人差し指と親指で剣を挟んで止めてしまう。
「しんけんしらはどり~なんてね」とつぶやく。
「えいっ」
軽く曲げるとパキンと折れる。
「あらら、とんだなまくらね」
男の仲間たちはその姿を見て逃げ出した。
「もう終わりなの?」お雪がつまらなそうな表情で話す。
そこに別の男性が現れた。
男性は、冒険者風ではない格好をしている。商人のようだ。
真魚は、
「どちら様でしょうか?」と話しかける。
すっと、一礼すると自己紹介を始めた。
「私は商人のトレジャーと言います。もしよろしければご一緒させてもらえませんか?」
とお誘いしてきた。
真魚は
「何が目的ですか?」
警戒して答える。
「ただの興味ですよ。珍しいお召し物をしているし、変わった魔法を使うようですし」
と言って微笑む。
「私達に同行することで、メリットがあるのかしら?」とお雪が聞く トレジャーが話し出す 私達は、今、この街にいるんですが、最近奴隷商が幅をきかせてましてね。
商売しずらいんですよ。
しかもあの奴隷商が仕入れた奴隷がひどいらしく、買い手がいなくて困っているら
しんですよ。
そこで私共の商品にならないかなと思っていましたので、奴隷を助けてくれた真魚さんに興味があったのですよ。
私どもが真魚さんの衣食住を保証することを約束させていただきたいと思いますがいかがでしょう。
どうやら奴隷商は、この国の奴隷商組合のトップらしいのです。
そこの奴らを潰せば、この国でも奴隷が解放できるかもしれないとのことだ。
もちろんこの国に居たくないなら、自由にしてくれてかまいません」
真魚とお雪が考え込む。壁はいつもどおりぼけーとしてる。
しばらく考えてから真魚が決断する。
「正式に冒険者ギルドに依頼をだしてくれませんか?それならひきうけますよ。」
こうして、冒険者達の本当の仕事が始まる。
「依頼内容は、奴隷商をぶつ殺すでいいのかしら?」お雪が物騒なことを言い出す。さすがに殺しはまずいと、説得するがなかなか納得しなかった。
真魚が提案をする。
まず、奴隷を解放するために、奴隷になっている人をさがす必要があることを伝える。そして依頼料は1人で金貨5枚をもらう。これで引き受けるかを聞くと、「わかったわ。それでいいわ」と承諾してくれた。真魚はホッとする。
(よかった・・さすがに殺人はダメだよなぁ)
しかし真魚はまだ知らなかった。お雪の実力はそんなものではなかったことに、真魚と壁の受難がはじまったのだ。
真魚達は街外れに来た。
ここに奴隷商のみせがあるらしい。
「こんな店があるから
奴隷商がはばをきせてるのね!潰すわよ!壁!」
「わかった!」
「えええ?」

真魚がおどろく。
(こいつらは何を言っているんだ)
壁が真魚を抱き抱えたままドアを蹴破る。
「ひえーっ!」
戸惑うばかりの真魚。
真魚達が中にいる客達を脅すと、慌てて逃げていった。
店の奥には階段があって、そこから地下に降りるようになっていた。
真魚達は、地下に降りていく。
降りている途中で、奴隷達の悲鳴を聞いたり、叫び声を耳にする。
真魚の心臓が激しく鼓動する。(大丈夫だ、落ち着け、自分。相手を殺すような事にはならないはずだ、きっとそうだ。多分。)
地下室に着いたようだ。牢屋のような場所に沢山の人が入れられている。その中に女性の姿も見える。皆ボロ着を着せられて衰弱しきった状態になっていた。中には怪我をしている者もいる。
「ひどい扱いね。やっぱりぶっ殺す」
思わずお雪がつぶやく。
壁がいきなり素手で牢を壊し始めた。
ドンッバギィ ドゴォ グチャァ メキ ボコ ピギャアア いろいろな音が鳴り響く。
壁に壊されたことで、何人かの人達が出てきたが、騒ぎを聞きつけて奴隷商の手下が現れた。
真魚達を見て、驚いたようだが、剣を抜いて襲ってきた。
真魚も戦う準備をはじめる。といっても何も持ってないけど。
お雪の魔法で全員氷漬けになったあとに壁がとどめをさすという方法でどんどん奴隷を解放した。
最後の一人は女の子だった。年の頃は13歳くらいに見える。とてもかわいくてきれいな子だが少しやつれていた。その子は泣きじゃくりながらお雪の胸に抱きついた。お雪もそっと抱きしめる。その光景を見てほっとした気持ちになる真魚。
(なんとか助けることができてよかったな。これからどうしようかな?)
考えているうちに、奴隷商の部下が数人やってきた。部下が何かを叫ぶと、檻の中からぞろぞろと手下の男が出てくる。どうやら用心棒のようだ。武器を構えて戦闘体勢に入っている。手下に守られるようにして、一際大きい男が立っている。恐らく奴隷商だろう。
男は真魚達に気づき近づいてくる。どうやら怒っているようだ。
「お前ら、うちの社員になんてことをしやがる!もう許さんから覚悟しろ!!」
と叫んで、真魚達をにらみつけてきた。
真魚が、話しかけようとするが、奴隷商は聞く耳を持たず、魔法を詠唱しはじめた。
すると手下の一人が突然倒れた。見ると、首筋に矢が刺さっているではないか。
よく見てみると、奥の方から弓を持った人が現れた。かなり遠くからの射撃なので誰も気がついていない。
この距離から正確に射抜いたのかと思うと驚くしかない。おそらくかなりの実力者であろうと思われる。
真魚はこの人物について調べることにした。奴隷商人が攻撃魔法を発動した時を見計らい真魚が動き出した瞬間。
奴隷商の放った魔法は爆発を起こす。真魚達の前に突然、石板の防御壁が出現して爆発の威力を防ぐ。
壁の防御系スキルだが石壁を操作し壁を動し攻撃にも使える。動きだした壁が奴隷商達を押し潰す。

壁は奴隷商達を押し潰して行く。
奴隷商の骨が潰れる音が壁の向こうから聞こえてくる。
やがて、押し潰したあとには肉塊が散らばるだけだった。
お雪は生き残りにめがけ、アイススピアを放つ。氷の槍が次次と奴隷商の手下の体に突き刺さる。奴隷商以外の者はすべて息絶えていた。
壁の方はと言うと。二枚の石板を使い奴隷商をサンドイッチにしてしまう。
石板の間から悲鳴と肉と骨が潰れる音がする。奴隷商達は全滅した。
真魚達は、奴隷達を全員解放してギルドに帰る。
奴隷達はみんな喜びでいっぱいの顔をしていた。
ギルドに戻り受付に行くと依頼の報告をする。
トレジャーを呼びだし事情を説明することにした。依頼料の金貨5枚とギルドカードを差し出すと説明をはじめる。
「先程の依頼は達成いたしましたので、確認していただけますか?」
真魚がそういうと、依頼票を確認する。そして納得してくれたのか、真魚と握手を交わし、金貨を受け取ると去っていった。
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