透視メガネ

 (笑)

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透視メガネ

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健一はあるビルの3階にある事務所の前に立っていた。 
ノックする。
 
「はい。どうぞ」 若い女性の声で返事があった。 

「失礼します」
 
扉を開けて事務所内に入ると若く美しいOLらしいスーツに身を包んだ女性が健一を迎えた。 

「先ほど連絡させていただいたものですが」
 
「バイト希望の高井さんですね。」 

「はい、今日からバイトさせていただけるって伺いましたが本当ですか」 

「はい、社長から説明がございます。奥へどうぞ」 

「あの、あなたは?」 

「私は社長秘書の鈴香と申します。さあどうぞ」 鈴香は健一を先導して歩き始めた。
 
『く~~~っ。いいケツしてる。』圭一は鈴香の後に続き始めるが視線は彼女の美しいヒップラインに釘付けだった。 
 

事務所はお世辞にも広いと言えずスチール製のパーテーションでいくつかに区切られているだけだ。 

健一は一番奥の一番広い区画に案内された。
 
そこにはスチール製のテーブルが2つが向い合わせて置かれていてさらにその奥に事務机が置かれている。 

その事務机の椅子に座っていた一人のやや太った中年の男が立ち上がり健一を出迎えた。
 
「君が高井君だね。掛けてくれたまえ」
 
向かい合わせに置かれたスチール製のテーブルに置かれたパイプ椅子に座るように指示した。 

「失礼します」 

「私がこの旭光学光業株式会社の社長をしてる旭永蔵です」 

「よろしくお願いします」
 
その中年男は健一の対面側に置かれたパイプ椅子に座った。
 
「早速だが仕事の説明をさせてもらう」
 
「はい」 
「一言で言えば新製品の試験モニターだ」
 
「新製品のテストですか?」 

「実際に使用しながらデータ取りするのでその都度指示するので確実に指示に従ってくれたまえ」
 
「はい。分かりました」 

「これがテストしてもらう製品だ。」 

目の前に置かれたのは安ぽっそうなメガネだった。 
しかし左側のつるからコードが伸びていてリモコンのようなものに繋がったいてさらにそのリモコンのようなものから別なコードが伸びていて机に置かれたノートパソコンのUSBコネクターに接続されている。 
リモコン部分には3つのボタンだけあり上からそれぞれ1,2,3と番号が書かれてる。 

「えっと・・これはなんですか?」 

「透視メガネだよ」
 

「透視メガネって…昔、雑誌に載っていた通販広告のアレみたいなやつですか?」 
「そうだ。」 

「あれって詐欺ですよね」 

「うむ。あの広告を見て実現してやろうと思って永い研究の末、ついに完成したんだ」
 
「ええっ!本当ですか?」 

「百聞は一見にしかず。かけてみたまえ」 

圭一は永蔵の指示通りメガネをかける。
 
「ん?特になにも変わりませんよ」
 
「後ろの壁にある視力検査表を見てくれ」
 
後ろを振り返ると背後の壁に視力検査に使う表が貼られていた。 
英蔵は机の上のパソコンのアプリケーションの一つを起動したパソコのモニターになにやら波状のグラフが現れて刻一刻とその波が変化している。 

「あの視力検査表から目を離さないでくれ視力に与える僅かな変化も見逃さないためだ」 

「はい、わかりました」 

「視力検査表から目を離さずコントローラーのNo.1のボタンを押してくれ」
 
リモコンのような機器を永蔵から手渡された。 

ボタンを押すと1番のボタンのランプが点灯した。 

「視力検査表の見た目に変化はないかね?」 

「はい」 

「鈴香くん。」 

永蔵が声をかけるとパーテーションに区切られた別なエリアから指し棒を持った鈴香が下着姿で現れた。
 
「ええええええええええええっ?」 

鈴香の姿に健一は驚いた。 
あまりの事のに思わずメガネをかけ直そうとメガネのつるに手をかけた。
 
「DATA取りをしてるから眼鏡を外さないでDATAが乱れるのでフレームにも触れないで欲しい」 

永蔵の指示に健一は慌ててメガネのつるにかけた手を離す。
 
鈴香は上下揃いのデザインの白のレースの下着でパンツのレースはへアの色が透けて見えてる。
 
「検査をします。これ読めますか?」 指し棒で指し示す。
 
「こ」 

「次は」 
「れ」
 
「これは?」 
「は」 

「この下は」 
「い」 

「さらに下読めますか?」 
「ん」 

となりのこれは?」 
「ち」 

「ここは?」 
「きです」 

「はい、結構です」 鈴香はクリップボードの記録用紙に結果を書き込んでいる。
 
健の目はその間も下着姿の鈴香に釘付けだった。 

『…やべ…たってきた』 
健一は興奮を押さえようと考えるが視線は涼香から外せなかった。 

「高井くんもういいいよ。」背後から永蔵の声がした。 

鈴香から目を離したくなかったが鈴香がパーテーションの奥に引っ込んだので仕方なく 
再び永蔵の方に向き直した。
 
「・・・」 健一は目が点になる。
 
当然予想できたのに下着姿の鈴香に夢中になりすぎてそのことを失念していた。 
そう永蔵も下着姿だった。

 涼香の引っ込んだパーテションの向こうからパソコンのキーボードをたたく音が聞こえてる。

健一は中年男の汚い下着姿にげんなりするが勃起は一気に萎えた。 
まるで意に介してない様子で永蔵は健一に聞いてきた。 

「どうだい?感想は?」 
「す、すごいです…けど…」健一は男の下着は見たくないと言いかけてやめた。 

「けど?なんだね?」 

「…いえ…あの…下着姿以上は透視できないのですか?」 
 
「もちろん、全部、透視できる」 永蔵は胸を張って答えた。 

健一は、はっとして気がついた。
 
「そうか、このボタンですね。」
 
健一はコントローラーの2番のボタンに手をのばそうとすると永蔵は慌てたように止める。 

「待ちたまえ。DATA通りがあるので指示に従ってくれ。」 

「あっ・・はい。」 

「まず視力に影響がないか確認するので視力検査表を見ながら2番のボタンを押したまえ。視力検査表から目をそらさないでくれ」
 
「はい」 

健一は再び背後に向きを変え壁に貼られた視力検査表に目を向ける。 

コントローラーの2番のボタンを押すと1番のランプが消え2番のランプが点灯した。 

「鈴香くん。よろしく」 

「はい」 

永蔵が声をかけるとパーティションで区切られた隣のエリアから返事があり指し棒をを持った鈴香再び現れた。
 
「おおおおおおおおおおおおっ!」 

今度は全裸に見えている。
 
「すごい…本当に全部見える」 

背後で永蔵が椅子から立ち上がり奥の方へ移動していくのが健一にも感じられたが今はそれどころではなかった。
 
涼香の豊かで美しい乳房に目を奪われていた。
 
一瞬で健一のものは勃起した 

「高井さん、この字が読めますか?」
 
「…は、はい…いです」

鈴香の裸体見とれていて返事が遅れた。
 
「では、この下の字は?」
 「や」 

「ここは?」 
「ら」
 
「次は?」 
「し」
 
次々と鈴香が指し示す文字に答えていく。
 
「い」 

「はい結構です。社長、終わりました」
 
「ありがとう鈴香君」 

奥の方から健一の方に近づく足音が感じられる。
 
健一は再び逆方向に向き直る。 

「うっ…」 

当然の様に社長も全裸に見える。
 
永蔵が再び健一の対面のパイプ椅子に腰を下ろす。
 
「感想はどうかね?」 

「すごいっす。素晴らしい技術です!」
 
「ありがとう。で、肝心のバイト料だが今回の透視メガネを使用した感想をレポートにしてくれたまえ。提出方法はメールでいい。レポートが届き次第、バイト料を振り込む。ただし、あんまりいい加減なやっつけ仕事的なレポートでは、再提出を求めることになるので真面目にやってくれたまえ」
 
「はい」 

「コーヒーをどうぞ」 

いつの間にか鈴香がお盆に珈琲を載せてやってきた 。

健一の前にコーヒーを置いた後続いて社長の前にコーヒーを置く。 

もちろん健一の目には社長だけではなく鈴香も全裸に見えている。 

健一は間近の鈴香を食い入るように見つめる。 

「あんまりジロジロ見ないでください」 

鈴香が少しムッとしたように話しかける。
 
「いや、俺は特に…」 

「私はそのメガネがどのようなものか知ってますから」 

涼香はお盆で胸を隠すようにお盆を持っている。 

そう言い残すと再度パーティションの奥に姿を消した。
 
「目は疲れてないかね?」
 
「はい、大丈夫です」
 
「最終確認だ。再度、視力検査表を見たまえ」 
再度検査表の方を向く。 

「3番のボタンを押してくれたまえ」
 
言われた通りボタンを押すと2番のランプが消えて今回は3番はランプはつかない。
 
再度鈴香が指し棒を持って現れる。 

今回は普通に最初に会ったスーツ姿に見える。
 
今回も背後で永蔵が何やら動き回っているのがわかる。 

「では、これから」 

「ま」
 
「次です」 
「る」
 
「下は?」 
「も」 

「隣は?」 
「う」 

「はい、ここは?」 
「けです」 前と同じ次々答えていく。 

「はい終了です」 

「どうかな?鈴香君」
 
「視力に対する悪影響はないようです」 


「DATAの確認をするのでメガネを外してくれたまえ」
 
いつの間にか永蔵は再びパイプ椅子に座っていた。
 
健一は名残惜しいがメガネを外した。
 
「失礼します」 

壁際から健一の側に来た鈴香がメガネを受け取りメガネの繋がったノートパソコンも一緒にパーテーションの向こう側に持っていってしまった。 

「ところで何か質問はるかね?」
 
「はい。レポートはいつまで送ればいいですか?」 

「できるだけ早いほうがいい。その分バイト料も早く手に入るよ。遅くとも今月中に頼むよ」 

「あと、あのメガネ販売するんですよね。いくらで売るんですか?」 

「高いと思うかもしれないが30万を予定している」 

「いえ、30万でも売れると思います。…分割も可能ですか?」
 
「申し訳ないが多額の開発費と量産のための設備投資に多額の資金が必要なので分割には応じれない」
 
「欲しいけど30万では、ちょっと…」 

「本来30万だけど特別に社員割引ということで10万で販売してあげよう」
 
「本当ですか、それならなんとか…」
 
「一つ相談があるんだ…」
 
「なんでしょうか?」 

「こいつを売るにあたって雑誌などで通販広告を載せても詐欺商品に思われる。」 

「そりゃそうですね」
 
「それにあんまり大量の数も用意できない。そこで口コミで販売していきたい」 

「口コミですか?」 

「そうだ。君に宣伝して欲しい」 

「俺に営業をやれってことですね?」
 
「そんなに固く考えなくていい」酒の席で軽く話題にする程度でもいい。ただ 物が物だけにあんまり話題になられても警察に介入される危険性がるので絶対秘密が守れる相手にだけ宣伝して欲しい。
君の紹介者は特別社員割り扱いで10万でいい。商品が一個売れるたび君には1%の手数料をお支払いしよう」
 
「本当ですか?このメガネなら大学の友人に20個は売れます」
 
『あいつらなら30万でも買うなきっと…30万で売りつけて20万、自分の懐に…』
 
大学の悪友に相手にあくどい事考えている 。

「20個なら2万の手数料料が君の収入になる。」 

「おお、じゃあ、俺は実質8万円で購入できると言う事ですね。」
 
「商品のほうはまだ未完成でのNO.3のモードが未実装で量産品に装備するには、あと1ヶ月かかるので料金の入金を確認した順から1ヶ月後商品を発送する」
 
「NO.3のモードってなんですか?さっきは、透視しなくなりましたけど」 

「それはまだ実装してなかったからで実装されたら間に障害物があっても透視可能になる」 

「障害物?」 

「つまり壁越しでも透視出来ると言うことだよ」
 
「す、すげー!30万でも安いかも」
 
「ではレポートの件も忘れずよろしく」 

「はい!できるだけ早く仕上げます。その前に10万振り込むので製品できたら送ってください」
 
「製品が出来次第送るよ」
 
話が終わる健一はとそそくさ退室する。 
早くこの話を悪友に持ちかけ一儲けなど考えているのだ。 

健一が帰るのを確認してから栄蔵は涼香に話しかけた。
 
「今日のカモは、彼で終わりかな?」 

「はい。今日のバイト希望者は彼で終わりです。」
 
さっきのノートパソコンとメガネを持ってパーテーションの向こうから出てきた。
 
「明日の予定は?」
 
「明日は6人です」
 
「そうか。明日が今回の最終日か」
 
「毎日10人だったのに最後は少ないんですね」 

「この事務所を撤収しなければならないんでね」 

「…事務所の家賃も踏み倒すんですね?社長。」
 
「そんなもの払ってたらせっかくの利益が台無しだからな」
 
「…」 涼香はノートパソコンとメガネをスチールテ-ブルに置くと両手の手の平重ねて栄蔵の前に差し出す。
 
「なにかな?」
 
「今日のバイト代ください。日払いの約束です。家賃みたいに私のバイト代も踏み倒されたらたら困ります」
 
「判ってる。昨日までちゃんと払ってたろう。ところで別な町でもこれをやるんだがまたバイトしてくれないか?」
 
「詐欺の片棒担いだうえ下着姿や裸になるなんてもういやです。ちゃんと払ってくださいよ」 

「そこを何とか。時給をもっと上げる。」
 
栄蔵は両手を合わせて涼香を拝みだした
。 
「遠くの町でやるんでしょ?」 

「わかった。交通費も全額出す。頼むよ!裸になってくれる美女なんてそうそういなんだ」 

「…美女。」 

「そう。涼香君みたいな美女。めったにいない」
 
「私、好き好んで裸になってるわけじゃありません」 

「判ってる。この通り」 栄蔵は、土下座を始めた。 

「もう…。時給と交通費の件間違いないでしょうね」 

「あ、ありがとう。君がいてくればいくらでも儲かる。」 栄蔵は涼香の手を握りしめる。
 
「でも男ってあんな手に引っかかるなんて馬鹿ね。冷静に考えればわかりそうなもの」
 
「いや。いや。今回のは絶対騙される。君のおかげでバイトと偽ってインチキ商品を売りつける詐欺が成功する」
 
涼香は透視メガネをつまみ上げて自分でかける。 

「ただのガラスなのに・・・」 

突然、栄蔵が服を脱ぎだす。
 
「何してるんですか!社長!」
 
「いやいや、透視メガネをかけてるから裸に見える・・・・」 

「いい加減にしてください。お芝居はカモ相手だけにしてください。」 

栄蔵は涼香の顔からメガネを外して自分でかけた。
 
「涼香君も裸に見めるはず」
 
「脱ぎませんよ!」
 
「これが欲しいんじゃないか?」 

栄蔵は自分のものを涼香の方に突き出した。
 
「いりません!」 

「相手をしてくれたら特別ボーナスを出そう」 

「詐欺師の話なんか鵜呑みにしません」 

翌日銀行が開くと同時に高井から高井本人を含め21人分の代金210万が振り込まれていた。 

当日のうちに20人の友人にあの素晴らしい透視メガネの体験を自慢げに話して注文をとりまとめたのだ。 
もちろん高井は後日、その友人らに激しく糾弾される事にになる。 

だが今はあのすばらしいメガネを手にする日を夢見て疑わない。 

同様な振込み件数が100件以上あった。 

高井と同じくバイトをした人数は100人を超えていた。
 
しかし高井達のバイト料金が彼らの口座に振り込まれる事はない。
 
そして今日も彼らと同じバイトに応募してきた若者が6人、彼らと同じ体験をして同様の結末をたどる。
 
みなさんもこんなくだらない詐欺に騙されないようご注意。 
END 
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みんなの感想(1件)

beaks128
2021.03.23 beaks128

初めまして、映像制作を行っているものなのですが、このストーリーがとても好きで、是非原作として映像化させていただけないでしょうか?

 (笑)
2021.03.24  (笑)

そんなに高い評価していただけるなんて感激です。
拙い作品ですがよろしくお願いいたします。
特に注文などもありません。
自由に納得のいくものを作ってください。

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