8 / 10
08.願い②
都内で一番大きな神社の杜を望む、三階建ての三階部分。広いルーフバルコニーもあるカフェは、インクタ映えを意識する女子で賑わっていた。タワーメニューと銘打ったシリーズで、高さ五十センチにもなるパフェグラスに、サラダであったり、パフェであったりのメニューが展開されている。そのタワーメニューが映えると噂を呼び、都内の一等地であるこの場所での店賃を払っても余りある、売り上げを誇る人気店になった。
この店のオーナーであり、シェフも兼ねる凛空は、満足気に店内を見回した。
あの日、自分のものになった宝くじ。智也との生活を耐え忍ぶ中で、いつしか心のよりどころになっていた、紙の束。自分でもおかしいと思っていた。ただの紙切れなのに。誰がくれたのかもわからないのに、何故凛空はこれほど心を寄せていくのか──。
そして、運命の日を迎える。宝くじの抽選日だ。スマホでサイトにアクセスして当選番号を確認したところ、なんと、一等、前後賞合わせて三億円の当たりだった。
え? え? 本当? え? まさか、本当に当り?
何度も見比べた。自分の都合のよい思い違いかも知れないと、別の当選番号案内サイトも検索して、何度も確認をした。
ほ、本当だ……間違いなく、当たり!
くじが当たったことに確証が持てると、凛空は奇妙なうめき声をあげ、わたわたとリビングを右往左往した。落ち着かないついでに何故か食卓に当たるように配された電球のシェードを外して洗うという作業を始めた。人間、思いもよらない幸運が舞い込むと、おかしな行動をとるのである。
いや、こんなことしている場合じゃないよね。
ふっと我に返り、慌てて当選金を引き換えに出掛けた。銀行に着くと、ふかふかの絨毯がひかれた、今まで入った事がないような一室に通された。当選者に対する心構えなどのレクチャーを受け、その場で新規に開設した0が沢山並ぶ通帳を手にしても、なかなか実感が湧かなかったが、家に戻るとやっとふつふつと喜びが溢れて来た。
そこから凛空は、智也に気づかれないようにアパートを探し、荷物を移し。智也の元を去ったのだった。
当選金は一生働かなくてもいいかも知れないほどの額ではあったが、やはり飲食業に対する夢は捨てきれなかった。どうせあぶく銭だ。事業に失敗しても借金が残らなければまた、雇われの身になればいいと一念発起。飲食関係のコンサルタントにアドバイスを受けながら、満を持して開店したこの店は自分の城だ。
お陰様で繁盛店となり、今に至る。
凛空は感謝する。
あの時宝くじをくれた方は誰だったのだろう。
「ありがとうございます。僕の願いは叶いました」
この店のオーナーであり、シェフも兼ねる凛空は、満足気に店内を見回した。
あの日、自分のものになった宝くじ。智也との生活を耐え忍ぶ中で、いつしか心のよりどころになっていた、紙の束。自分でもおかしいと思っていた。ただの紙切れなのに。誰がくれたのかもわからないのに、何故凛空はこれほど心を寄せていくのか──。
そして、運命の日を迎える。宝くじの抽選日だ。スマホでサイトにアクセスして当選番号を確認したところ、なんと、一等、前後賞合わせて三億円の当たりだった。
え? え? 本当? え? まさか、本当に当り?
何度も見比べた。自分の都合のよい思い違いかも知れないと、別の当選番号案内サイトも検索して、何度も確認をした。
ほ、本当だ……間違いなく、当たり!
くじが当たったことに確証が持てると、凛空は奇妙なうめき声をあげ、わたわたとリビングを右往左往した。落ち着かないついでに何故か食卓に当たるように配された電球のシェードを外して洗うという作業を始めた。人間、思いもよらない幸運が舞い込むと、おかしな行動をとるのである。
いや、こんなことしている場合じゃないよね。
ふっと我に返り、慌てて当選金を引き換えに出掛けた。銀行に着くと、ふかふかの絨毯がひかれた、今まで入った事がないような一室に通された。当選者に対する心構えなどのレクチャーを受け、その場で新規に開設した0が沢山並ぶ通帳を手にしても、なかなか実感が湧かなかったが、家に戻るとやっとふつふつと喜びが溢れて来た。
そこから凛空は、智也に気づかれないようにアパートを探し、荷物を移し。智也の元を去ったのだった。
当選金は一生働かなくてもいいかも知れないほどの額ではあったが、やはり飲食業に対する夢は捨てきれなかった。どうせあぶく銭だ。事業に失敗しても借金が残らなければまた、雇われの身になればいいと一念発起。飲食関係のコンサルタントにアドバイスを受けながら、満を持して開店したこの店は自分の城だ。
お陰様で繁盛店となり、今に至る。
凛空は感謝する。
あの時宝くじをくれた方は誰だったのだろう。
「ありがとうございます。僕の願いは叶いました」
あなたにおすすめの小説
人気アイドルの俺、なぜかメンバー全員に好かれてます
七瀬
BL
デビュー4年目の人気アイドルグループ「ECLIPSE(エクリプス)」に所属する芹沢 美澄(せりざわみすみ)は、昔からどこか抜けていてマイペースな性格。
歌もダンスも決して一番ではないはずなのに、なぜかファンからもメンバーからも目を離されない存在だった。
世話焼きな幼なじみ、明るく距離の近い同い年、しっかり者で面倒見のいい年上、掴みどころのない自由人、そして無言で隣にいるリーダー——。
気づけば、美澄の周りにはいつも誰かがいて、当たり前のように甘やかされていく。
魔性の男
makase
BL
俺はとにかくモテる。学生の頃から、社会人になった今でも、異性問わずにモテてしまう。
最近、さえない同性の先輩に好意を持たれている。いつものことだろう。いい人だから、傷つけたくはないな。
そう、思っていた。
大学一軍イケメンにいちご狩りに誘われた陰キャの俺、なぜかいちごじゃなくて俺が喰われたんだが(?)
子犬一 はぁて
BL
大学一軍イケメン×大学九軍陰キャ
喰われるなんて聞いてないんだが(?)
俺はただ、
いちご狩りに誘われただけだが。
なのに──
誘ってきた大学一軍イケメンの海皇(21)に
なぜか俺が捕まって食われる展開に?
ちょっと待てい。
意味がわからないんだが!
いちご狩りから始まる
ケンカップルいちゃらぶBL
※大人描写のある話はタイトルに『※』あり
俺は夜、社長の猫になる
衣草 薫
BL
冤罪で職を追われた葵は、若き社長・鷹宮に拾われる。
ただし条件は――夜は“猫”として過ごすこと。
言葉を話さず、ただ撫でられるだけの奇妙な同居生活。
タワマン高層階の部屋で、葵は距離を崩さない鷹宮に少しずつ惹かれていく。
けれど葵はまだ知らない。自分が拾われた本当の理由を。
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
世間に秘された名門男子校・平坂学園体育科
空手の名選手であった高尾雄一は、新任教師として赴任する
高潔な人格と鋼のように鍛えられた肉体
それは、学園にとって最高の生贄の候補に他ならなかった
至高の筋肉を持つ、精神を削られ意志をなくした青年を太古の神に捧げるため、“水”、“風”、“土”の信奉者達が暗躍する
意志をなくし筋肉の操り人形と化した“デク”
消える教師
山奥の男子校で繰り広げられるダークファンタジー