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32_おまけ(産卵)
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いよいよ出産のときが近付き狼狽えるムームを、ティフォは触手の中に抱え込んだ。
「なぁ。本当なんだろうなぁ」
「うんうん。上手だよ。その調子で頑張って」
「違う! 俺は、本当にこれが必要かって聞いてんだ!」
「もちろん! こうやって、いっぱい柔らかくして広げておかないと、卵が出てくるときにムームの大事な穴が裂けちゃったら大変でしょ。中で卵が割れても大変だしね。しっかり濡らしておかないと」
ティフォの不埒な触手が、ムームのお尻を労りながらも割り開く。
細い触手が数本、ムームの中をぬらぬらと濡らしていく。
ムームのイイところをかすめるだけで、切なさばかりが募っていく。
「うぐ。あっ」
「痛くない? 大丈夫?」
「だ、大丈、夫だ。だから、やるならもっとやれよ……っ!」
「嫌だよ。ムームが大好きだから、いっぱい優しくしたい。卵、ありがとうね。大好きなムームとの赤ちゃん、すごくすごく嬉しいんだ。赤ちゃんもムームも絶対に幸せにするからね」
「あぅ。ちが…、もう」
「どうしたの? どっか苦しい?」
抜こうとした触手を掴んだムームは、自ら触手を中に埋め込みながら叫んだ。
「どっか苦しいじゃねぇよ! お前の! せいで! 中が切ないから! もっと来いっていってんだよ! いつもの勢いはどうした化け物!」
一心不乱に腰を振りながら淫らに花開くムームの痴態に、ティフォはあっさりと触手を増やした。
中の奥のさらに奥で、触手に押されてゴリゴリとぶつかりあう卵に、ムームは歯を食いしばって痙攣をしている。
最近のムームは精液を出さずに、つまり地球風にいうのならばドライでイケるようになったらしい。
もともと魅力的なのに、ムームは一体どこまで魅力が増していくのだろう。ムームには一生敵わないなと、ティフォはでれでれと笑った。
「やらしくてかわいい……私の、ムーム」
『ふっ、う、あ、なんか、……くるっ!』
「力を抜いて。怖がらないで。大丈夫。そう、とっても上手だよ」
『ふぅっ、んん、ぁっ!』
外から見ても分かるくらい、お腹の中で卵が移動している。濡れた触手がうごめいて、卵を優しく誘導していく。
『あ、ああっ! うっ!』
「見えたよ! 僕たちの卵が見えたよ! もう少しだ! 痛くない? 大丈夫? がんばれムーム!」
ムームは触手にすがりつき、握りしめ、爪を立てて衝撃に耐えた。
「出たっ!」
ムームがはあはあと息を整えながら見れば、触手が大切そうに捧げ持つのは、鶏の卵よりも二回りは大きく綺麗な丸い形をした卵が一つ。
ティフォはムームに卵を優しく手渡した。
震える手でムームが受け取った乳白色の卵は、鶏の卵のような硬い殻ではなく、蛇の卵のように不思議な弾力がある柔らかな膜に覆われていた。
見た目よりもずっしりと重い。
命の重さだ。
真珠のような光沢がありながらも半透明な卵は、太陽の光にかざせば中の赤ちゃんの様子がうっすらと見えた。生きている。
『綺麗だな』
「うん、うんっ! ぐすっ、ムーム。ありがとう。愛してる。ぐすん」
ティフォの丸い目から、丸い宝石のような涙がぼろぼろと零れ落ちる。
ムームはそれを笑いながらも綺麗だなと思った。善良でまっすぐに育ったティフォは、見た目が化け物でもこんなにも美しい。許されるはずもないのに、許されるのならばこの純粋さを守ってやりたいと思うほどに。
心のどこかで、どうせ最期は無様にのたれ死ぬのだろうと思って生きてきたが、子供みたいに泣くティフォを見て、卵に宿る命を感じて、死ねなくなったなとムームは泣いた。
手の中の卵を優しく胸に抱き声もなく泣くムームを見て、ティフォはさらに声を上げて泣くのだった。
この日、ムームは生まれて初めて、家族ができたのだと実感した。
ムームはこの命にかえても家族を守ろうと、心に誓った。
そしてすっかり和やかな雰囲気になったころ、忘れられていた二つ目の卵が、ムームの腹の中で出口を探しはじめた。
そして三つ目、続けざまに四つ、五つ、六つ、七つと、産んでも産んでも卵が出てくる。
その数、全部で十一個。
最後の一個をなんとか産み落として息も絶え絶えのムームの脳裏に、ウミガメの産卵シーンが浮かんでは消えていく。亀も泣くはずだとムームは思った。
「えっと、あんまりにもムームがかわいくて、ちょっと、ちょーっとだけ、頑張りすぎちゃった、かな?」
可愛くもないのに小首をかしげてそういうティフォに、ムームは泣いた。
そしてティフォの触手を蹴飛ばしながら、怒り狂ったのだった。
「なぁ。本当なんだろうなぁ」
「うんうん。上手だよ。その調子で頑張って」
「違う! 俺は、本当にこれが必要かって聞いてんだ!」
「もちろん! こうやって、いっぱい柔らかくして広げておかないと、卵が出てくるときにムームの大事な穴が裂けちゃったら大変でしょ。中で卵が割れても大変だしね。しっかり濡らしておかないと」
ティフォの不埒な触手が、ムームのお尻を労りながらも割り開く。
細い触手が数本、ムームの中をぬらぬらと濡らしていく。
ムームのイイところをかすめるだけで、切なさばかりが募っていく。
「うぐ。あっ」
「痛くない? 大丈夫?」
「だ、大丈、夫だ。だから、やるならもっとやれよ……っ!」
「嫌だよ。ムームが大好きだから、いっぱい優しくしたい。卵、ありがとうね。大好きなムームとの赤ちゃん、すごくすごく嬉しいんだ。赤ちゃんもムームも絶対に幸せにするからね」
「あぅ。ちが…、もう」
「どうしたの? どっか苦しい?」
抜こうとした触手を掴んだムームは、自ら触手を中に埋め込みながら叫んだ。
「どっか苦しいじゃねぇよ! お前の! せいで! 中が切ないから! もっと来いっていってんだよ! いつもの勢いはどうした化け物!」
一心不乱に腰を振りながら淫らに花開くムームの痴態に、ティフォはあっさりと触手を増やした。
中の奥のさらに奥で、触手に押されてゴリゴリとぶつかりあう卵に、ムームは歯を食いしばって痙攣をしている。
最近のムームは精液を出さずに、つまり地球風にいうのならばドライでイケるようになったらしい。
もともと魅力的なのに、ムームは一体どこまで魅力が増していくのだろう。ムームには一生敵わないなと、ティフォはでれでれと笑った。
「やらしくてかわいい……私の、ムーム」
『ふっ、う、あ、なんか、……くるっ!』
「力を抜いて。怖がらないで。大丈夫。そう、とっても上手だよ」
『ふぅっ、んん、ぁっ!』
外から見ても分かるくらい、お腹の中で卵が移動している。濡れた触手がうごめいて、卵を優しく誘導していく。
『あ、ああっ! うっ!』
「見えたよ! 僕たちの卵が見えたよ! もう少しだ! 痛くない? 大丈夫? がんばれムーム!」
ムームは触手にすがりつき、握りしめ、爪を立てて衝撃に耐えた。
「出たっ!」
ムームがはあはあと息を整えながら見れば、触手が大切そうに捧げ持つのは、鶏の卵よりも二回りは大きく綺麗な丸い形をした卵が一つ。
ティフォはムームに卵を優しく手渡した。
震える手でムームが受け取った乳白色の卵は、鶏の卵のような硬い殻ではなく、蛇の卵のように不思議な弾力がある柔らかな膜に覆われていた。
見た目よりもずっしりと重い。
命の重さだ。
真珠のような光沢がありながらも半透明な卵は、太陽の光にかざせば中の赤ちゃんの様子がうっすらと見えた。生きている。
『綺麗だな』
「うん、うんっ! ぐすっ、ムーム。ありがとう。愛してる。ぐすん」
ティフォの丸い目から、丸い宝石のような涙がぼろぼろと零れ落ちる。
ムームはそれを笑いながらも綺麗だなと思った。善良でまっすぐに育ったティフォは、見た目が化け物でもこんなにも美しい。許されるはずもないのに、許されるのならばこの純粋さを守ってやりたいと思うほどに。
心のどこかで、どうせ最期は無様にのたれ死ぬのだろうと思って生きてきたが、子供みたいに泣くティフォを見て、卵に宿る命を感じて、死ねなくなったなとムームは泣いた。
手の中の卵を優しく胸に抱き声もなく泣くムームを見て、ティフォはさらに声を上げて泣くのだった。
この日、ムームは生まれて初めて、家族ができたのだと実感した。
ムームはこの命にかえても家族を守ろうと、心に誓った。
そしてすっかり和やかな雰囲気になったころ、忘れられていた二つ目の卵が、ムームの腹の中で出口を探しはじめた。
そして三つ目、続けざまに四つ、五つ、六つ、七つと、産んでも産んでも卵が出てくる。
その数、全部で十一個。
最後の一個をなんとか産み落として息も絶え絶えのムームの脳裏に、ウミガメの産卵シーンが浮かんでは消えていく。亀も泣くはずだとムームは思った。
「えっと、あんまりにもムームがかわいくて、ちょっと、ちょーっとだけ、頑張りすぎちゃった、かな?」
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そしてティフォの触手を蹴飛ばしながら、怒り狂ったのだった。
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