冬にビンタ

匠野ワカ

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平凡な男オメガ

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 俺、日野 歩ひの あゆむは、男オメガだ。
 オメガにしては身長も高めで取り立てて美しくもないが、それほど不幸でもない普通の男。
 両親もいたって普通。生まれてから二十一年間、可もなく不可もなし。
 たまのヒートさえ抑制剤でやり過ごせばいいだけの、どこにでもいるようなごく普通の男だった。


 まずはじめに言っておきたい。

 俺はいつも忘れずに身を守る首輪をつけていた。抑制剤だって、ちゃんと用法用量を守って服用していたんだからな。

 良識あるオメガとして真面目に暮らしていた俺を、アルファの財産目当てにヒートを利用するそこらのオメガと一緒にしないでもらいたい。

 俺は真面目に勉強に励み、アルファに寄生しなくても一人で生きていけるように看護師の資格を取得し、病院で勤務していた。まだ働きはじめて一年目のひよっこだったけども。

 思春期に自分の第二の性がオメガだと発覚してから、そりゃ少しは落ちこんだり悩んだりもしたけど、俺なりに考えに考え抜いた堅実な人生計画だったんだ。
 幸運にも、俺がオメガだと発覚してからも態度の変わらない友人、両親に恵まれていたし、俺はこのまま地道に普通の生活を過ごしていけるんだと信じていた。

 ――あの駄犬に出会うまでは。

 
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