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10.往来系異世界転移ですってよ
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「青葉、頼む青葉、オレの代わりにドルキスのイベント走ってくれ……!」
絢爛豪華なふかふかソファーに寝そべって、『魔女の髪と魔王の使い』の新刊を読んでいると、クマをこしらえたエルが、ホラー映画よろしく扉を開きながら顔をのぞかせた。
エルと共に再召喚されてから、半年が経った。
わたしは、エルの国に存在する淀みを浄化しながら――オタク生活にもいそしんでいた。
ある時は、エルの世界で淀みを浄化し、ある時は日本でソシャゲイベントを楽しんでいた。
そう、日本と異世界を行き来する生活を送っているのだ。
わたしはチート魔法を使えたのではない。エルの世界に存在する魔法すべてを使えるチートだったのだ。
それ故に、召喚魔法も使えた、ということだ。召喚、というのだから、特定の場所から呼び寄せるものであり、わたしが行き来するために使えないのでは? と思ったが、どうやら召喚者自体の場所は問わないらしい。あくまで、別の世界にあるものを、別の世界に移動させる魔法のことを、召喚魔法と呼ぶようだ。
まあ、強制帰還を使える人は少ないようで、召喚魔法と合わせて使える人は、わたしくらいしか今のところはいないらしい。
故に、確認することもできなかったようだ。
こうして、わたしはせっせと二つの世界を行ったり来たりして、現在はエルの国内の淀みの浄化が先日終わった。エルの見立て通り、ちょうど半年だった。
それを踏まえ、今度は世界の淀みを浄化するべく、他国との協力を持って一丸となり取り組もう、ということになったようだが、やはり国同士が協力するというのはそう簡単なことじゃないらしく、最近のエルは毎日仕事に追われている。
この半年、エルもわたしに合わせて日本に行き、ソシャゲを楽しむこともあったが、ここ数日はそんなこともできないほど徹夜続きのようだった。
それでもドルキスのイベント開始日だけは忘れていなかったらしい。
「しょうがないなー、目標はどのくらい? 報酬SSR完凸?」
しょうがないな、と口では言ったが、エルがこうして仕事に追われているのは、おおよそわたしのせいであるため、喜んで引き受ける。
今エルを追い立てているのは外交関係の仕事なので、本来ならば第三か第四王子がやるべきなのだが、わたしと仲がいいのはエルだから、と第五王子にも関わらず、慣れない仕事がひっきりなしに舞い込んでくるらしい。
うーん、なんだか申し訳なくなってきた。これはイベントガチャもある程度回しておくべきか……。
「最低でも、イベントシナリオはすべて開けておいてほしい……ことが終わったら読む。報酬カードはそうだな……SRが撫深山殿だったはずだから、全部取れるとこまで取っておいてくれ。レベルは自分で上げる。あとは適当に頼む」
結構しっかりチェックしてんな、こいつ。
「はいはーい。じゃ、行ってくるね」
ステータスウインドウを開き、わたしは強制帰還で日本へと戻った。
ぐ、と伸びをし、わたしはソファの近くにローテーブルを引き寄せ、その上に物を並べて準備を始めた。
水とケトル、割りばしとカップ麺にお菓子類。後は肝心なエル用のスマホと充電器。それから、気分転換用に数冊の漫画と、目を癒すための使い捨てホットマスクも準備する。
ソファには、いつ寝落ちしてもいい様に、ブランケットを装備するもの忘れない。
「うん、完璧」
そうして、わたしはソファへと、ドルキスがプレイしやすい体制で座った。
アプリを開くと、「アイドルエキスパート! ド、ル、キ、ス、始まるよ!」という、可愛らしい女の子の声が流れた。
こうして、わたしはオタク生活を、異世界の隣に住みながら送るのだった。
絢爛豪華なふかふかソファーに寝そべって、『魔女の髪と魔王の使い』の新刊を読んでいると、クマをこしらえたエルが、ホラー映画よろしく扉を開きながら顔をのぞかせた。
エルと共に再召喚されてから、半年が経った。
わたしは、エルの国に存在する淀みを浄化しながら――オタク生活にもいそしんでいた。
ある時は、エルの世界で淀みを浄化し、ある時は日本でソシャゲイベントを楽しんでいた。
そう、日本と異世界を行き来する生活を送っているのだ。
わたしはチート魔法を使えたのではない。エルの世界に存在する魔法すべてを使えるチートだったのだ。
それ故に、召喚魔法も使えた、ということだ。召喚、というのだから、特定の場所から呼び寄せるものであり、わたしが行き来するために使えないのでは? と思ったが、どうやら召喚者自体の場所は問わないらしい。あくまで、別の世界にあるものを、別の世界に移動させる魔法のことを、召喚魔法と呼ぶようだ。
まあ、強制帰還を使える人は少ないようで、召喚魔法と合わせて使える人は、わたしくらいしか今のところはいないらしい。
故に、確認することもできなかったようだ。
こうして、わたしはせっせと二つの世界を行ったり来たりして、現在はエルの国内の淀みの浄化が先日終わった。エルの見立て通り、ちょうど半年だった。
それを踏まえ、今度は世界の淀みを浄化するべく、他国との協力を持って一丸となり取り組もう、ということになったようだが、やはり国同士が協力するというのはそう簡単なことじゃないらしく、最近のエルは毎日仕事に追われている。
この半年、エルもわたしに合わせて日本に行き、ソシャゲを楽しむこともあったが、ここ数日はそんなこともできないほど徹夜続きのようだった。
それでもドルキスのイベント開始日だけは忘れていなかったらしい。
「しょうがないなー、目標はどのくらい? 報酬SSR完凸?」
しょうがないな、と口では言ったが、エルがこうして仕事に追われているのは、おおよそわたしのせいであるため、喜んで引き受ける。
今エルを追い立てているのは外交関係の仕事なので、本来ならば第三か第四王子がやるべきなのだが、わたしと仲がいいのはエルだから、と第五王子にも関わらず、慣れない仕事がひっきりなしに舞い込んでくるらしい。
うーん、なんだか申し訳なくなってきた。これはイベントガチャもある程度回しておくべきか……。
「最低でも、イベントシナリオはすべて開けておいてほしい……ことが終わったら読む。報酬カードはそうだな……SRが撫深山殿だったはずだから、全部取れるとこまで取っておいてくれ。レベルは自分で上げる。あとは適当に頼む」
結構しっかりチェックしてんな、こいつ。
「はいはーい。じゃ、行ってくるね」
ステータスウインドウを開き、わたしは強制帰還で日本へと戻った。
ぐ、と伸びをし、わたしはソファの近くにローテーブルを引き寄せ、その上に物を並べて準備を始めた。
水とケトル、割りばしとカップ麺にお菓子類。後は肝心なエル用のスマホと充電器。それから、気分転換用に数冊の漫画と、目を癒すための使い捨てホットマスクも準備する。
ソファには、いつ寝落ちしてもいい様に、ブランケットを装備するもの忘れない。
「うん、完璧」
そうして、わたしはソファへと、ドルキスがプレイしやすい体制で座った。
アプリを開くと、「アイドルエキスパート! ド、ル、キ、ス、始まるよ!」という、可愛らしい女の子の声が流れた。
こうして、わたしはオタク生活を、異世界の隣に住みながら送るのだった。
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