38 / 90
38
少し早いけれど、どのみちこの山を一日で突っ切って隣街へと行くのは不可能なので、夜を過ごす準備を始めてしまってもいいかもしれない。魔法で怪我をなんとかしたとはいえ、山の斜面を結構な距離転げ落ちたわけだし。
時間的にはまだ進めるけれど、体力的には結構つらい。
「マグラルド、今日はもうあそこで休んでしまおう」
わたしの提案に、マグラルド様は異を唱えない。
ああいう場所がこの山に一つしかないとは思えないけど、わたしたちが進んだ先にあるとも限らない。大体の場所は使ったことがある先輩冒険者か、作った本人そのものに教えてもらえることもあるけれど、休憩所が正確に記された地図なんかは存在しないし。作った側が場所とか考えて建てるわけじゃないから、余計に。
休憩所のところまで下り、様子を確認する。中は、そこそこ汚かったけれど、あくまで雨風にさらされたような土汚ればかりで、明らかに人の不始末で汚れているわけではないので、そこまで不快感はない。
というか、屋根があって、ちゃんと寝られる平地があるだけでありがたい。山の中の野宿って、結構大変なんだよね……。
軽く休憩所を掃除してから、わたしは備え付けの椅子に腰を下ろす。椅子というか、サイズが丁度いい切り株がいくつかあったので、それに座っただけだが。でも、このあからさまなサイズ感は腰をかけることを想定して置かれているのだろうから、実質椅子。
一度腰を下ろしてしまうと、集中力が切れたのか、一気に疲れが襲ってくる。やば、座る前に、たき火の準備しておくべきだった。
「少し休んでいるといい。たき火はこちらで用意しておく」
荷物を置いたマグラルド様が、入口に立ちながら言った。これからたき火のために木を拾ってくるのだろう。
いや、流石にマグラルド様にそんなことをやらせるわけには……!
「い、いや、ボクも行くよ!」
「問題ない。僕はまだ体力が残っている。それに、いざというときのために、回復役が一番元気でいてもらわねば困る」
正論を言われて、わたしは言葉に詰まった。マグラルド様の残り体力云々はともかくとして、パーティーでは回復役が一番のかなめ。言い方が悪いが、パーティーが全滅に近い大怪我をしたところで、それを治せる回復役が健在ならば、体勢は立て直せる。
王族たるマグラルド様に下っ端のような仕事をさせ、平民のわたしが休むなんて、とんでもないことだが……マグラルド様がそう言うのであれば、従うほかない。
「ご、ごめん……。じゃあ、お願い――するね」
わたしは彼の提案に甘えることにした。
時間的にはまだ進めるけれど、体力的には結構つらい。
「マグラルド、今日はもうあそこで休んでしまおう」
わたしの提案に、マグラルド様は異を唱えない。
ああいう場所がこの山に一つしかないとは思えないけど、わたしたちが進んだ先にあるとも限らない。大体の場所は使ったことがある先輩冒険者か、作った本人そのものに教えてもらえることもあるけれど、休憩所が正確に記された地図なんかは存在しないし。作った側が場所とか考えて建てるわけじゃないから、余計に。
休憩所のところまで下り、様子を確認する。中は、そこそこ汚かったけれど、あくまで雨風にさらされたような土汚ればかりで、明らかに人の不始末で汚れているわけではないので、そこまで不快感はない。
というか、屋根があって、ちゃんと寝られる平地があるだけでありがたい。山の中の野宿って、結構大変なんだよね……。
軽く休憩所を掃除してから、わたしは備え付けの椅子に腰を下ろす。椅子というか、サイズが丁度いい切り株がいくつかあったので、それに座っただけだが。でも、このあからさまなサイズ感は腰をかけることを想定して置かれているのだろうから、実質椅子。
一度腰を下ろしてしまうと、集中力が切れたのか、一気に疲れが襲ってくる。やば、座る前に、たき火の準備しておくべきだった。
「少し休んでいるといい。たき火はこちらで用意しておく」
荷物を置いたマグラルド様が、入口に立ちながら言った。これからたき火のために木を拾ってくるのだろう。
いや、流石にマグラルド様にそんなことをやらせるわけには……!
「い、いや、ボクも行くよ!」
「問題ない。僕はまだ体力が残っている。それに、いざというときのために、回復役が一番元気でいてもらわねば困る」
正論を言われて、わたしは言葉に詰まった。マグラルド様の残り体力云々はともかくとして、パーティーでは回復役が一番のかなめ。言い方が悪いが、パーティーが全滅に近い大怪我をしたところで、それを治せる回復役が健在ならば、体勢は立て直せる。
王族たるマグラルド様に下っ端のような仕事をさせ、平民のわたしが休むなんて、とんでもないことだが……マグラルド様がそう言うのであれば、従うほかない。
「ご、ごめん……。じゃあ、お願い――するね」
わたしは彼の提案に甘えることにした。
あなたにおすすめの小説
お飾りの婚約者で結構です! 殿下のことは興味ありませんので、お構いなく!
にのまえ
恋愛
すでに寵愛する人がいる、殿下の婚約候補決めの舞踏会を開くと、王家の勅命がドーリング公爵家に届くも、姉のミミリアは嫌がった。
公爵家から一人娘という言葉に、舞踏会に参加することになった、ドーリング公爵家の次女・ミーシャ。
家族の中で“役立たず”と蔑まれ、姉の身代わりとして差し出された彼女の唯一の望みは――「舞踏会で、美味しい料理を食べること」。
だが、そんな慎ましい願いとは裏腹に、
舞踏会の夜、思いもよらぬ出来事が起こりミーシャは前世、読んでいた小説の世界だと気付く。
石塔に幽閉って、私、石の聖女ですけど
ハツカ
恋愛
私はある日、王子から役立たずだからと、石塔に閉じ込められた。
でも私は石の聖女。
石でできた塔に閉じ込められても何も困らない。
幼馴染の従者も一緒だし。
夫に欠陥品と吐き捨てられた妃は、魔法使いの手を取るか?
里見
恋愛
リュシアーナは、公爵家の生まれで、容姿は清楚で美しく、所作も惚れ惚れするほどだと評判の妃だ。ただ、彼女が第一皇子に嫁いでから三年が経とうとしていたが、子どもはまだできなかった。
そんな時、夫は陰でこう言った。
「完璧な妻だと思ったのに、肝心なところが欠陥とは」
立ち聞きしてしまい、失望するリュシアーナ。そんな彼女の前に教え子だった魔法使いが現れた。そして、魔法使いは、手を差し出して、提案する。リュシアーナの願いを叶える手伝いをするとーー。
リュシアーナは、自身を子を産む道具のように扱う夫とその周囲を利用してのしあがることを決意し、その手をとる。様々な思惑が交錯する中、彼女と魔法使いは策謀を巡らして、次々と世論を操っていく。
男尊女卑の帝国の中で、リュシアーナは願いを叶えることができるのか、魔法使いは本当に味方なのか……。成り上がりを目論むリュシアーナの陰謀が幕を開ける。
***************************
本編完結済み。番外編を不定期更新中。
婚約破棄された私は、処刑台へ送られるそうです
秋月乃衣
恋愛
ある日システィーナは婚約者であるイデオンの王子クロードから、王宮敷地内に存在する聖堂へと呼び出される。
そこで聖女への非道な行いを咎められ、婚約破棄を言い渡された挙句投獄されることとなる。
いわれの無い罪を否定する機会すら与えられず、寒く冷たい牢の中で断頭台に登るその時を待つシスティーナだったが──
他サイト様でも掲載しております。
聖女は記憶と共に姿を消した~婚約破棄を告げられた時、王国の運命が決まった~
キョウキョウ
恋愛
ある日、婚約相手のエリック王子から呼び出された聖女ノエラ。
パーティーが行われている会場の中央、貴族たちが注目する場所に立たされたノエラは、エリック王子から突然、婚約を破棄されてしまう。
最近、冷たい態度が続いていたとはいえ、公の場での宣言にノエラは言葉を失った。
さらにエリック王子は、ノエラが聖女には相応しくないと告げた後、一緒に居た美しい女神官エリーゼを真の聖女にすると宣言してしまう。彼女こそが本当の聖女であると言って、ノエラのことを偽物扱いする。
その瞬間、ノエラの心に浮かんだのは、万が一の時のために準備していた計画だった。
王国から、聖女ノエラに関する記憶を全て消し去るという計画を、今こそ実行に移す時だと決意した。
こうして聖女ノエラは人々の記憶から消え去り、ただのノエラとして新たな一歩を踏み出すのだった。
※過去に使用した設定や展開などを再利用しています。
※カクヨムにも掲載中です。
運命に勝てない当て馬令嬢の幕引き。
ぽんぽこ狸
恋愛
気高き公爵家令嬢オリヴィアの護衛騎士であるテオは、ある日、主に天啓を受けたと打ち明けられた。
その内容は運命の女神の聖女として召喚されたマイという少女と、オリヴィアの婚約者であるカルステンをめぐって死闘を繰り広げ命を失うというものだったらしい。
だからこそ、オリヴィアはもう何も望まない。テオは立場を失うオリヴィアの事は忘れて、自らの道を歩むようにと言われてしまう。
しかし、そんなことは出来るはずもなく、テオも将来の王妃をめぐる運命の争いの中に巻き込まれていくのだった。
五万文字いかない程度のお話です。さくっと終わりますので読者様の暇つぶしになればと思います。
【完結】次期聖女として育てられてきましたが、異父妹の出現で全てが終わりました。史上最高の聖女を追放した代償は高くつきます!
林 真帆
恋愛
マリアは聖女の血を受け継ぐ家系に生まれ、次期聖女として大切に育てられてきた。
マリア自身も、自分が聖女になり、全てを国と民に捧げるものと信じて疑わなかった。
そんなマリアの前に、異父妹のカタリナが突然現れる。
そして、カタリナが現れたことで、マリアの生活は一変する。
どうやら現聖女である母親のエリザベートが、マリアを追い出し、カタリナを次期聖女にしようと企んでいるようで……。
2022.6.22 第一章完結しました。
2022.7.5 第二章完結しました。
第一章は、主人公が理不尽な目に遭い、追放されるまでのお話です。
第二章は、主人公が国を追放された後の生活。まだまだ不幸は続きます。
第三章から徐々に主人公が報われる展開となる予定です。