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第六部
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わたしは思わず、一番近くにあった紙を拾い上げる。部屋の入口にまで、紙が広がっていた。
拾い上げた紙には、何が書いてあるか全く分からない。シーバイズの言葉ではなく、共用語と言われていた、千年後の、この世界の言葉だ。
「イエリオ」と呼んでも、反応しない。過分、本当にわたしに気が付いていないのだと思う。
仕方がないので、なるべく紙をよけながら、わたしはつま先立ちでイエリオのところまで向かう。肩を叩き、それでも反応がないので、結構激しめに揺さぶると、ようやくこちらを向いた。
「何してるの。避難しないと危ないよ。フィジャとイナリが下で避難の準備してくれてるから。わたしたちも早く行こう」
「いえ、でも……。……どこかに、どこかにあるはずなんです」
イエリオも、流石に今避難しないとまずいことは分かっているようだ。でも、それ以上に気になることがあるらしい。こうなったイエリオを引きはがすの、大変だからなあ……。
分かっていない状態で夢中になっているなら、説明すれば納得して、中断して行動してくれるけど、こうなるとなかなか手放してくれない。
「何を探してるの?」
こうなったら一緒になって探したほうが早いまである。わたしは、しゃがみこんで下に散乱した紙をまとめる。イエリオの癖からして、この辺りの紙はもう読まないだろうな、というのを拾っていっていると、イエリオの言葉に、手が止まった。
「あの魔物の、正体が分かりそうなものを」
「魔物……」
「ええ。冒険者ギルドは『壁喰い』と称したようですが、あの見た目の魔物に近いものを、以前、見たことがあるはずなんです」
それは、ベースになった生き物の文献を見たことがある、ということなのだろうか? スライムのような見た目をしたアレの元がわたしにはなんだか全く分からないけれど、文献が残っているのなら、元になった生き物がいるんだろう。意外と、それを見れば納得できるかもしれない。
「そういう文献があるってこと? でも、一応対処はできるらしいし、諦めて避難して、また今度探せば――」
「いえ、文献ではありません。論文です。――、あった!」
イエリオが数枚、上の方でとじられている紙束を手に取る。やはり文字は共用語で、わたしには、ほとんど読み取ることができない。
ただ、製作者の欄なのであろう、人物名のサインには見覚えがあった。
オカルさんのものだ。
「それは……」
「魔物を無害化する研究の論文です。凶暴な魔物も弱体化させられれば一般人による駆除や対応が簡単になるのでは、というものです。実用化には至っていませんが……ほら、ここです」
イエリオが、数枚紙をめくって、一部をわたしに見せてくる。
そして、そこには、確かに『壁喰い』によく似た何かが図としてあった。細部は違うけれど、わたしが今まで見てきたどの生物よりも、『壁喰い』に近い気がした。
拾い上げた紙には、何が書いてあるか全く分からない。シーバイズの言葉ではなく、共用語と言われていた、千年後の、この世界の言葉だ。
「イエリオ」と呼んでも、反応しない。過分、本当にわたしに気が付いていないのだと思う。
仕方がないので、なるべく紙をよけながら、わたしはつま先立ちでイエリオのところまで向かう。肩を叩き、それでも反応がないので、結構激しめに揺さぶると、ようやくこちらを向いた。
「何してるの。避難しないと危ないよ。フィジャとイナリが下で避難の準備してくれてるから。わたしたちも早く行こう」
「いえ、でも……。……どこかに、どこかにあるはずなんです」
イエリオも、流石に今避難しないとまずいことは分かっているようだ。でも、それ以上に気になることがあるらしい。こうなったイエリオを引きはがすの、大変だからなあ……。
分かっていない状態で夢中になっているなら、説明すれば納得して、中断して行動してくれるけど、こうなるとなかなか手放してくれない。
「何を探してるの?」
こうなったら一緒になって探したほうが早いまである。わたしは、しゃがみこんで下に散乱した紙をまとめる。イエリオの癖からして、この辺りの紙はもう読まないだろうな、というのを拾っていっていると、イエリオの言葉に、手が止まった。
「あの魔物の、正体が分かりそうなものを」
「魔物……」
「ええ。冒険者ギルドは『壁喰い』と称したようですが、あの見た目の魔物に近いものを、以前、見たことがあるはずなんです」
それは、ベースになった生き物の文献を見たことがある、ということなのだろうか? スライムのような見た目をしたアレの元がわたしにはなんだか全く分からないけれど、文献が残っているのなら、元になった生き物がいるんだろう。意外と、それを見れば納得できるかもしれない。
「そういう文献があるってこと? でも、一応対処はできるらしいし、諦めて避難して、また今度探せば――」
「いえ、文献ではありません。論文です。――、あった!」
イエリオが数枚、上の方でとじられている紙束を手に取る。やはり文字は共用語で、わたしには、ほとんど読み取ることができない。
ただ、製作者の欄なのであろう、人物名のサインには見覚えがあった。
オカルさんのものだ。
「それは……」
「魔物を無害化する研究の論文です。凶暴な魔物も弱体化させられれば一般人による駆除や対応が簡単になるのでは、というものです。実用化には至っていませんが……ほら、ここです」
イエリオが、数枚紙をめくって、一部をわたしに見せてくる。
そして、そこには、確かに『壁喰い』によく似た何かが図としてあった。細部は違うけれど、わたしが今まで見てきたどの生物よりも、『壁喰い』に近い気がした。
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