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第六部
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きっとわたしと師匠は、どこかで似ていたのだと思う。
不老不死だからこそ、何かに固執することが最善だと思わなかった師匠。
一度死んでいるからこそ、諦めずに頑張ったって、死んだら無になるとしか考えなかったわたし。
周囲に馴染んでいるように見えて、明確な一線があったのだ。
「彼らの望みは、彼らだけのものです。師匠がどうにかしていいものじゃない。……これだけの騒ぎを起こしたのだから、償うべきだとは思いますけど」
もしそうやって、野望を捨てなければいけなかったとしても、それもまた、彼らの人生なのだ。
「同時に、師匠の取るべき責任でもあるんですよ。師匠がたきつけなければ、オカルさんたちはこんなことをしなかったかもしれないんですから。あるいは、ちゃんと最後まで付き合っていれば、この二回目はなかった」
「……お前が転移魔法を失敗したのが全ての原因だ」
「ぐっ……!」
それを言われると、ちょっと言い返せない。師匠が世界を滅ぼしたのも、協力者を探し求めたのも、わたしが転移魔法に失敗してこの時代に飛んだのが原因なのだから。それさえなければ、わたしは千年前にいて、今日も師匠から魔法を教えてもらっていたはず。
世界が滅ぶことも、こうして二度もこの街を危険にさらすこともなかった。……まあ、そもそも、この街自体が生まれなかったかもしれないけど。
「馬鹿じゃないの。責任はアンタにあるに決まってんじゃん」
トゲのあるイナリの言葉が、わたしたちの会話に割って入った。
「原因がマレーゼにあるとしても、行動を起こしたのはアンタだ」
「間男のくせに」
「寝言は寝て言えよ。僕たちがマレーゼの夫なんだから」
夫、という言葉に、師匠は顔をしかめる。嫌悪感を隠そうともしない。
「――……師匠、もう間違えないでください」
「いや、だから、間男は――」
「そうじゃなくて。……世界を『なかったこと』にしたのを、間違いだったと思ったんでしょう? なら、また同じ間違いを犯さないで」
「……!」
師匠の表情が分かりやすく変化する。
師匠はしばらく、口を開かなかった。何を考えているのかは、さっきとは違って口から出ることがなかったからわたしには分からないけれど――その表情を見れば、悪いことは考えていないのだと思いたい。
ようやく、師匠は目を伏せて、ため息を一つこぼした。
「……あまたの弟子を取り、この歳にもなって、他人に諭されるとはな。しかも、その相手が弟子か……」
「分かった」という師匠の声は、はっきりと聞こえる。
「ぼくが責任を持って、何とかしよう。ちゃんと、ね」
そう言って師匠が軽く手を振ると、ごう、とすさまじい突風が部屋の中を通る。わたしは思わず目をつぶってしまった。
風が収まって目を開けると、すっかり煙は跡形もなくなっていて、師匠も、ついでにオカルさんも消えていた。
不老不死だからこそ、何かに固執することが最善だと思わなかった師匠。
一度死んでいるからこそ、諦めずに頑張ったって、死んだら無になるとしか考えなかったわたし。
周囲に馴染んでいるように見えて、明確な一線があったのだ。
「彼らの望みは、彼らだけのものです。師匠がどうにかしていいものじゃない。……これだけの騒ぎを起こしたのだから、償うべきだとは思いますけど」
もしそうやって、野望を捨てなければいけなかったとしても、それもまた、彼らの人生なのだ。
「同時に、師匠の取るべき責任でもあるんですよ。師匠がたきつけなければ、オカルさんたちはこんなことをしなかったかもしれないんですから。あるいは、ちゃんと最後まで付き合っていれば、この二回目はなかった」
「……お前が転移魔法を失敗したのが全ての原因だ」
「ぐっ……!」
それを言われると、ちょっと言い返せない。師匠が世界を滅ぼしたのも、協力者を探し求めたのも、わたしが転移魔法に失敗してこの時代に飛んだのが原因なのだから。それさえなければ、わたしは千年前にいて、今日も師匠から魔法を教えてもらっていたはず。
世界が滅ぶことも、こうして二度もこの街を危険にさらすこともなかった。……まあ、そもそも、この街自体が生まれなかったかもしれないけど。
「馬鹿じゃないの。責任はアンタにあるに決まってんじゃん」
トゲのあるイナリの言葉が、わたしたちの会話に割って入った。
「原因がマレーゼにあるとしても、行動を起こしたのはアンタだ」
「間男のくせに」
「寝言は寝て言えよ。僕たちがマレーゼの夫なんだから」
夫、という言葉に、師匠は顔をしかめる。嫌悪感を隠そうともしない。
「――……師匠、もう間違えないでください」
「いや、だから、間男は――」
「そうじゃなくて。……世界を『なかったこと』にしたのを、間違いだったと思ったんでしょう? なら、また同じ間違いを犯さないで」
「……!」
師匠の表情が分かりやすく変化する。
師匠はしばらく、口を開かなかった。何を考えているのかは、さっきとは違って口から出ることがなかったからわたしには分からないけれど――その表情を見れば、悪いことは考えていないのだと思いたい。
ようやく、師匠は目を伏せて、ため息を一つこぼした。
「……あまたの弟子を取り、この歳にもなって、他人に諭されるとはな。しかも、その相手が弟子か……」
「分かった」という師匠の声は、はっきりと聞こえる。
「ぼくが責任を持って、何とかしよう。ちゃんと、ね」
そう言って師匠が軽く手を振ると、ごう、とすさまじい突風が部屋の中を通る。わたしは思わず目をつぶってしまった。
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