転生からの魔法失敗で、1000年後に転移かつ獣人逆ハーレムは盛りすぎだと思います!

ゴルゴンゾーラ三国

文字の大きさ
2 / 493
第一部

02 

しおりを挟む
 ここまで分かればいいか、とわたしは魔法を解除する。脳内で飛行体が弾けた感覚を得て、目の前が暗くなる。ただ目をつむっただけの状態になる。

「あ、えーと……。語彙増加〈イースリメス〉」

 外国なら言葉が分からないと困る。文字まで全て理解できる、言語理解〈インスティーング〉は使えないけれど、まあ、会話が成立つのであれば問題ないだろう。
 あとはここからおさらばするだけ。
 また転移魔法を使って失敗しても嫌だし、地道に帰るとしよう。

 ここの住民とはち合わせるのも嫌だし、とわたしは窓に手をかける。先ほどの探索〈サーチ〉で、ここが二階で、かつ、この当たりの人通りが少ないことは知っている。二階くらいなら飛び降りるときに風の魔法で衝撃を柔げれば問題ないだろう。

 木窓を開け、身を乗り出そうとしたとき――。

「誰……っ、わ、わ、は、早まらないで!」

 鋭い怒鳴り声は、一瞬にして、焦り声に変わる。

「あ、怪しい者で……は……」

 泥棒ではない、と身の潔白を訴えるべく、片足を窓枠にかけたまま振り返り、わたしはそこにいた男に釘付けになった。

 男に、というか、男の耳に。

 つんと頭の上部に立つ獣耳。犬――いや、狐か?
 わたしが驚いて固まって、狐耳の彼はおろおろと。二人の間に妙な空気が流れる。それを打開したのは、別の男の声だった。

「イナリ、どうした?」

「ふ、ふぉ、すげ、犬ー!」

 わたしは思わず、自分の立場も忘れて叫んでいた。もっふもふの、二足歩行の犬! しかも喋ってる!
 成体の熊みたいに大きな彼は、雪のように白い毛をしていた。人間で言う襟足に当たるであろう毛の部分が少しだけ長く、一つに縛られている。
 完全に犬、というわけではなく、骨格というか立ち姿はどことなく人間味がある。
 こちらの世界にファンタジーな人種……エルフやドワーフ、獣人なんかはいないと教えられてきたのに。

「っ、あ……」

 二足歩行な犬の彼は、びくりとしたように肩を震わせ、何処かへと逃げていった。
 その様子にハッとなり、わたしは足をおろして両手をあげ、武器を持ってないアピールをしながら、弁解を再開した。

「本当に怪しいものではなく! あの、転移魔法に失敗しちゃって……ここ、どこですか? すぐに出ていきますんで、警兵にだけは何卒、何卒……」

 警兵とは、前の世界でいう警察みたいなものだ。ちょっとした失敗で前科持ちにはなりたくない。

「魔法……? 警兵……?」

 しかし、イナリと呼ばれた彼は首を傾げた。全く心当たりがない、と言いたげな表情だ。
……まさか、異世界転生の後は異世界転移で、また別の世界とか言わないよね?

 嫌な予感がわたしの冷や汗をさそう。

「あ、あの、ここ、何て国ですか? シーバイズでないのは分かるんですが」

「フィンネル国ですよ」

 答えてくれたのは目の前の男ではなく、新たに出てきた男性だった。男にしては珍しい、腰まである淡い茶色の長い髪とメガネが特徴的だ。
 長い髪で非常に分かりにくいが、うさぎのような垂れ耳がついている。
 そんな彼は、何故だか恍惚とした表情を浮かべていた。

「魔法、シーバイズ……! ああ、貴女も前文明に興味がおありで?」

「前、文明……って」

 なにを言ってるんだろう。前文明なわけあるか、現にわたしが生きているんだから。
 けれども彼は、混乱するわたしに構わず続けた。

「かの超大災害で滅んだ前文明……もうほとんど資料がありませんが。約千年前以上も前にどんな文明があったのか……考えるだけでわくわくしませんか!」

 え、なんて?
しおりを挟む
感想 27

あなたにおすすめの小説

異世界推し生活のすすめ

八尋
恋愛
 現代で生粋のイケメン筋肉オタクだった壬生子がトラ転から目を覚ますと、そこは顔面の美の価値観が逆転した異世界だった…。  この世界では壬生子が理想とする逞しく凛々しい騎士たちが"不細工"と蔑まれて不遇に虐げられていたのだ。  身分違いや顔面への美意識格差と戦いながら推しへの愛を(心の中で)叫ぶ壬生子。  異世界で誰も想像しなかった愛の形を世界に示していく。​​​​​​​​​​​​​​​​ 完結済み、定期的にアップしていく予定です。 完全に作者の架空世界観なのでご都合主義や趣味が偏ります、ご注意ください。 作者の作品の中ではだいぶコメディ色が強いです。 誤字脱字誤用ありましたらご指摘ください、修正いたします。 なろうにもアップ予定です。

この世界、イケメンが迫害されてるってマジ!?〜アホの子による無自覚救済物語〜

具なっしー
恋愛
※この表紙は前世基準。本編では美醜逆転してます。AIです 転生先は──美醜逆転、男女比20:1の世界!? 肌は真っ白、顔のパーツは小さければ小さいほど美しい!? その結果、地球基準の超絶イケメンたちは “醜男(キメオ)” と呼ばれ、迫害されていた。 そんな世界に爆誕したのは、脳みそふわふわアホの子・ミーミ。 前世で「喋らなければ可愛い」と言われ続けた彼女に同情した神様は、 「この子は救済が必要だ…!」と世界一の美少女に転生させてしまった。 「ひきわり納豆顔じゃん!これが美しいの??」 己の欲望のために押せ押せ行動するアホの子が、 結果的にイケメン達を救い、世界を変えていく──! 「すきーー♡結婚してください!私が幸せにしますぅ〜♡♡♡」 でも、気づけば彼らが全方向から迫ってくる逆ハーレム状態に……! アホの子が無自覚に世界を救う、 価値観バグりまくりご都合主義100%ファンタジーラブコメ!

ちょっと不運な私を助けてくれた騎士様が溺愛してきます

五珠 izumi
恋愛
城の下働きとして働いていた私。 ある日、開かれた姫様達のお見合いパーティー会場に何故か魔獣が現れて、運悪く通りかかった私は切られてしまった。 ああ、死んだな、そう思った私の目に見えるのは、私を助けようと手を伸ばす銀髪の美少年だった。 竜獣人の美少年に溺愛されるちょっと不運な女の子のお話。 *魔獣、獣人、魔法など、何でもありの世界です。 *お気に入り登録、しおり等、ありがとうございます。 *本編は完結しています。  番外編は不定期になります。  次話を投稿する迄、完結設定にさせていただきます。

眺めるだけならよいでしょうか?〜美醜逆転世界に飛ばされた私〜

波間柏
恋愛
美醜逆転の世界に飛ばされた。普通ならウハウハである。だけど。 ✻読んで下さり、ありがとうございました。✻

花嫁召喚 〜異世界で始まる一妻多夫の婚活記〜

文月・F・アキオ
恋愛
婚活に行き詰まっていた桜井美琴(23)は、ある日突然異世界へ召喚される。そこは女性が複数の夫を迎える“一妻多夫制”の国。 花嫁として召喚された美琴は、生きるために結婚しなければならなかった。 堅実な兵士、まとめ上手な書記官、温和な医師、おしゃべりな商人、寡黙な狩人、心優しい吟遊詩人、几帳面な官僚――多彩な男性たちとの出会いが、美琴の未来を大きく動かしていく。 帰れない現実と新たな絆の狭間で、彼女が選ぶ道とは? 異世界婚活ファンタジー、開幕。

『えっ! 私が貴方の番?! そんなの無理ですっ! 私、動物アレルギーなんですっ!』

伊織愁
恋愛
 人族であるリジィーは、幼い頃、狼獣人の国であるシェラン国へ両親に連れられて来た。 家が没落したため、リジィーを育てられなくなった両親は、泣いてすがるリジィーを修道院へ預ける事にしたのだ。  実は動物アレルギーのあるリジィ―には、シェラン国で暮らす事が日に日に辛くなって来ていた。 子供だった頃とは違い、成人すれば自由に国を出ていける。 15になり成人を迎える年、リジィーはシェラン国から出ていく事を決心する。 しかし、シェラン国から出ていく矢先に事件に巻き込まれ、シェラン国の近衛騎士に助けられる。  二人が出会った瞬間、頭上から光の粒が降り注ぎ、番の刻印が刻まれた。 狼獣人の近衛騎士に『私の番っ』と熱い眼差しを受け、リジィ―は内心で叫んだ。 『私、動物アレルギーなんですけどっ! そんなのありーっ?!』

【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!

桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。 「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。 異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。 初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!

獣人の世界に落ちたら最底辺の弱者で、生きるの大変だけど保護者がイケオジで最強っぽい。

真麻一花
恋愛
私は十歳の時、獣が支配する世界へと落ちてきた。 狼の群れに襲われたところに現れたのは、一頭の巨大な狼。そのとき私は、殺されるのを覚悟した。 私を拾ったのは、獣人らしくないのに町を支配する最強の獣人だった。 なんとか生きてる。 でも、この世界で、私は最低辺の弱者。

処理中です...