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第一部
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事の顛末を、教えてもらった。
昨晩は、イナリさんが十回目の失恋をしたそうで、酒を飲んで忘れようと四人で集まって馬鹿騒ぎをしたらしい。
その中で、べろべろに酔ったイエリオさんが、奇跡の魔法、希望〈キリグラ〉という魔法の文献を見つけたことを話す。
普段なら、ただの笑い話で終わるはずが、四人ともアホみたいに酔っていて、誰も止めることなく「やろう」ということになった。
結局、なにも変化は訪れず、イナリさんが酔いつぶれてその日はお開きに。
そうして、今にいたると。
「十回目の失恋とか嘘でしょ」
わたしは思わず馬鹿にするような笑い方をしてしまった。
イナリさんは勿論、イエリオさんも、フィジャも、勝者の造形をしている。平たく言えばイケメンだ。相当モテてるに違いない。
しかし、三人はわたしの発言に目を丸くしていた。
「……そういえば、マレーゼは何種?」
「種……? 何科何属みたいなアレですか?」
前世にはあった分類方法ではあるが、今世ではなかったように思うけど……ああでも、千年も経てば変わるか。
「人間は何に当たりますか?」
ぴしり、と。
わたしの発言によって、空気が凍るのが分かった。
イナリさんが立ち上がって逃げようとするのと、イエリオさんがイナリさんの腕を掴むのと。フィジャが顔を隠しながら天を仰ぐのはほぼ同時だった。
「この手を離しなよ」
「嫌ですよ、逃げないでください、何を、人間の女の子と何を話せばいいんですか!」
「さっきまでべらべら話してたでしょ!」
「っ、あぁ……」
なんだこの変わりよう……。ちょっと引くレベル。
「あの……」
「っ、はい!?」
言い合いを続けるイナリさんとイエリオさんを置いて、わたしはフィジャに話しかけた。
「な、なんでしょう」
「な、なんで敬語なんでしょう」
先程までのフレンドリーさはなんだったのか。目が泳ぎまくって、挙動不審だ。
「だ、だって、マレーゼ……様が人間だと仰るから……」
いや、様って。
「たかだか人間だからって大袈裟な。普通に――」
「大袈裟なんかじゃない! ……です……」
フィジャが怒鳴り、だん、と机を叩きながら立ち上がり、はっとしたように、しょんぼりと座る。
「わ、私たち獣人にとって、に、に、人間というのは、至極、とく、と、特別なものなのですよ」
メガネのブリッジを、落ち着かなそうに押し上げたり下げたりしながら、イエリオさんがいう。先程までぺらぺらと語っていたのが嘘のように震えた声だった。
彼はガチガチに緊張しながらも教えてくれた。
いわく、イエリオさんらのような獣人と呼ばれる種族は、かの超大災害の生き残りが、魔法を使って動物を人にしたのが起源だという。
根元であるその人間は、話し相手が欲しい、友が欲しい、一緒に生きてくれる存在が欲しい、と渇望して魔法に望んだからか、獣人は本能的に人間に強い憧れと好意を抱いているらしい。
昨晩は、イナリさんが十回目の失恋をしたそうで、酒を飲んで忘れようと四人で集まって馬鹿騒ぎをしたらしい。
その中で、べろべろに酔ったイエリオさんが、奇跡の魔法、希望〈キリグラ〉という魔法の文献を見つけたことを話す。
普段なら、ただの笑い話で終わるはずが、四人ともアホみたいに酔っていて、誰も止めることなく「やろう」ということになった。
結局、なにも変化は訪れず、イナリさんが酔いつぶれてその日はお開きに。
そうして、今にいたると。
「十回目の失恋とか嘘でしょ」
わたしは思わず馬鹿にするような笑い方をしてしまった。
イナリさんは勿論、イエリオさんも、フィジャも、勝者の造形をしている。平たく言えばイケメンだ。相当モテてるに違いない。
しかし、三人はわたしの発言に目を丸くしていた。
「……そういえば、マレーゼは何種?」
「種……? 何科何属みたいなアレですか?」
前世にはあった分類方法ではあるが、今世ではなかったように思うけど……ああでも、千年も経てば変わるか。
「人間は何に当たりますか?」
ぴしり、と。
わたしの発言によって、空気が凍るのが分かった。
イナリさんが立ち上がって逃げようとするのと、イエリオさんがイナリさんの腕を掴むのと。フィジャが顔を隠しながら天を仰ぐのはほぼ同時だった。
「この手を離しなよ」
「嫌ですよ、逃げないでください、何を、人間の女の子と何を話せばいいんですか!」
「さっきまでべらべら話してたでしょ!」
「っ、あぁ……」
なんだこの変わりよう……。ちょっと引くレベル。
「あの……」
「っ、はい!?」
言い合いを続けるイナリさんとイエリオさんを置いて、わたしはフィジャに話しかけた。
「な、なんでしょう」
「な、なんで敬語なんでしょう」
先程までのフレンドリーさはなんだったのか。目が泳ぎまくって、挙動不審だ。
「だ、だって、マレーゼ……様が人間だと仰るから……」
いや、様って。
「たかだか人間だからって大袈裟な。普通に――」
「大袈裟なんかじゃない! ……です……」
フィジャが怒鳴り、だん、と机を叩きながら立ち上がり、はっとしたように、しょんぼりと座る。
「わ、私たち獣人にとって、に、に、人間というのは、至極、とく、と、特別なものなのですよ」
メガネのブリッジを、落ち着かなそうに押し上げたり下げたりしながら、イエリオさんがいう。先程までぺらぺらと語っていたのが嘘のように震えた声だった。
彼はガチガチに緊張しながらも教えてくれた。
いわく、イエリオさんらのような獣人と呼ばれる種族は、かの超大災害の生き残りが、魔法を使って動物を人にしたのが起源だという。
根元であるその人間は、話し相手が欲しい、友が欲しい、一緒に生きてくれる存在が欲しい、と渇望して魔法に望んだからか、獣人は本能的に人間に強い憧れと好意を抱いているらしい。
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