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第二部
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「あの、ちゃんと説明出来るかわからないんだけど、結論から言うとね、わたし、フィジャと――フィジャ達と、家族になりたいな、って思うよ」
「うん? ――……うん」
最初は、状況がよく分かっていなかったようなフィジャも、わたしが最後まで言うと、病院での続きを話そうとしていることが分かったんだろう。彼もまた、手を止める。
サア、と水が流れる音が、やけに響く。
わたしは、きゅ、と蛇口をひねって水を止めた。
「わたしは一夫多妻とか、一妻多夫とか、そういう概念がない世界で生きてきたから、一対一の恋愛ならまだしも、一対多の恋愛が分かる日が来ないかもしれない。来るかもしれないけど、今はちょっとまだ、分かんないかな」
確かに、今は全然分かんない! とはなっているけれど、未来は確定じゃない。フィジャに、こうしてわたしの考えを伝える時点で、こんなにも心臓がどきどきしている。どうでもいい他人にだったら、こんなに心が動くことはない。
だからもしかしたら、恋愛的に、皆を好きになる日がくるかもしれない。でも、やっぱり、一対一の恋愛観を壊せなくて、好きにならないかもしれない。
どっちも決めつけるのはよくない、というのが、現状の考えで。だって、きっと、どっちかが正しい、と思い込んで、そうあろうと決めつけた時点で、だんだんと歪んでいく道しか歩めない気がするのだ。
でも、それを抜きにして、恋愛感情を考えなかったとしても、フィジャは、大切な人だ。全部から目をそらして、ただ『希望〈キリグラ〉の用意したままに動く』というのは、一番駄目なように思えるのだ。
「だから、こんなわたしだけど、でも、フィジャ達と家族になりたいな、って思ってる。……まあ、イナリさんとヴィルフさんからの好感度を考えると、あの二人は家族になるっていう入り口にも立ててない気がするけど」
保留なんて、一番酷い回答でごめんね。一通り説明して、わたしはそう言った。
わたしに明確な恋愛感情を示してくれているフィジャには、かなり残酷な答えだと思う。まあ、希望〈キリグラ〉が絡んでいる以上、たとえわたしを嫌いになったところで、はいじゃあ別れましょう、この話はなかったことに、なんて出来ないのだが。
だからこそ、わたしがここに来てよかったと、思ってほしいという考えが、ないと言えば嘘になる。
わたしの話を咀嚼しているのか、フィジャは少し黙って、考えているようだった。やっぱり、こういう言い方はずるかっただろうか。
――少しして、フィジャが口を開く。
「マレーゼ、ボクはね、そもそも自分が結婚できるとは思ってなかったんだよ。それどころか、誰かを好きになっても、こうやって向き合って貰うなんて論外で、相手の視界や意識に存在することすら、無理だろうなって、小さい頃からずっと思ってた」
だって、こんな見た目だもの。
フィジャは眉を下げて、苦笑いをする。そうして、少しばかり、昔話を始めるのだった。
「うん? ――……うん」
最初は、状況がよく分かっていなかったようなフィジャも、わたしが最後まで言うと、病院での続きを話そうとしていることが分かったんだろう。彼もまた、手を止める。
サア、と水が流れる音が、やけに響く。
わたしは、きゅ、と蛇口をひねって水を止めた。
「わたしは一夫多妻とか、一妻多夫とか、そういう概念がない世界で生きてきたから、一対一の恋愛ならまだしも、一対多の恋愛が分かる日が来ないかもしれない。来るかもしれないけど、今はちょっとまだ、分かんないかな」
確かに、今は全然分かんない! とはなっているけれど、未来は確定じゃない。フィジャに、こうしてわたしの考えを伝える時点で、こんなにも心臓がどきどきしている。どうでもいい他人にだったら、こんなに心が動くことはない。
だからもしかしたら、恋愛的に、皆を好きになる日がくるかもしれない。でも、やっぱり、一対一の恋愛観を壊せなくて、好きにならないかもしれない。
どっちも決めつけるのはよくない、というのが、現状の考えで。だって、きっと、どっちかが正しい、と思い込んで、そうあろうと決めつけた時点で、だんだんと歪んでいく道しか歩めない気がするのだ。
でも、それを抜きにして、恋愛感情を考えなかったとしても、フィジャは、大切な人だ。全部から目をそらして、ただ『希望〈キリグラ〉の用意したままに動く』というのは、一番駄目なように思えるのだ。
「だから、こんなわたしだけど、でも、フィジャ達と家族になりたいな、って思ってる。……まあ、イナリさんとヴィルフさんからの好感度を考えると、あの二人は家族になるっていう入り口にも立ててない気がするけど」
保留なんて、一番酷い回答でごめんね。一通り説明して、わたしはそう言った。
わたしに明確な恋愛感情を示してくれているフィジャには、かなり残酷な答えだと思う。まあ、希望〈キリグラ〉が絡んでいる以上、たとえわたしを嫌いになったところで、はいじゃあ別れましょう、この話はなかったことに、なんて出来ないのだが。
だからこそ、わたしがここに来てよかったと、思ってほしいという考えが、ないと言えば嘘になる。
わたしの話を咀嚼しているのか、フィジャは少し黙って、考えているようだった。やっぱり、こういう言い方はずるかっただろうか。
――少しして、フィジャが口を開く。
「マレーゼ、ボクはね、そもそも自分が結婚できるとは思ってなかったんだよ。それどころか、誰かを好きになっても、こうやって向き合って貰うなんて論外で、相手の視界や意識に存在することすら、無理だろうなって、小さい頃からずっと思ってた」
だって、こんな見た目だもの。
フィジャは眉を下げて、苦笑いをする。そうして、少しばかり、昔話を始めるのだった。
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