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第三部
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確か前回は徒歩で行って帰ってきて、二週間近くかかった気がする。十日とか、そのくらい。
ちょっとめんどくさいなあ、というのが顔に出ていたらしい。オカルさんに「大丈夫っす、車を使うんで」と言われた。
車、と言われてパッと思い浮かぶのは、前世でのガソリン車か、シーバイズでの馬車。実は魔法で動かす車はあんまりない。なにせ転移魔法が存在するので。人力車だけれど、車を引く人が魔法で疲労を軽減させたり、力を増幅させたりするのがせいぜいだろうか。
しかし、フィンネルでの車とは、魔物を使役出来る人間が御者を勤め、魔物に荷車を引かせるものらしい。馬車の魔物版、といったところか。
まあ、馬も獣人になってるだろうしな……。馬車、とはいかないだろう。
しかし、魔物って使役できるんだなあ。そのくらい、おとなしい性格の魔物もいるということか。魔物がいて、それを退治する冒険者がいる、という話だけ聞いて皆狂暴な魔物なんだろうな、と思い込んでしまっていたが、まあ、魔物にもいろいろいるらしい。そりゃそうか。
とはいえ、城壁内に魔物を連れ込む、持ち込むのは御法度らしいが。……しろまる、絶対にバレないようにしないとヤバいな、これは。城壁の外に、使役された魔物を住まわせる場所があるそうで。
「車の御者に一人冒険者を雇うのはもう決まってるんすけど、これもう何人か護衛で雇ったほうがいいっすかねえ。正直、この辺りは強い魔物もいないんで、出費を減らせるなら減らしたいとこっすけど」
「では、ヴィルフでも雇いましょう」
さらっとイエリオさんが言う。
まあ、わたしとしては、ヴィルフさんが相手なら魔法を使っても問題ないから、下手に他の冒険者よりはヴィルフさんの方が助かるけど。まあ、車の御者としてやって来る冒険者はいるけれど。
が、しかし。オルカさんはあんまりいい顔をしなかった。
そう言えば、ヴィルフさんは割と差別を受けている対象なんだったっけか、と、初めて冒険者ギルドに訪れて彼を迎えに行ったときのことを思い出していたが――どうやらそれだけじゃないらしい。
「あの男が嫌、っていうのもありますけど、そもそも特級冒険者をたかがこの平原への護衛で雇うような余裕はないっすね。全く持って」
余裕はない、に随分と力がこもっていた。どちからというと、金銭的な問題の方が大きいらしい。
特級、がどのくらい凄いのかは分からないが、家を建てよう、という話になったとき、フィジャが
「特級冒険者だからお金は一杯ある」というようなことを言っていたし、そう言うのなら上から数えたほうが早いんだろう。ポンと家を買えるくらいのたくわえがある人間が、下から数えた方がいいわけがない。
そう考えると、前回タダでついてきてくれたのはなかなかに特別待遇だったんだろう。いやまあ、わたしを護衛するために、というよりはフィジャを救うために、という方が正しいんだろうが。
「でも、見つけたのはヴィルフですから。場所もすぐ分かるでしょう? 大丈夫、私が言いくるめて、身内価格にしてもらいますから!」
……本当に大丈夫なのか? と心配ではあったが、まあ、イエリオさんがそう言うなら大丈夫だろう。わたしやオカルさんより付き合いがあるわけだし。
そうして、あれこれ調査内容を決めていき、五日後に出発することが決定したのだった。
ちょっとめんどくさいなあ、というのが顔に出ていたらしい。オカルさんに「大丈夫っす、車を使うんで」と言われた。
車、と言われてパッと思い浮かぶのは、前世でのガソリン車か、シーバイズでの馬車。実は魔法で動かす車はあんまりない。なにせ転移魔法が存在するので。人力車だけれど、車を引く人が魔法で疲労を軽減させたり、力を増幅させたりするのがせいぜいだろうか。
しかし、フィンネルでの車とは、魔物を使役出来る人間が御者を勤め、魔物に荷車を引かせるものらしい。馬車の魔物版、といったところか。
まあ、馬も獣人になってるだろうしな……。馬車、とはいかないだろう。
しかし、魔物って使役できるんだなあ。そのくらい、おとなしい性格の魔物もいるということか。魔物がいて、それを退治する冒険者がいる、という話だけ聞いて皆狂暴な魔物なんだろうな、と思い込んでしまっていたが、まあ、魔物にもいろいろいるらしい。そりゃそうか。
とはいえ、城壁内に魔物を連れ込む、持ち込むのは御法度らしいが。……しろまる、絶対にバレないようにしないとヤバいな、これは。城壁の外に、使役された魔物を住まわせる場所があるそうで。
「車の御者に一人冒険者を雇うのはもう決まってるんすけど、これもう何人か護衛で雇ったほうがいいっすかねえ。正直、この辺りは強い魔物もいないんで、出費を減らせるなら減らしたいとこっすけど」
「では、ヴィルフでも雇いましょう」
さらっとイエリオさんが言う。
まあ、わたしとしては、ヴィルフさんが相手なら魔法を使っても問題ないから、下手に他の冒険者よりはヴィルフさんの方が助かるけど。まあ、車の御者としてやって来る冒険者はいるけれど。
が、しかし。オルカさんはあんまりいい顔をしなかった。
そう言えば、ヴィルフさんは割と差別を受けている対象なんだったっけか、と、初めて冒険者ギルドに訪れて彼を迎えに行ったときのことを思い出していたが――どうやらそれだけじゃないらしい。
「あの男が嫌、っていうのもありますけど、そもそも特級冒険者をたかがこの平原への護衛で雇うような余裕はないっすね。全く持って」
余裕はない、に随分と力がこもっていた。どちからというと、金銭的な問題の方が大きいらしい。
特級、がどのくらい凄いのかは分からないが、家を建てよう、という話になったとき、フィジャが
「特級冒険者だからお金は一杯ある」というようなことを言っていたし、そう言うのなら上から数えたほうが早いんだろう。ポンと家を買えるくらいのたくわえがある人間が、下から数えた方がいいわけがない。
そう考えると、前回タダでついてきてくれたのはなかなかに特別待遇だったんだろう。いやまあ、わたしを護衛するために、というよりはフィジャを救うために、という方が正しいんだろうが。
「でも、見つけたのはヴィルフですから。場所もすぐ分かるでしょう? 大丈夫、私が言いくるめて、身内価格にしてもらいますから!」
……本当に大丈夫なのか? と心配ではあったが、まあ、イエリオさんがそう言うなら大丈夫だろう。わたしやオカルさんより付き合いがあるわけだし。
そうして、あれこれ調査内容を決めていき、五日後に出発することが決定したのだった。
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