133 / 493
第三部
131
しおりを挟む
その後も、たびたび魔物と遭遇しながらも、無事に屋敷へとたどり着くことが出来た。
流石にあのファンリュル並みにヤバい魔物が出ることはなかったが、ジグターさん曰く、いつも出没する魔物よりはランクの高い魔物ばかりだったらしい。
「癪だけど、俺一人だったら無事にたどり着かなかっただろうね」と言われてしまうと、ヴィルフさんがついてきてくれて本当によかったと思う。
でも、前回二人でここに来るまでは、たいした魔物、見なかったんだけどなあ……。流石に一度も遭遇せず、なんてことはなくて、遭遇率自体はそんなに変わらないと思うが。きっちり数えているわけじゃないから、体感だけど。
魔物を初めて見るわたしでも、あんまり強そうじゃないな、と思う魔物ばかりだった記憶なのだが……まあ、たまたまそういう日に当たったんだろう。
「ほら、イエリオ、調査は明日から!」
「折角目の前に遺跡があるんですよ!? 早く調査を……うう……」
屋敷に着くなり、興奮して車から飛び降りたイエリオさんを、オカルさんが捕まえる。あの速さ、イエリオさんが飛び出すことが分かっていたかのような早さだ。
魔物との遭遇回数はおおむね予想通りだったものの、個々が想定より強い魔物だったので、予定時刻よりも到着するのが遅くなってしまった。もう半分くらい日が沈んでいる。
「早くテントの設営をしないと、日が暮れたらもっと大変になるっすよ」
今日はテントを張り、明日の午前から調査、ということになっている。ヴィルフさんとジグターさんが交代で辺りを見張って警戒、わたしとイエリオさんが屋敷の調査、オカルさんはその補佐、という感じの役割分担で、明日から三日間この屋敷を探索する。
調査は主に屋敷の間取りと何かめぼしい物があるかを調べるそうだ。調べる価値があるか調べる……そんな感じらしい。まあ、イエリオさんたちの仕事は、歴史的な物の保護、というよりは、それらを使って新しい技術に変換できないか、という研究が主のようなので、最低限大事に扱いはするだろうけど、価値がなければ……ということだろう。
もし、なにか発見があって、本格的に調査することになるようなら、専用のチームが組まれて、細かく検分するようで。
わたしとヴィルフさんが訪れたとき、一階は全く探索しなかったし、二階も二階で目的の物を探すのみで、廊下の方は何も見ていない。
あの謎の間取りの理由が分かるのかな、と思うと、わたしもちょっと楽しみである。
屋敷を見上げながらそんなことを考えていると――。
「――ってことでいいっすよね? マレーゼさん」
オカルさんが話しかけているのに気が付かなかった。
わたしもあんまりイエリオさんのこと馬鹿にできないな、と思いながら聞きなおす。
「すみません、聞いてなかったです。なんですか?」
「テントの割り振りなんすけど、イエリオと一緒になっても平気っすよね? って」
……えっ?
流石にあのファンリュル並みにヤバい魔物が出ることはなかったが、ジグターさん曰く、いつも出没する魔物よりはランクの高い魔物ばかりだったらしい。
「癪だけど、俺一人だったら無事にたどり着かなかっただろうね」と言われてしまうと、ヴィルフさんがついてきてくれて本当によかったと思う。
でも、前回二人でここに来るまでは、たいした魔物、見なかったんだけどなあ……。流石に一度も遭遇せず、なんてことはなくて、遭遇率自体はそんなに変わらないと思うが。きっちり数えているわけじゃないから、体感だけど。
魔物を初めて見るわたしでも、あんまり強そうじゃないな、と思う魔物ばかりだった記憶なのだが……まあ、たまたまそういう日に当たったんだろう。
「ほら、イエリオ、調査は明日から!」
「折角目の前に遺跡があるんですよ!? 早く調査を……うう……」
屋敷に着くなり、興奮して車から飛び降りたイエリオさんを、オカルさんが捕まえる。あの速さ、イエリオさんが飛び出すことが分かっていたかのような早さだ。
魔物との遭遇回数はおおむね予想通りだったものの、個々が想定より強い魔物だったので、予定時刻よりも到着するのが遅くなってしまった。もう半分くらい日が沈んでいる。
「早くテントの設営をしないと、日が暮れたらもっと大変になるっすよ」
今日はテントを張り、明日の午前から調査、ということになっている。ヴィルフさんとジグターさんが交代で辺りを見張って警戒、わたしとイエリオさんが屋敷の調査、オカルさんはその補佐、という感じの役割分担で、明日から三日間この屋敷を探索する。
調査は主に屋敷の間取りと何かめぼしい物があるかを調べるそうだ。調べる価値があるか調べる……そんな感じらしい。まあ、イエリオさんたちの仕事は、歴史的な物の保護、というよりは、それらを使って新しい技術に変換できないか、という研究が主のようなので、最低限大事に扱いはするだろうけど、価値がなければ……ということだろう。
もし、なにか発見があって、本格的に調査することになるようなら、専用のチームが組まれて、細かく検分するようで。
わたしとヴィルフさんが訪れたとき、一階は全く探索しなかったし、二階も二階で目的の物を探すのみで、廊下の方は何も見ていない。
あの謎の間取りの理由が分かるのかな、と思うと、わたしもちょっと楽しみである。
屋敷を見上げながらそんなことを考えていると――。
「――ってことでいいっすよね? マレーゼさん」
オカルさんが話しかけているのに気が付かなかった。
わたしもあんまりイエリオさんのこと馬鹿にできないな、と思いながら聞きなおす。
「すみません、聞いてなかったです。なんですか?」
「テントの割り振りなんすけど、イエリオと一緒になっても平気っすよね? って」
……えっ?
23
あなたにおすすめの小説
異世界推し生活のすすめ
八尋
恋愛
現代で生粋のイケメン筋肉オタクだった壬生子がトラ転から目を覚ますと、そこは顔面の美の価値観が逆転した異世界だった…。
この世界では壬生子が理想とする逞しく凛々しい騎士たちが"不細工"と蔑まれて不遇に虐げられていたのだ。
身分違いや顔面への美意識格差と戦いながら推しへの愛を(心の中で)叫ぶ壬生子。
異世界で誰も想像しなかった愛の形を世界に示していく。
完結済み、定期的にアップしていく予定です。
完全に作者の架空世界観なのでご都合主義や趣味が偏ります、ご注意ください。
作者の作品の中ではだいぶコメディ色が強いです。
誤字脱字誤用ありましたらご指摘ください、修正いたします。
なろうにもアップ予定です。
この世界、イケメンが迫害されてるってマジ!?〜アホの子による無自覚救済物語〜
具なっしー
恋愛
※この表紙は前世基準。本編では美醜逆転してます。AIです
転生先は──美醜逆転、男女比20:1の世界!?
肌は真っ白、顔のパーツは小さければ小さいほど美しい!?
その結果、地球基準の超絶イケメンたちは “醜男(キメオ)” と呼ばれ、迫害されていた。
そんな世界に爆誕したのは、脳みそふわふわアホの子・ミーミ。
前世で「喋らなければ可愛い」と言われ続けた彼女に同情した神様は、
「この子は救済が必要だ…!」と世界一の美少女に転生させてしまった。
「ひきわり納豆顔じゃん!これが美しいの??」
己の欲望のために押せ押せ行動するアホの子が、
結果的にイケメン達を救い、世界を変えていく──!
「すきーー♡結婚してください!私が幸せにしますぅ〜♡♡♡」
でも、気づけば彼らが全方向から迫ってくる逆ハーレム状態に……!
アホの子が無自覚に世界を救う、
価値観バグりまくりご都合主義100%ファンタジーラブコメ!
花嫁召喚 〜異世界で始まる一妻多夫の婚活記〜
文月・F・アキオ
恋愛
婚活に行き詰まっていた桜井美琴(23)は、ある日突然異世界へ召喚される。そこは女性が複数の夫を迎える“一妻多夫制”の国。
花嫁として召喚された美琴は、生きるために結婚しなければならなかった。
堅実な兵士、まとめ上手な書記官、温和な医師、おしゃべりな商人、寡黙な狩人、心優しい吟遊詩人、几帳面な官僚――多彩な男性たちとの出会いが、美琴の未来を大きく動かしていく。
帰れない現実と新たな絆の狭間で、彼女が選ぶ道とは?
異世界婚活ファンタジー、開幕。
【完結】身分を隠して恋文相談屋をしていたら、子犬系騎士様が毎日通ってくるんですが?
エス
恋愛
前世で日本の文房具好き書店員だった記憶を持つ伯爵令嬢ミリアンヌは、父との約束で、絶対に身分を明かさないことを条件に、変装してオリジナル文具を扱うお店《ことのは堂》を開店することに。
文具の販売はもちろん、手紙の代筆や添削を通して、ささやかながら誰かの想いを届ける手助けをしていた。
そんなある日、イケメン騎士レイが突然来店し、ミリアンヌにいきなり愛の告白!? 聞けば、以前ミリアンヌが代筆したラブレターに感動し、本当の筆者である彼女を探して、告白しに来たのだとか。
もちろんキッパリ断りましたが、それ以来、彼は毎日ミリアンヌ宛ての恋文を抱えてやって来るようになりまして。
「あなた宛の恋文の、添削お願いします!」
......って言われましても、ねぇ?
レイの一途なアプローチに振り回されつつも、大好きな文房具に囲まれ、店主としての仕事を楽しむ日々。
お客様の相談にのったり、前世の知識を活かして、この世界にはない文房具を開発したり。
気づけば店は、騎士達から、果ては王城の使者までが買いに来る人気店に。お願いだから、身バレだけは勘弁してほしい!!
しかしついに、ミリアンヌの正体を知る者が、店にやって来て......!?
恋文から始まる、秘密だらけの恋とお仕事。果たしてその結末は!?
※ほかサイトで投稿していたものを、少し修正して投稿しています。
甘い匂いの人間は、極上獰猛な獣たちに奪われる 〜居場所を求めた少女の転移譚〜
具なっしー
恋愛
「誰かを、全力で愛してみたい」
居場所のない、17歳の少女・鳴宮 桃(なるみや もも)。
幼い頃に両親を亡くし、叔父の家で家政婦のような日々を送る彼女は、誰にも言えない孤独を抱えていた。そんな桃が、願いをかけた神社の光に包まれ目覚めたのは、獣人たちが支配する異世界。
そこは、男女比50:1という極端な世界。女性は複数の夫に囲われて贅沢を享受するのが常識だった。
しかし、桃は異世界の女性が持つ傲慢さとは無縁で、控えめなまま。
そして彼女の身体から放たれる**"甘いフェロモン"は、野生の獣人たちにとって極上の獲物**でしかない。
盗賊に囚われかけたところを、美形で無口なホワイトタイガー獣人・ベンに救われた桃。孤独だった少女は、その純粋さゆえに、強く、一途で、そして獰猛な獣人たちに囲われていく――。
※表紙はAIです
【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!
桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。
「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。
異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。
初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!
『異世界転生してカフェを開いたら、庭が王宮より人気になってしまいました』
ヤオサカ
恋愛
申し訳ありません、物語の内容を確認しているため、一部非公開にしています
この物語は完結しました。
前世では小さな庭付きカフェを営んでいた主人公。事故により命を落とし、気がつけば異世界の貧しい村に転生していた。
「何もないなら、自分で作ればいいじゃない」
そう言って始めたのは、イングリッシュガーデン風の庭とカフェづくり。花々に囲まれた癒しの空間は次第に評判を呼び、貴族や騎士まで足を運ぶように。
そんな中、無愛想な青年が何度も訪れるようになり――?
面倒くさがりやの異世界人〜微妙な美醜逆転世界で〜
波間柏
恋愛
仕事帰り電車で寝ていた雅は、目が覚めたら満天の夜空が広がる場所にいた。目の前には、やたら美形な青年が騒いでいる。どうしたもんか。面倒くさいが口癖の主人公の異世界生活。
短編ではありませんが短めです。
別視点あり
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる