転生からの魔法失敗で、1000年後に転移かつ獣人逆ハーレムは盛りすぎだと思います!

ゴルゴンゾーラ三国

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第三部

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 どれ?、とイナリさんが窓の外を覗く。
 病室となっているこの部屋は三階にあるため、結構遠くまで見ることができる。そこそこ遠くにいるはずなのに、その体格の良さからか、近くにいるようにも感じられ、距離感が狂う。

「――ああ、フェルルスか」

 イナリさんの声に焦りはない。この辺では普通に生息している魔物なのか、たいして強くない魔物なのか。そこまで強くない魔物にしたって、一般人であるイエリオにとっては十分脅威だったと思うのだが。

「確かに、肉食だから遭遇したら襲われると思うけど……。一応下級層に位置づけられる魔物だから、冒険者が適当に倒すでしょ」

 確かに図体が大きいだけで、動きは鈍い魔物だったけど、弱い部類になるんだ、あれ……。
 運がなかったね、と言われてしまう。話を聞くに、イナリさんはここに来るまでにほとんど魔物とは遭遇せず、ちらっとスパネットを見かけるくらいだったそうだ。
 わたしたちは死にかけたんだがこの差はなんなんだ……。

 イエリオがこうして無事に治療を受けられている以上、『運がよかった』と言いたいところだが、なんとも言えない気持ちになる。本当に運がよかったのなら、そもそも魔物と鉢合わせることもなかったのでは……?

「いや、でもあれ別個体ですかね? わたし、さっき倒したと思ったんですけど……」

 イエリオさんの方にばかり気を取られて息の根を止めたかまではしっかり確認していなかった。しかし、あれだけの電流を流したのだ、生きているとは思えない。
 そう、思ったのだが。

「ちゃんと首、落とした? 普通に倒しただけじゃ生き返るよ、フェルルスは」

「生き返るよ!?」

 首を落とす、なんて物騒な……と思ったのも一瞬。生き返るってどういうことだ。理解出来る範疇をあっさり超えた言葉に、思考が追い付かない。生き物は殺されたら死ぬものでは……?

「どうしてかは僕に聞かれても困るけど、フェルルスは首を切らないと生き返る個体がいるんだよ。切り方にコツがいる。まあ、普通にそのまま死ぬ奴もいるけど」

 ゾンビか? どういう原理で生き返るんだ。魔法でも使ってるのか? あ、もしかして本当に魔法?

「そう言えば、魔物って、魔法を使ったりしないんですか?」

「は?」

 かなり馬鹿にされたようなトーンで返されてしまった。結構、精神的にダメージを食らう。
 でもそうか、魔物が当たり前に魔法を使ったら、おとぎ話の存在にならないよな。
 魔物の魔、は魔法の魔、ではなく、異形の生物とか、襲ってくる怪物、という意味での魔、なんだろう。

「でも、首を落とすと死ぬなら、魔力路の神経が無事な限り、蘇生の魔法でも使って生き返っているのでは……」

 魔法を使うわたしとしては、一番にその可能性にたどり着く。

「ほら、イエリオとフィジャの後頭部、押したじゃないですか。出会ってすぐの話です」

 イナリさんはやらなかったけど、イエリオとフィジャにはやったやつだ。切り方にコツがいる、と言っていたし、後頭部を巻き込むようにして切り落とすのなら、丁度、魔力路の神経を破壊するように切ることになるだろう。まあ、想像の域をでないわけだが。
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