転生からの魔法失敗で、1000年後に転移かつ獣人逆ハーレムは盛りすぎだと思います!

ゴルゴンゾーラ三国

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第三部

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 会話も一段落して、そろそろ本当に休むだろうか、と思っていたのだが、一向にイエリオはわたしの手を離さなかった。
 別に触られるのは嫌じゃないし、振りほどくつもりもないのだが、こう、会話もなしに手を繋ぎ、目をそらせないでいるのは、なかなかに気まずい。目線くらいは離してもいいだろうか。

 でも、目をそらしたら、もっと気まずくなるような気がして、どうにも目をそらせない。目をそらした後はどうすればいい?
 そう思うと、気まずいと思っても、イエリオから目を離すことができなくて。

「あの、イエリオ……えっと、まだ何か?」

 たまらず、わたしは彼に話の続きを催促した。わたしの手を離したくないとか、手を離すタイミングを失ってしまったとか、そういう様子ではなく、単純にまだ話の続きがあるような気がして。
 わたしがぎこちなく笑うと、イエリオがようやく口を開いた。

「――子供」

「え」

 唐突な言葉に、わたしは思わず声を漏らす。

「貴女は、私に子供が欲しいか、と聞いたでしょう?」

 ……そう言えば、聞いた。イエリオの家に来たばかりのときに。ちょうどそんな感じの流れになる会話をしていたし、わたしとの、どんな関係を求めるのか、という確認を込めて。
 その時は確か、一番に、「フィジャ『は』欲しがりそうですね」とどこか他人事のように言われたはず。

 ――でも、熱っぽくわたしを見つめる今のイエリオの口からは、少なくとも、そんな他人事のような言葉は出てこないように思えた。

「私も――いえ、私が、欲しいです。貴女との子供が。人と獣人の子供への興味、という話ではありません。貴女がもし本当に獣人だったとしても――貴女との子が欲しい」

 是非ともご検討ください、とにっこり笑って言うイエリオに、わたしは何も返せなかった。
 何を言い返せると言うのだ。

 元の獣としての血なのか、現代の、いや、フィンネルの文化なのか、求愛の仕方が、ストレートに子作りに直結する獣人たち。
 生々しいというか、なんというか。

 前世でも、シーバイズでも、妊娠や出産どころか結婚自体割と他人事なところがあったわたしにとって、なかなかに攻撃力のある口説き文句である。

 これがここの当たり前なのか? 敵わな過ぎる。

 さっきまで受けていたプロポーズに対して返した、しっかりとした受け答えとは到底かけ離れた、情けない返事しか出来なかった。
 「はい」と一言返すだけでも、緊張と照れに舌がもつれて、「ふぁい」みたいな、もごもごとしたものになる。

 流石にもう限界で、わたしはイエリオと繋いでいない方の手で顔を隠した。でも、片手では、きっと真っ赤になった頬までは、隠しきれていないだろう。

 ああ、顔が熱い。
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