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第四部
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シャルベンからもやもやと帰ってきた数日後。わたしはルーネちゃんと会っていた。
といっても、シャルベンのギルド長からなにも聞けないのならルーネちゃんに聞こう! という話ではない。単純に散歩をしていたら休日で図書館帰りのルーネちゃんとばったり会って、折角だから一緒にお昼でも、という話になっただけなのである。
ルーネちゃんが選んだお店は前回とは違うけれど、前回の様に可愛らしい店だった。前回は普通にカフェだったけれど、今回はイートインコーナーのあるパン屋さん。
とはいえ、店内の飾りつけはとてもファンシーで、パンもほとんどキャラクター性のある見た目をしているパンなので、これはルーネちゃんの両隣が基本の、あの二人にはハードルが確かに高そうで。
見た目にすべて神経を注いでいるのかと思えば、味も普通に美味しいパンを食べながらわたしたちは何でもない世間話をする。
パンと店内の感想から始まり、この国、この街には慣れたか、とか、今度はどこの店にいつ行こう、とか。
そんなたわいもない話を続けていて、話題が途切れたとき、ふと、ルーネちゃんが言った。
「そう言えば、その……ええと、多分、もう聞いたとは思う……聞いたよね? その、多分聞いたとは思うんだけど」
「どうしたの?」
歯切れが悪い、というか、考えながら、考えていることごと喋るのはいつものルーネちゃんだったが、それにしたって言い淀みが過ぎる。
なんだろう、と思っていると、ルーネちゃんがとんでもないことを言ってきた。
「冒険者ウィルフ――じゃないや、ええと、ウィルフ、さん、冒険者、辞めちゃうんですってね」
「へー、辞める……辞めちゃうんですってね!?」
わたしは思わずルーネちゃんの言葉を繰り返していた。
辞める? ウィルフさんが? 冒険者を?
――そんな話、全然聞いてない!
わたしがあまりにも驚くので、ルーネちゃんもまた、驚いていた。
ルーネちゃんはギルド長だから、一番にその情報が入ってもおかしくはない……いやそうか? わたしたちに先に話してくれたって……。
「あの、まだ、すぐじゃないって言ってました。うん、ルーネ、じゃない、私、そう聞きました。ただ、あの、辞めるつもりがあるって、ギルド長である私に、先に言っただけかも……」
ルーネちゃんはそう言ってくれるが、どうして辞めるのか、なんにも言ってくれないのはさみしい。
別に引き留めるつもりだったとか、逆に応援するつもりだったとか、すぐにどっちだった、というつもりはないけど、こんなことを本人の口より先に、別の人から聞かされるのはさみしすぎる。
「……あの、多分、今日はウィルフさん、街にいると思う、思います、けど……」
「――……探してくる」
丁度パンを食べ終え、だらだらと話をしながらお茶を飲んでいただけだったので、わたしはルーネちゃんに軽く謝って話を切り上げ、ウィルフさんを探すべくパン屋を出るのだった。
といっても、シャルベンのギルド長からなにも聞けないのならルーネちゃんに聞こう! という話ではない。単純に散歩をしていたら休日で図書館帰りのルーネちゃんとばったり会って、折角だから一緒にお昼でも、という話になっただけなのである。
ルーネちゃんが選んだお店は前回とは違うけれど、前回の様に可愛らしい店だった。前回は普通にカフェだったけれど、今回はイートインコーナーのあるパン屋さん。
とはいえ、店内の飾りつけはとてもファンシーで、パンもほとんどキャラクター性のある見た目をしているパンなので、これはルーネちゃんの両隣が基本の、あの二人にはハードルが確かに高そうで。
見た目にすべて神経を注いでいるのかと思えば、味も普通に美味しいパンを食べながらわたしたちは何でもない世間話をする。
パンと店内の感想から始まり、この国、この街には慣れたか、とか、今度はどこの店にいつ行こう、とか。
そんなたわいもない話を続けていて、話題が途切れたとき、ふと、ルーネちゃんが言った。
「そう言えば、その……ええと、多分、もう聞いたとは思う……聞いたよね? その、多分聞いたとは思うんだけど」
「どうしたの?」
歯切れが悪い、というか、考えながら、考えていることごと喋るのはいつものルーネちゃんだったが、それにしたって言い淀みが過ぎる。
なんだろう、と思っていると、ルーネちゃんがとんでもないことを言ってきた。
「冒険者ウィルフ――じゃないや、ええと、ウィルフ、さん、冒険者、辞めちゃうんですってね」
「へー、辞める……辞めちゃうんですってね!?」
わたしは思わずルーネちゃんの言葉を繰り返していた。
辞める? ウィルフさんが? 冒険者を?
――そんな話、全然聞いてない!
わたしがあまりにも驚くので、ルーネちゃんもまた、驚いていた。
ルーネちゃんはギルド長だから、一番にその情報が入ってもおかしくはない……いやそうか? わたしたちに先に話してくれたって……。
「あの、まだ、すぐじゃないって言ってました。うん、ルーネ、じゃない、私、そう聞きました。ただ、あの、辞めるつもりがあるって、ギルド長である私に、先に言っただけかも……」
ルーネちゃんはそう言ってくれるが、どうして辞めるのか、なんにも言ってくれないのはさみしい。
別に引き留めるつもりだったとか、逆に応援するつもりだったとか、すぐにどっちだった、というつもりはないけど、こんなことを本人の口より先に、別の人から聞かされるのはさみしすぎる。
「……あの、多分、今日はウィルフさん、街にいると思う、思います、けど……」
「――……探してくる」
丁度パンを食べ終え、だらだらと話をしながらお茶を飲んでいただけだったので、わたしはルーネちゃんに軽く謝って話を切り上げ、ウィルフさんを探すべくパン屋を出るのだった。
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