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第五部
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まあ、五年後に開催される次の祝集祭のときはそのときに考えればいいのである。服だけは忘れないようにして。
今は今回の祝集祭を楽しむことにしよう。
今日はお小遣いを持ってきているので、大抵のものは買えるぞ。ちなみにこのお金は、ウィルフと一緒に東の森へ調査に行った報酬として冒険者ギルドから貰ったお金や、ちょいちょいイエリオの研究を手伝って貰ったお金である。
花屋が並ぶゾーンを過ぎると、食べ物屋の出店がずらりと並ぶ。こっちの方には花屋があまりない。まあ、食べ物の匂いと混ざると困るもんね。
何を食べようかな、と悩んでいると、屋台を見るのに夢中になってしまって、人とぶつかってしまう。
「わっ、ごめんなさい」
軽くぶつかったくらいなので、痛くもない。それより、食べ物の屋台に気を取られて周りが見えなくなる、という、いかにも子供っぽい行動に恥ずかしさがこみあげる。
「おっ、可愛い。なあ、嬢ちゃん、よかったら一緒に周らないか?」
ぶつかってきた相手は男性だった。犬の獣人だろうか。耳がピン、と立っている。
それにしても、ナンパとか。ウィルフが見えてないのか?
「連れがいるので結構です」
そう言ってわたしはウィルフの腕にしがみついた。
男はわたしがウィルフの腕にひっついたのを見て、鼻で笑う。
「え、マジ?」
なんだこいつ。
「花もないし、てっきり一人さみしく祭りに浮かれてるだけかと思ったわ」
へらへらと笑う男に、つい手が出てしまいそうになる。
それを察知したのか、それとも面倒だと判断したのか、ウィルフがわたしを軽く引っ張って「行くぞ」と声をかけてくる。
そうだった、こんなのに構っている場合じゃない。わたしは以後、男の言葉を無視してウィルフの隣を歩く。無視された上に距離が離れてしまってはどうしようもないと判断したのか、ナンパ男はいつの間にかいなくなっていた。
「お前、あんなの無視しろよ。俺と一緒に居るのに、いちいち気にしてたらキリがないぞ」
「……そうは言っても。大事な『家族』が馬鹿にされたら腹立つでしょ」
「……そうかよ」
ぷい、とそっぽを向かれてしまった。でも、しっぽはゆらゆらと揺れているので、まあ、悪い気分じゃないんだろう。
「……」
わたしは、揺れているその尾をじっと見て、一つのことを思いつく。
わたしがいつも髪につけている、ヘアコイル。花の装飾がついているやつだ。生花ではないけれど、まあ、ないよりはマシだろう。
後ろにまとめた髪につけているヘアコイルのうち、いくつかを外してウィルフのしっぽにつける。
「……なにしてんだよ」
わたしがいじっているのに気が付いたウィルフが、ひょい、と動かす。二個付けただけで終わってしまった。
「生花じゃないけど、わたしから花を送ろうと思って。もうここ花屋がないから、取り急ぎ、わたしの髪飾りでごめんね」
ウィルフの毛並みは銀色だから、原色カラーの石が付いた装飾の髪飾りはよく映える。
「かわいいよ」
そう言うと、ウィルフは、「男に、それも俺みたいな奴にいうセリフか?」と呆れたように溜息を吐いた。
今は今回の祝集祭を楽しむことにしよう。
今日はお小遣いを持ってきているので、大抵のものは買えるぞ。ちなみにこのお金は、ウィルフと一緒に東の森へ調査に行った報酬として冒険者ギルドから貰ったお金や、ちょいちょいイエリオの研究を手伝って貰ったお金である。
花屋が並ぶゾーンを過ぎると、食べ物屋の出店がずらりと並ぶ。こっちの方には花屋があまりない。まあ、食べ物の匂いと混ざると困るもんね。
何を食べようかな、と悩んでいると、屋台を見るのに夢中になってしまって、人とぶつかってしまう。
「わっ、ごめんなさい」
軽くぶつかったくらいなので、痛くもない。それより、食べ物の屋台に気を取られて周りが見えなくなる、という、いかにも子供っぽい行動に恥ずかしさがこみあげる。
「おっ、可愛い。なあ、嬢ちゃん、よかったら一緒に周らないか?」
ぶつかってきた相手は男性だった。犬の獣人だろうか。耳がピン、と立っている。
それにしても、ナンパとか。ウィルフが見えてないのか?
「連れがいるので結構です」
そう言ってわたしはウィルフの腕にしがみついた。
男はわたしがウィルフの腕にひっついたのを見て、鼻で笑う。
「え、マジ?」
なんだこいつ。
「花もないし、てっきり一人さみしく祭りに浮かれてるだけかと思ったわ」
へらへらと笑う男に、つい手が出てしまいそうになる。
それを察知したのか、それとも面倒だと判断したのか、ウィルフがわたしを軽く引っ張って「行くぞ」と声をかけてくる。
そうだった、こんなのに構っている場合じゃない。わたしは以後、男の言葉を無視してウィルフの隣を歩く。無視された上に距離が離れてしまってはどうしようもないと判断したのか、ナンパ男はいつの間にかいなくなっていた。
「お前、あんなの無視しろよ。俺と一緒に居るのに、いちいち気にしてたらキリがないぞ」
「……そうは言っても。大事な『家族』が馬鹿にされたら腹立つでしょ」
「……そうかよ」
ぷい、とそっぽを向かれてしまった。でも、しっぽはゆらゆらと揺れているので、まあ、悪い気分じゃないんだろう。
「……」
わたしは、揺れているその尾をじっと見て、一つのことを思いつく。
わたしがいつも髪につけている、ヘアコイル。花の装飾がついているやつだ。生花ではないけれど、まあ、ないよりはマシだろう。
後ろにまとめた髪につけているヘアコイルのうち、いくつかを外してウィルフのしっぽにつける。
「……なにしてんだよ」
わたしがいじっているのに気が付いたウィルフが、ひょい、と動かす。二個付けただけで終わってしまった。
「生花じゃないけど、わたしから花を送ろうと思って。もうここ花屋がないから、取り急ぎ、わたしの髪飾りでごめんね」
ウィルフの毛並みは銀色だから、原色カラーの石が付いた装飾の髪飾りはよく映える。
「かわいいよ」
そう言うと、ウィルフは、「男に、それも俺みたいな奴にいうセリフか?」と呆れたように溜息を吐いた。
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