転生からの魔法失敗で、1000年後に転移かつ獣人逆ハーレムは盛りすぎだと思います!

ゴルゴンゾーラ三国

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第六部

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「逆に、わたしが聞きたいくらいだよ。こんなに待たせて、しかも本当は獣人じゃない、わたしなんかで――」

「――ッ、そんなの――!」

「う、おわぁ!」

 わたしの言葉にウィルフが勢いよく振返って、バランスを崩したわたしは思い切りソファから落っこちた。元々身を乗り出していて、少し不安定だったので、いきなり力を加えられるとこうなる。手を離せばいいだけなのに、そう判断する前に落ちてしまった。
 幸いにも、上手く落ちれたようで、顔面から床に叩きつけられるわけでも、下手に手をついてくじくこともなかった。

 ウィルフは、首根っこを掴んで、わたしをソファに戻す。ちょっと首がしまって苦しい。

「……悪い」

 消え入るような小さい声で、ウィルフが言った。

「怪我はないから大丈夫だよ」

 言いながら、わたしは手をはたく。これと言って目立つ汚れがついたわけじゃないけど、土足文化の家なので、なんとなく気になる。

「――……マレーゼ」

「なに、――ッ」

 ウィルフがわたしの名前を呼ぶなんて珍しい、と顔を上げると、鼻に、柔らかい感触が。――ウィルフの鼻先だ。
 ウィルフが、わたしの鼻先に、彼の鼻先をくっつけたのだ。少し、不思議な感覚である。

 わたしがきょとん、としていると、ウィルフが、目線をそらせた。

 ウィルフの顔は、人間よりも狼に近いので、細かい表情は察するのが難しいところがあるが、なんだか違う、と言いたげな様子だった。

「ど、どうしたの?」

「大切にしたい奴に、するんだろ」

 大切にしたい奴。大切に――。

 わたしは鼻先を押さえながら、ウィルフとご飯を食べに行って、盛大に酔っ払ってやらかしたときのことを思い出していた。

 キス、したかったのか、ウィルフは。わたしと。

 ようやく理解した瞬間、ぶわ、と体が熱くなるのが分かる。
 あんなことも覚えていてくれたのか、という気持ちと、正直黒歴史に近いから忘れてくれ恥ずかしいという気持ちが、わたしの中で争う。でも、少しだけ、嬉しい、という感情の方が、勝っているかも。

 あのときは、酔っ払ったとき特有の謎思考で、あんな風になってしまったけれど、今は、自分からしたいと、思う。

「――!」

 わたしは勇気を出して、ちゅ、とウィルフに口づけた。
 凄まじく心臓が早く動いていて、あのときとは別の理由でちょっと吐きそうである。

 両手で顔を押さえ、ぐでん、と脱力すると、ずるずると落ち、また床へと着した。でも、起き上がる体力がない。キスに全部の体力を、根こそぎ持っていかれたようだ。
 酔っ払いのときも――ウィルフに、見方であると誓うようにしたときも、よく出来たものである。そして何もなかったように気持ちを切り替えられたものである。非常時って凄い。今じゃ絶対考えられない。

 舌を入れるキスは、本当に好きになってから、なんて酔っ払ったわたしは言ったけど。
 そんなの、本当に好きになったら、緊張で余計に出来ないじゃないか。
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