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第六部
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なんだか今日は少し肌寒いなあ、くらいにしか思っていなかったのだが、体温計を借りてびっくりした。三十八度近く熱がある。まさかこんなに高熱だったとは。
もしかしたら、体調不良で寝つきが悪くなって、こんな早朝に目が覚めたのかもしれない。
体温を計っている間、指先を手当されていたのだが、体温計に表示された温度を見られて、イナリにさっさと部屋に戻れと、連れ戻されてしまった。
「ちゃんと寝てて」
わたしがベッドにおとなしく寝るまでじっとこちらを見てくるイナリ。そこまで監視されては、おとなしく寝ているしかない。
料理しているときには全然気が付かなかったのに、こうして横になると、自分が倦怠感にやられていたことに気が付く。
頭痛や吐き気、せきにくしゃみと、風邪らしい症状はあまりない。だから余計に熱っぽさに気が付くのが遅れたのかも。
ただの疲労による熱、なのかな……。
最近、別にこれと言って疲れるようなことは……まあ、フィジャの店を手伝うことで、急に働きだしたことへの疲労はあるけれど、熱を出すほどじゃないと思っていたのだが。
自分の体は自分で思っていた程強くなかったらしい。
「――……なんか、ごめん」
わたしは氷嚢を用意してくれたイナリに、声をかける。
「今から寝るところだったんでしょ」
わたしがこんなことになっていなければ、もっと寝られたはずなのに。
そう思って謝るものの、イナリに「そういうこと言わない方がいいよ」と、氷嚢を額に載せられる。……冷たくて気持ちい。本当に熱があるんだな、わたし。
「僕が寝込んでたら、君だって看病してくれるでしょ」
「そりゃあ、勿論」
「フィジャとか、イエリオでもするでしょ。ウィルフが体調崩すところはあまり想像できないけど」
わたしはその言葉にも肯定の言葉を返す。
「全然、大変じゃない」
大変、というのなら、心配で、気持ちの面の方が大変そうだ。
「みんなだって、同じことするでしょ。今日はたまたま僕が見つけただけ。……悪いと思うなら、今日一日ちゃんと寝て、早く治して」
「……うん、分かった」
……イナリに心配をかけないように、早く治さなきゃ。それが今、わたしに出来ることなのだ。
「……イナリも、早く休んでね」
「分かってる」
そう言ったイナリは、優しくわたしの頬を撫でると、部屋を出て行った。
――撫でられた頬が熱い。多分、これは、熱のせいだけじゃない。
ふわふわとした心地で、ちゃんと治さなきゃ話も出来ないな、と思いながら、わたしは目を閉じた。
もしかしたら、体調不良で寝つきが悪くなって、こんな早朝に目が覚めたのかもしれない。
体温を計っている間、指先を手当されていたのだが、体温計に表示された温度を見られて、イナリにさっさと部屋に戻れと、連れ戻されてしまった。
「ちゃんと寝てて」
わたしがベッドにおとなしく寝るまでじっとこちらを見てくるイナリ。そこまで監視されては、おとなしく寝ているしかない。
料理しているときには全然気が付かなかったのに、こうして横になると、自分が倦怠感にやられていたことに気が付く。
頭痛や吐き気、せきにくしゃみと、風邪らしい症状はあまりない。だから余計に熱っぽさに気が付くのが遅れたのかも。
ただの疲労による熱、なのかな……。
最近、別にこれと言って疲れるようなことは……まあ、フィジャの店を手伝うことで、急に働きだしたことへの疲労はあるけれど、熱を出すほどじゃないと思っていたのだが。
自分の体は自分で思っていた程強くなかったらしい。
「――……なんか、ごめん」
わたしは氷嚢を用意してくれたイナリに、声をかける。
「今から寝るところだったんでしょ」
わたしがこんなことになっていなければ、もっと寝られたはずなのに。
そう思って謝るものの、イナリに「そういうこと言わない方がいいよ」と、氷嚢を額に載せられる。……冷たくて気持ちい。本当に熱があるんだな、わたし。
「僕が寝込んでたら、君だって看病してくれるでしょ」
「そりゃあ、勿論」
「フィジャとか、イエリオでもするでしょ。ウィルフが体調崩すところはあまり想像できないけど」
わたしはその言葉にも肯定の言葉を返す。
「全然、大変じゃない」
大変、というのなら、心配で、気持ちの面の方が大変そうだ。
「みんなだって、同じことするでしょ。今日はたまたま僕が見つけただけ。……悪いと思うなら、今日一日ちゃんと寝て、早く治して」
「……うん、分かった」
……イナリに心配をかけないように、早く治さなきゃ。それが今、わたしに出来ることなのだ。
「……イナリも、早く休んでね」
「分かってる」
そう言ったイナリは、優しくわたしの頬を撫でると、部屋を出て行った。
――撫でられた頬が熱い。多分、これは、熱のせいだけじゃない。
ふわふわとした心地で、ちゃんと治さなきゃ話も出来ないな、と思いながら、わたしは目を閉じた。
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