転生からの魔法失敗で、1000年後に転移かつ獣人逆ハーレムは盛りすぎだと思います!

ゴルゴンゾーラ三国

文字の大きさ
425 / 493
第六部

419

しおりを挟む
 一瞬、ぽかんとした様子のウィルフの先輩。どうやら本当に嫁だとは思わなかったらしい。

「お前、本当に既婚者だったんだな。あ、いや、変な意味じゃなくて、ほら、お前まだ若いから。既婚者だとか言っても、婚約状態とかなのかとばかり」

 この国――というか、獣人自体、成人と言う概念が曖昧な様子だったけど、それでもウィルフはまだ若い部類になるらしい。

「結構いるんだよな。相手はいるんだけど、家が建てられなくて婚約状態なままの奴」

 ああ成程、とわたしはようやく納得する。この国では婚姻届けとか、そういう明確なものがないかわりに、家と首輪が必要なようだし。確かにウィルフの歳で家を建てるって、かなり凄いことだ。たとえ他に夫がいて、一人で資金を貯めたわけじゃなくても。
 しかも、ローンとか組まないで一括だもんな……。特級冒険者の財力、凄い。

 しかし、既婚者、か。もしかして、ウィルフ、職場ではなにか、そういう話をしているんだろうか。それとも、必要書類に書いただけ、とか?
 ウィルフは行動に全て出る代わりに、びっくりするくらい何も言わない。何か言っているならちょっと気になるな、と思う。

 わたしがそんなことを考えているのが伝わったのか、ウィルフの先輩はにやっと、いたずらっ子っぽい笑みを浮かべる。

「こいつ、たまに嫁の話をするんだぜ」

「へえ!」

 わたし以上にフィジャが食いついた。フィジャも、ウィルフの先輩と同じような笑みを浮かべている。なんだかんだ、ウィルフはからかいがいのある末っ子ってところなんだろう。

「ちょっと、やめてください」

 ウィルフが嫌そうな顔で止めに入る。わたしも気になるので、「嫌がってるよ」と軽く止めるが本気で止めはしない。悪口とか言われてないといいんだけど――まあ、ウィルフの先輩の表情を見るに、その確立は低そうだ。

「こいつ――」

「おい、ウィルフ、ベイカー、昼休憩行くなら早く行かないと、時間なくなるぞ」

 ウィルフの先輩が話そうとした瞬間、また別の誰かが、こちらに声をかけてくる。
 残念、話を聞きたかったけれど、流石にウィルフの昼休憩を潰してまで聞きたいわけじゃない。

「フィジャ、そろそろ帰ろうか。あんまり長居して邪魔しても悪いし」

「ええー。まあ、仕方ないか。じゃあね、ウィルフ。無理して食べ切らなくてもいいから」

 少し残念そうな様子を見せつつも、フィジャはおとなしく引き下がった。

「無理して食わなくていいならこんなに持ってくるなよ」

「いや、選別してそれなんだよ。夕ご飯はこれの残りだよぉ」

 フィジャの言葉を聞いて、ウィルフは、呆れたように「どれだけ作ったんだ……」と言った。作るの楽しくなっちゃったんだからしょうがない……。作りすぎた自覚はある。

「お、じゃあ、俺が――」

「いえ、自分の分なので」

 ちょっと食ってやるか、と言わんばかりの声音の、ウィルフの先輩に、ウィルフはサッと紙袋を守る様に彼から離した。
 嬉しくなって、ウィルフに笑いかけると、思い切り睨まれてしまった。
 わあ、こわい。
しおりを挟む
感想 27

あなたにおすすめの小説

異世界推し生活のすすめ

八尋
恋愛
 現代で生粋のイケメン筋肉オタクだった壬生子がトラ転から目を覚ますと、そこは顔面の美の価値観が逆転した異世界だった…。  この世界では壬生子が理想とする逞しく凛々しい騎士たちが"不細工"と蔑まれて不遇に虐げられていたのだ。  身分違いや顔面への美意識格差と戦いながら推しへの愛を(心の中で)叫ぶ壬生子。  異世界で誰も想像しなかった愛の形を世界に示していく。​​​​​​​​​​​​​​​​ 完結済み、定期的にアップしていく予定です。 完全に作者の架空世界観なのでご都合主義や趣味が偏ります、ご注意ください。 作者の作品の中ではだいぶコメディ色が強いです。 誤字脱字誤用ありましたらご指摘ください、修正いたします。 なろうにもアップ予定です。

眺めるだけならよいでしょうか?〜美醜逆転世界に飛ばされた私〜

波間柏
恋愛
美醜逆転の世界に飛ばされた。普通ならウハウハである。だけど。 ✻読んで下さり、ありがとうございました。✻

ちょっと不運な私を助けてくれた騎士様が溺愛してきます

五珠 izumi
恋愛
城の下働きとして働いていた私。 ある日、開かれた姫様達のお見合いパーティー会場に何故か魔獣が現れて、運悪く通りかかった私は切られてしまった。 ああ、死んだな、そう思った私の目に見えるのは、私を助けようと手を伸ばす銀髪の美少年だった。 竜獣人の美少年に溺愛されるちょっと不運な女の子のお話。 *魔獣、獣人、魔法など、何でもありの世界です。 *お気に入り登録、しおり等、ありがとうございます。 *本編は完結しています。  番外編は不定期になります。  次話を投稿する迄、完結設定にさせていただきます。

【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!

桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。 「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。 異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。 初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!

【完結】身分を隠して恋文相談屋をしていたら、子犬系騎士様が毎日通ってくるんですが?

エス
恋愛
前世で日本の文房具好き書店員だった記憶を持つ伯爵令嬢ミリアンヌは、父との約束で、絶対に身分を明かさないことを条件に、変装してオリジナル文具を扱うお店《ことのは堂》を開店することに。  文具の販売はもちろん、手紙の代筆や添削を通して、ささやかながら誰かの想いを届ける手助けをしていた。  そんなある日、イケメン騎士レイが突然来店し、ミリアンヌにいきなり愛の告白!? 聞けば、以前ミリアンヌが代筆したラブレターに感動し、本当の筆者である彼女を探して、告白しに来たのだとか。  もちろんキッパリ断りましたが、それ以来、彼は毎日ミリアンヌ宛ての恋文を抱えてやって来るようになりまして。 「あなた宛の恋文の、添削お願いします!」  ......って言われましても、ねぇ?  レイの一途なアプローチに振り回されつつも、大好きな文房具に囲まれ、店主としての仕事を楽しむ日々。  お客様の相談にのったり、前世の知識を活かして、この世界にはない文房具を開発したり。  気づけば店は、騎士達から、果ては王城の使者までが買いに来る人気店に。お願いだから、身バレだけは勘弁してほしい!!  しかしついに、ミリアンヌの正体を知る者が、店にやって来て......!?  恋文から始まる、秘密だらけの恋とお仕事。果たしてその結末は!? ※ほかサイトで投稿していたものを、少し修正して投稿しています。

花嫁召喚 〜異世界で始まる一妻多夫の婚活記〜

文月・F・アキオ
恋愛
婚活に行き詰まっていた桜井美琴(23)は、ある日突然異世界へ召喚される。そこは女性が複数の夫を迎える“一妻多夫制”の国。 花嫁として召喚された美琴は、生きるために結婚しなければならなかった。 堅実な兵士、まとめ上手な書記官、温和な医師、おしゃべりな商人、寡黙な狩人、心優しい吟遊詩人、几帳面な官僚――多彩な男性たちとの出会いが、美琴の未来を大きく動かしていく。 帰れない現実と新たな絆の狭間で、彼女が選ぶ道とは? 異世界婚活ファンタジー、開幕。

『えっ! 私が貴方の番?! そんなの無理ですっ! 私、動物アレルギーなんですっ!』

伊織愁
恋愛
 人族であるリジィーは、幼い頃、狼獣人の国であるシェラン国へ両親に連れられて来た。 家が没落したため、リジィーを育てられなくなった両親は、泣いてすがるリジィーを修道院へ預ける事にしたのだ。  実は動物アレルギーのあるリジィ―には、シェラン国で暮らす事が日に日に辛くなって来ていた。 子供だった頃とは違い、成人すれば自由に国を出ていける。 15になり成人を迎える年、リジィーはシェラン国から出ていく事を決心する。 しかし、シェラン国から出ていく矢先に事件に巻き込まれ、シェラン国の近衛騎士に助けられる。  二人が出会った瞬間、頭上から光の粒が降り注ぎ、番の刻印が刻まれた。 狼獣人の近衛騎士に『私の番っ』と熱い眼差しを受け、リジィ―は内心で叫んだ。 『私、動物アレルギーなんですけどっ! そんなのありーっ?!』

『異世界転生してカフェを開いたら、庭が王宮より人気になってしまいました』

ヤオサカ
恋愛
申し訳ありません、物語の内容を確認しているため、一部非公開にしています この物語は完結しました。 前世では小さな庭付きカフェを営んでいた主人公。事故により命を落とし、気がつけば異世界の貧しい村に転生していた。 「何もないなら、自分で作ればいいじゃない」 そう言って始めたのは、イングリッシュガーデン風の庭とカフェづくり。花々に囲まれた癒しの空間は次第に評判を呼び、貴族や騎士まで足を運ぶように。 そんな中、無愛想な青年が何度も訪れるようになり――?

処理中です...