転生からの魔法失敗で、1000年後に転移かつ獣人逆ハーレムは盛りすぎだと思います!

ゴルゴンゾーラ三国

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第六部

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 その悲痛な叫びに、わたしは驚いて思わず足を止めてしまった。

「い、今の……何?」

「マレーゼさんには関係ないもんっすよ」

 バッサリと言い捨てられてしまった。気になる、けど、でも、今はイエリオの安否が一番だ。流石にあの悲鳴がイエリオのものだとは思っていない。明らかに、なにか、動物のような声だった。……この世界に、動物はいないけど。

 すたすたと先に行ってしまうオカルさんの後を、わたしは小走りで慌てて追った。……少し前まで、わたしはオカルさんのことを明るくて気さくな、イエリオの同僚だと思っていたけれど。今のオカルさんは、そんな印象を抱かせた雰囲気が、欠片もない。

「さて、ここっす」

 長い廊下の行き止まり。そこに、扉は何もない。
 ふざけないで、と言おうとすると、オカルさんがしゃがみこんだ。彼が床に手をやると、淡く一部が光る。……魔法陣だ。

 その淡く光った魔法陣の部分にオカルさんが手をつけ、持ち上げるように腕を動かすと、それに床がついていくように、一部分が扉となって、床が開く。……師匠の家の地下室で見た、仕掛けと一緒だ。

 特定の人物が触れると、魔法陣が現れ、その魔法陣がドアノブのような役目を果たし、さっきまで何もなかったように見えた場所が扉のように開く魔法。複数の魔法が組み合わさっている、魔法使いが編み出した魔法だと、師匠は言っていた。

 ……なんだか、酷く、嫌な感じがする。さっきから、見かける細部が、どうも師匠の家の地下室を思い出させる。あの人の家にこんな場所がないのは知っているけど。
 そのせいか、薄気味悪い場所なのに、なんとなく、懐かしさのようなものも少し感じていた。

「どうぞ、降りてください」

 開かれた床の穴を覗き込むと、梯子のようなものが下に伸びている。

「……オカルさんは、降りないんですか」

「自分はここまで連れてくるのが役目なんで。実験体の様子を見たら、自分は調査班の方に戻る予定っす。そろそろ点呼の時間ですし、『イエリオたちがいない~』って一応報告しておかないと」

 ……点呼の時間は十八時だったはず。今はもう、夕方なのか。早く、イエリオを連れて早くここを出るか、安全な場所を探さないと。夜になったら流石に簡単には動けない。
 それにしても、演技がかったような報告の言葉が妙に腹立つ。

 降りるのは怖いが、この先にイエリオがいるかもしれないのなら、ひるんでなんか、いられない。
 わたしはおそるおそる、梯子を使って降りる。

 その先は部屋になっていて――すぐ目に入る位置にあったベッドの上に、イエリオが横たわっていた。

「――イエリオ!」

 わたしは声を上げながらベッドに駆け寄る。拘束はされているが、怪我らしい怪我は見当たらない。……、脈はあるし、息もしっかりしている。意識はなさそうだが、表情は苦しそうでもなんでもないし、眠っているだけ……だろうか。

 手を握ると、ちゃんと温かい。――大丈夫、生きている。大丈夫。
 安心して、息を深く吐き――。

「ぼくに気が付かないなんて、酷いなあ」

 背後から聞こえてきた、懐かしい声に、わたしは思わず、勢いよく振り返っていた。
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