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外も凄かったが、中も凄かった。
その辺の食品売り場に売っていそうなシンプルな見た目の飴から、美術品かと思ってしまうほど精巧な飴細工まで、様々なものが売られている。国中の飴が集められている、と言われても疑わないくらい、広い店内にいろんな飴が売られている。
見ているだけで楽しい。
「よければこれを貰っていけ」
渡されたのは三つ折りにされたチラシのようなものだった。一番後ろの下の部分がおそらくクーポンになっている。文字は分からないけど、デザインがそんな感じ。
「無料で貰えるものだ。こういう、実際に使われているものを読めるようになれば語学が身についている実感がわくだろう」
これを読めるくらいになれ、ということだろうか。まだ教師と顔合わせすらしていないけど……でも、確かに目標があるのとないのとでは全然違う。これを読めるのを第一目標としよう。
「ここが店の歴史、ここは定番商品でこっちは来季の新商品告知だな。裏は店内マップだ」
店の歴史は結構長々と書かれているけど、商品説明は結構短い文で構成されているし、店内マップに至っては、おそらくほとんどが単語。……思った以上に教材としてはありなのかも……。三つ折りにされているとはいえ、紙一枚。文字の量も多くない。
「全部読めるようになったらまた連れてきてやろう。……まあ、君が嫌でなければ」
「えっ、いいんですか?」
イタリさんは騎士団の団長だし、こっちの国の貴族みたいだし、これが最初で最後の、一緒の外出だとばかり思っていた。
「じゃあ、次、季節が変わるまでに読めるようになります! ショーウィンドウ、次は何が並ぶのか気になるので」
前の国での勉強は、本当に何を言っているのか理解できなかったし、必要だと分かっていても言語という地盤自体があやふやだったから、自主的な勉強も出来なかったし。
でも、言葉が分かる上での勉強で、しかもご褒美が用意されているとなれば、モチベーションも違う。
「……そうか」
しかし、なんだがすごく、妙な間がある返事をされた。……子供っぽかったかな。飴一つでここまではしゃぐとは。
でも、元の国にいたときは、こういう体験ができなかったのだ。どうしてもテンションが上がってしまう。
何か楽しいことや面白いことがあっても、今、それを楽しんでいいのか、面白がっていいのか、ということすら、わたしには分からなかったから。周りの顔色で、なんとなく察することはあったけど、話をして共有することは出来なくて。
ちょっと調子に乗りすぎたかな、なんて考えていたら、イタリさんが一つ、小さな瓶詰めの飴を、わたしに差し出した。わたしの片手でも持てるくらいの、小さい瓶。
「今日のところはこれを買ってやろう。勉強するときによく食べられる飴だ」
淡い色合いが可愛らしい飴。可愛い飴が嬉しい――というのもあるけど、こうしてイタリさんが気にかけてくれるのがうれしい。
「ありがとうございます」
口角が緩むのを押さえきれないまま、わたしは彼に礼を言うのだった。
その辺の食品売り場に売っていそうなシンプルな見た目の飴から、美術品かと思ってしまうほど精巧な飴細工まで、様々なものが売られている。国中の飴が集められている、と言われても疑わないくらい、広い店内にいろんな飴が売られている。
見ているだけで楽しい。
「よければこれを貰っていけ」
渡されたのは三つ折りにされたチラシのようなものだった。一番後ろの下の部分がおそらくクーポンになっている。文字は分からないけど、デザインがそんな感じ。
「無料で貰えるものだ。こういう、実際に使われているものを読めるようになれば語学が身についている実感がわくだろう」
これを読めるくらいになれ、ということだろうか。まだ教師と顔合わせすらしていないけど……でも、確かに目標があるのとないのとでは全然違う。これを読めるのを第一目標としよう。
「ここが店の歴史、ここは定番商品でこっちは来季の新商品告知だな。裏は店内マップだ」
店の歴史は結構長々と書かれているけど、商品説明は結構短い文で構成されているし、店内マップに至っては、おそらくほとんどが単語。……思った以上に教材としてはありなのかも……。三つ折りにされているとはいえ、紙一枚。文字の量も多くない。
「全部読めるようになったらまた連れてきてやろう。……まあ、君が嫌でなければ」
「えっ、いいんですか?」
イタリさんは騎士団の団長だし、こっちの国の貴族みたいだし、これが最初で最後の、一緒の外出だとばかり思っていた。
「じゃあ、次、季節が変わるまでに読めるようになります! ショーウィンドウ、次は何が並ぶのか気になるので」
前の国での勉強は、本当に何を言っているのか理解できなかったし、必要だと分かっていても言語という地盤自体があやふやだったから、自主的な勉強も出来なかったし。
でも、言葉が分かる上での勉強で、しかもご褒美が用意されているとなれば、モチベーションも違う。
「……そうか」
しかし、なんだがすごく、妙な間がある返事をされた。……子供っぽかったかな。飴一つでここまではしゃぐとは。
でも、元の国にいたときは、こういう体験ができなかったのだ。どうしてもテンションが上がってしまう。
何か楽しいことや面白いことがあっても、今、それを楽しんでいいのか、面白がっていいのか、ということすら、わたしには分からなかったから。周りの顔色で、なんとなく察することはあったけど、話をして共有することは出来なくて。
ちょっと調子に乗りすぎたかな、なんて考えていたら、イタリさんが一つ、小さな瓶詰めの飴を、わたしに差し出した。わたしの片手でも持てるくらいの、小さい瓶。
「今日のところはこれを買ってやろう。勉強するときによく食べられる飴だ」
淡い色合いが可愛らしい飴。可愛い飴が嬉しい――というのもあるけど、こうしてイタリさんが気にかけてくれるのがうれしい。
「ありがとうございます」
口角が緩むのを押さえきれないまま、わたしは彼に礼を言うのだった。
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