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第一部

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 ぶつくさと不満を言うアビィさんの声をBGMに、わたしたちは草をかき分けて歩く。……確かに、結構歩くの大変かも、これ。アビィさん程ではないものの、一言、二言、何か言いたくなってしまう、という気持ちは少し分かる。
 平地なのは変わらないはずなのに、随分と先ほどとは違って歩きにくい。アルベアちゃんに至っては、すっかり姿が草で隠れてしまっている。かろうじて、草が不自然に動くため、そのあたりにいるのだと分かるけれど。

 ――どのくらい歩いただろうか。
 多分、実際の距離で言えばたいした距離を歩いていないとは思うが、体感だとかなり進んだと思うころ。
 ふと、足元に違和感を覚え、わたしは足を止める。

 ずっと草や土などを踏んで歩いて進んでいたわけだが、急に、何か硬いものを踏んだ感覚があったのだ。蛇とか、そういう、何か生物の類ではないと思う。骨っぽい硬さには感じなかった。
 わたしはその場にしゃがみこみ、足元を手探りで探す。背の高い草が生い茂っているせいで、足元が全然見えないのだ。

「ぅ、わっぷ」

「おい、どうした? 大丈夫か?」

 顔を下げる位置を間違えたらしい。避けていた草が、思い切り顔面めがけてやってきた。驚いて声を出してしまったが、痛くはないし、口や目の中に入った、ということもない。

「すみません、足元に何かあるみたいで……あった!」

 エーリングさんに返事をしながらも足元を探っていると、ようやく踏んだと思われる何かを見つけた。靴をどかしたらどこにあったか分からなくなってしまって、すぐに見つからなかったんだよね。
 拾い上げてみると、それはバングルだった。少し太めで、細かい彫りがある。わたしが踏んだと思われる場所は彫りに土が埋まってしまっているけれど。

「誰かの落し物かな――う、わっ」

 わたしがバングルを検分していると、思い切りアルベアちゃんが飛びついてきた。そのまましりもちをついて、立ち上がろうとするものの――バランスを崩す。
 ――そして、何故か、地面がなかった。
 何が起きたのか分からないまま、わたしはそのまま転げ落ちる。

「い、ったたた……」

 背の高い草のせいで見えなかったが、崖、というか、段差のようなものが近くにあったのが見えなかったらしい。
 たいした高さではないし、着地点にアルベアちゃんがクッションになるように滑り込んでくれたから、そこまで衝撃はなかったものの、滑り落ちたせいであちこちに擦り傷ができている。

 エーリングさんやアビィさん、アルベアちゃんと同じような場所を歩いていたのに、わたしばかり転げ落ちるとは運がない。

「ありがと、アルベアちゃん。でも、急に飛びついてきたら危ないよ」

 わたしはアルベアちゃんに話しかけるが、わたしが無事なのが分かると、彼の興味はバングルへと集中した。
 ……もしかして、これ、ザムさんのつけていたものなのかな。
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