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第一部
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わたしは必死に酒場で見たはずの依頼書を思い出す。でも、わたしがあの依頼書に注目したのって、猫の絵、つまりはアルベアちゃんか描かれていたからだ。男性の絵は描かれていなかった……ような気がしなくもないが、自信はない。なぜなら猫の絵の方しか見てないから。
顔が広い人らしいので、あの辺りの人からしたら、アルベアちゃんを連れたザムという男は一人しかいないのだろう。
直接依頼を受けたエーリングさんは流石に知っているだろうが、ここにいるのは、彼女が依頼を受けに行っている間、外で待っていた二人だけである。
もちろん、アルベアちゃんは分かるだろう。でも、あの中で、明らかに仲間同士な数人の男性組の誰かと、倒れている人と、椅子に縛られている男と、そのどれかによって、対応が変わってくる。
数人組の男一人なら、まだいいものの、倒れている人か椅子に縛られている男かのどちらかがザムさんだった場合、数人の男たちから逃げつつもそのどちらかを回収しないといけないのだ。悪人だと決まっているわけではないが、どう考えたって、男を椅子に縛り付けたり倒れている人間を放置している時点で、そのどちらかを回収しようとしたら穏便にいかない。
アビィさんは面倒くさがって運んでくれないだろうし、わたしは足を怪我している云々以前に、ついこの間まで労働を知らなかった貴族令嬢なのである。猫より重いものが持てるわけがない。
なので、ザムさんのところに行っておいで! とアルベアちゃんを簡単に送り出すわけにはいかないのだ。
アルベアちゃんに聞きたいけれど、もう一度部屋の方を見せたら、今度こそ飛び出して行ってしまうかもしれない。また止められればいいが、うまく止められずに飛び出して行ってしまったら、結局は無策でどうにかしなければならない。
「……そうだ」
わたしは猫ちゃんを抱きかかえ、ひっそりと部屋をうかがいに行く。……うん、まだばれてない。仲間内で会話をしているようで、そのおかげかわたしたちの物音に気が付いていないのだろう。
「あの中で、どれがご主人様?」
少なくとも穏便に済ませられる手段で選択肢を狭めよう、と思い立ったわたしは、猫ちゃんに聞く。
『あっち』
猫ちゃんが曲がっていないほうの手で指さしたのは、床に倒れこんでいる人だった。
となると、椅子に縛り付けられている男か、数人組のどちらか。仮に、拘束されている方がそうだったとしたら、ナイフか何か、縄を切るものが欲しいな……。
わたしは再びアルベアちゃんとアビィさんが待つ、下からは死角になる通路へと戻る。
「倒れている人はこの子のご主人様らしくて、残りの誰かがザムさんだと思います。どうしましょう?」
困ったわたしは、アビィさんへと相談する。放っておいたらアルベアちゃんが勝手に突っ込んでいってしまいそうなのだ。
早めに作戦が欲しい。
顔が広い人らしいので、あの辺りの人からしたら、アルベアちゃんを連れたザムという男は一人しかいないのだろう。
直接依頼を受けたエーリングさんは流石に知っているだろうが、ここにいるのは、彼女が依頼を受けに行っている間、外で待っていた二人だけである。
もちろん、アルベアちゃんは分かるだろう。でも、あの中で、明らかに仲間同士な数人の男性組の誰かと、倒れている人と、椅子に縛られている男と、そのどれかによって、対応が変わってくる。
数人組の男一人なら、まだいいものの、倒れている人か椅子に縛られている男かのどちらかがザムさんだった場合、数人の男たちから逃げつつもそのどちらかを回収しないといけないのだ。悪人だと決まっているわけではないが、どう考えたって、男を椅子に縛り付けたり倒れている人間を放置している時点で、そのどちらかを回収しようとしたら穏便にいかない。
アビィさんは面倒くさがって運んでくれないだろうし、わたしは足を怪我している云々以前に、ついこの間まで労働を知らなかった貴族令嬢なのである。猫より重いものが持てるわけがない。
なので、ザムさんのところに行っておいで! とアルベアちゃんを簡単に送り出すわけにはいかないのだ。
アルベアちゃんに聞きたいけれど、もう一度部屋の方を見せたら、今度こそ飛び出して行ってしまうかもしれない。また止められればいいが、うまく止められずに飛び出して行ってしまったら、結局は無策でどうにかしなければならない。
「……そうだ」
わたしは猫ちゃんを抱きかかえ、ひっそりと部屋をうかがいに行く。……うん、まだばれてない。仲間内で会話をしているようで、そのおかげかわたしたちの物音に気が付いていないのだろう。
「あの中で、どれがご主人様?」
少なくとも穏便に済ませられる手段で選択肢を狭めよう、と思い立ったわたしは、猫ちゃんに聞く。
『あっち』
猫ちゃんが曲がっていないほうの手で指さしたのは、床に倒れこんでいる人だった。
となると、椅子に縛り付けられている男か、数人組のどちらか。仮に、拘束されている方がそうだったとしたら、ナイフか何か、縄を切るものが欲しいな……。
わたしは再びアルベアちゃんとアビィさんが待つ、下からは死角になる通路へと戻る。
「倒れている人はこの子のご主人様らしくて、残りの誰かがザムさんだと思います。どうしましょう?」
困ったわたしは、アビィさんへと相談する。放っておいたらアルベアちゃんが勝手に突っ込んでいってしまいそうなのだ。
早めに作戦が欲しい。
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