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第一部

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 るんるんとスキップしたい気分でわたしは歩き進める。実際には足をくじいているのでスキップなんて、できやしないのだが。
 それでも、アラインさんを引きずって部屋まで運び、挙句にソファの上へと持ち上げた、という行動によってだいぶ痛みが激しくなっていた分がどこかへと消えてしまった気分だった。

「そんなにご機嫌なら、私を背負ってもらえませんか? 歩くのに疲れてきました」

「それは流石に無理ですね」

 隣を歩くアビィさんの言葉にわたしは断りを入れる。痛くなくなったような気がする、エルナモンテスちゃんが楽しみで気にしていられない、というのが正しくて、別に怪我が治ったわけではない。

 アビィさんには、トレジャーハンターを殺したくないというわたしのわがままをかなえてもらったので、何かお礼を、と思わないでもないのだが、今は無理。ちなみにトレジャーハンターの男たちを拘束していた魔法は解いてもらった。解いてもらった、というか、アラインさんが目を覚ました時点で解除していたらしい。あの人たちはアラインさんがどうにかすると言っていたらしいし、追ってこられることもないだろう。

 ……アラインさんがどう対処するかは知らないけど、あの人はあの人で殺したり……しないよね? ちょっと不安になってきた。ダンジョンを攻略してもらいたい側の人みたいだから、アビィさんみたいに強引な行動はしないと思うけど……。
 まあ、アビィさんとアラインさんでは立場が違う。あの人、直接の被害者なわけだし。そうするだけの権利がある、と認めたくはないけれど、アビィさんよりは……。
 それでも、知り合った人物が人殺しになる、っていうのはなあ。

「……随分とお人好しですね」

 悶々と脳内でトレジャーハンターの男たちの行く末を考えていると、アビィさんがそんな風に声をかけてきた。

「あの男性――アラインは、魔法で睡眠を管理していました。あのまま、その辺に転がされていれば、衰弱死していたでしょうね。トレジャーハンターたちはそれを狙ってアラインをあそこに置いたのだと思いますよ」

 ……それは、分かっている。
 それでも、前世も今世も、人の生き死にというものはどこか遠くの話で、身近ではなかった。人殺しなんて、特に。
 画面越しや人づて、本の中のできごとが目の前で起こるのが嫌なのである。

 転生した後、治安が悪ければまた話は別だっただろう。考え方を変えなければ――奪われる前に奪う、とでも思っていなければ生き残れないような環境だったら。
 でも、まあ、侯爵令嬢という、箱入り娘に生まれてしまったので。
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