わたくしレベルの悪役令嬢になれば婚約破棄フラグ管理は完璧ですわ!~今度はハッピーエンドを目指します~

ゴルゴンゾーラ三国

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第一部

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 少し茶色にも近いように思える金髪のくせっけ。長い前髪から、こちらを見定めるような、赤い瞳。
 いつもより、ほんの少しだけ早い邂逅をしたランセルテは、その割に、いつもと変わらない見た目をしていた。

「――こんにちは、ランセルテ。わたくしはサネアと言います」

 ……ランセルテとの『初めまして』も、もう慣れたものだ。
 いまだに最適解を出せていない王子とは違って、ランセルテの扱い方には答えが見えている。何回か前から、ずっと同じような扱いを繰り返していた。

 だからこそ――少しばかり、さみしくも思う。投げやりになっているつもりはないが、それでもどこか、彼との出会いを作業のように扱っているのでは、と考えてしまうこともあるから。
 わたしにとっては何度目かもわからないランセルテとの挨拶も、ランセルテにとっては初めてのことなのだ。

 そのどうしようもない歪な差が、わたしの中にある、罪悪感のようなものを刺激する。

「今はまだ、難しいでしょうけれど……いつかお姉様と呼んでくださると嬉しいわ」

 何度も言ってきた言葉に、やはり以前までのランセルテと同じように、今回の彼も、一瞬、目を見開いて驚いていた。

 ランセルテは、生まれるのが遅かっただけの男の子。家族仲は悪くない。礼儀や作法、貴族としての在り方という一線が明確にありながらも、愛されて育った。
 けれど――貴族家の五男という立場は、非常に微妙なものだ。

 長男のように後継ぎを期待されるのではなく、後継ぎの予備と補佐を命じられる次男とも違う。三男、四男であれば、王城に勤め出て功績を上げることもあっただろう。
 でも、五男ともなれば――何か明確な役割を与えられることもなく、期待されることもない。家の規模にもよるが、どの家も、五男あたりから扱いが雑になっていく。

 おそらく、ランセルテの両親は、いいことをしたつもりでいるだろう。何もできないままでいるよりは、本家の後継ぎとして養子に出されることは名誉だと、本気で思っているはずだ。

 そんなこの国の貴族社会の現実を知らない年齢の彼は、こうして他家に養子に出されて、ひどく傷ついている。――ということを、わたしは知っている。

「……よろしく、お願いします」

 ぎこちなく頭を下げるランセルテ。
 もう一つの世界で、攻略情報を見ながら乙女ゲームをプレイする、ということに対して何の違和感も抱かないのに、こうして、同じように、この世界で事前情報に沿って言動を決めることに、もやもやとしたわだかまりを感じてしまうのは、やはりわたしがこちらの世界の人間だからなのだろうか。
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