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第一部
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まあ、別に旅行記が特別好きというわけでもないのだけれど。『しがない旅人』の文章が好きなだけ。でも、別に細かく修正するようなことでもないから、わたしが旅行記好き、ということにしておこう。もしかしたら、それも将来サマリにアピールできるポイントに……。
「実はその作者、兄さんの紹介で本を出したんです」
「――エッ? ……んんッ」
ランセルテの言葉に、わたしは思わず素っ頓狂な声を上げてしまい、慌てて咳払いをした。貴族令嬢が出していい声じゃない。
しかし、その咳払いを勘違いしたのか、ランセルテがまた不安そうな表情を浮かべ、慌てた。
「あっ、いや、もう兄さんじゃなくて……えっと……」
「ち、違うのよ。大丈夫、兄でいいのよ、ランセルテ」
極々身近に、サマリとのつながりがある人物がいたことに驚いただけ。決して、既に本家へと養子になった人間が、元居た家の者を家族だと称したことに不快感を持ったわけではない。
「確かに、キシュシー家には来たけれど、元の家の人だって、大事な家族でしょう?」
わたしは慌ててランセルテにフォローを入れる。泣きそうだった彼の顔が、少しだけ晴れた。わたしが怒っていないことが分かって安心したらしい。
「ただ、その。わたくし、この作者を気に入ったものだから。知り合いが近くにいると知って、びっくりしただけよ」
「そ、そうでしたか……」
安堵の息を吐くランセルテ。誤解だと伝わったようでよかった。
「……三番目の兄が、その……結構、外へ遊びに行くので。その時に、旅商人の子である作者と知り合ったそうです」
外に、と言う際、ちらちらと周りを気にしていたようだったから、もしかして、勝手に家を抜け出してきた、とかなのかしら。三番目の兄、ということは三男……確か、現在十七歳とかだったはず。結構ランセルテと年が離れているのよね。
ランセルテの家族の話は、以前までのランセルテから聞いているから、ある程度の情報は分かる。結構やんちゃな性格だと言っていたし、お忍び、ということで、家を抜け出して街へと遊びに行ったのかしら。
ランセルテの実家は王都にはなく、地方にある。彼の家は領地持ちの家系なのだ。
王都にある貴族街にある屋敷は、王城へと勤務する者を輩出する過程と、領地持ちの高位貴族の別荘しかない。
ちなみにキシュシー家は、代々王族の伴侶や王族の執務を補佐する人間を務める者が多い。わたしのように王族の婚約者になったり、そうでなければ王族の秘書になることが多い。
公爵家なので、非常時に限り、公務を代理することもあるが、これは滅多なことではありえないし、キシュシー家だけでなく始祖が王族である公爵家全体の仕事である。
閑話休題。
王都にある街、白街や平民街では、王都ということもあり、昔から代々続く老舗の大商会ばかりだけれど、地方の領地ならば旅商人も入り込む余地があるのだろう。
地方の領地の街で知り合った、ということなのね。
「実はその作者、兄さんの紹介で本を出したんです」
「――エッ? ……んんッ」
ランセルテの言葉に、わたしは思わず素っ頓狂な声を上げてしまい、慌てて咳払いをした。貴族令嬢が出していい声じゃない。
しかし、その咳払いを勘違いしたのか、ランセルテがまた不安そうな表情を浮かべ、慌てた。
「あっ、いや、もう兄さんじゃなくて……えっと……」
「ち、違うのよ。大丈夫、兄でいいのよ、ランセルテ」
極々身近に、サマリとのつながりがある人物がいたことに驚いただけ。決して、既に本家へと養子になった人間が、元居た家の者を家族だと称したことに不快感を持ったわけではない。
「確かに、キシュシー家には来たけれど、元の家の人だって、大事な家族でしょう?」
わたしは慌ててランセルテにフォローを入れる。泣きそうだった彼の顔が、少しだけ晴れた。わたしが怒っていないことが分かって安心したらしい。
「ただ、その。わたくし、この作者を気に入ったものだから。知り合いが近くにいると知って、びっくりしただけよ」
「そ、そうでしたか……」
安堵の息を吐くランセルテ。誤解だと伝わったようでよかった。
「……三番目の兄が、その……結構、外へ遊びに行くので。その時に、旅商人の子である作者と知り合ったそうです」
外に、と言う際、ちらちらと周りを気にしていたようだったから、もしかして、勝手に家を抜け出してきた、とかなのかしら。三番目の兄、ということは三男……確か、現在十七歳とかだったはず。結構ランセルテと年が離れているのよね。
ランセルテの家族の話は、以前までのランセルテから聞いているから、ある程度の情報は分かる。結構やんちゃな性格だと言っていたし、お忍び、ということで、家を抜け出して街へと遊びに行ったのかしら。
ランセルテの実家は王都にはなく、地方にある。彼の家は領地持ちの家系なのだ。
王都にある貴族街にある屋敷は、王城へと勤務する者を輩出する過程と、領地持ちの高位貴族の別荘しかない。
ちなみにキシュシー家は、代々王族の伴侶や王族の執務を補佐する人間を務める者が多い。わたしのように王族の婚約者になったり、そうでなければ王族の秘書になることが多い。
公爵家なので、非常時に限り、公務を代理することもあるが、これは滅多なことではありえないし、キシュシー家だけでなく始祖が王族である公爵家全体の仕事である。
閑話休題。
王都にある街、白街や平民街では、王都ということもあり、昔から代々続く老舗の大商会ばかりだけれど、地方の領地ならば旅商人も入り込む余地があるのだろう。
地方の領地の街で知り合った、ということなのね。
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