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露骨な行動はあまりにも嘘っぽく見える。理想は、今まで隠してきた想いをオープンにした、という雰囲気。ごく自然さが求められる。
失敗したら、アインアルド王子に愛されなかったから、今度はオクトール様に媚びを売り始めた軽い女になってしまう。それだけは避けねばならない。今後に支障がでる。
「……少し距離を近くして、それに動揺しないところから始めればいいんじゃなくて?」
露骨にアピールしようとして失敗する未来が見える。要領が分からない最初のうちは、ごく軽い感じで十分だと思う……多分。やったことがないから確実なことは言えないけど。
「距離を近く……どのくらいだ?」
「えっ? ええと……」
細かいな、と思ったけれど、このくらい細かく設定を決めていかないと、咄嗟のときに困るだろう。実際、現状は別に愛し合っているわけじゃないから、互いに互いをフォローしようとして、逆に演技であるとバレる可能性がある。
わたしは少し考えて、向かい合って座っていたソファから立ち上がる。そのまま、「失礼」と、オクトール様が座っているソファの上、すぐ隣に腰を下ろした。丁度、肩が触れるくらいの距離で。
「――っ」
見なくても、オクトール様が動揺したのが分かる。
「だから動揺したら駄目だって――」
言いながら、彼の方を見て、わたしの方まで固まってしまった。思っていた以上に近い。肩がくっつくくらいの距離って、実際こんなに近いのか。思っていたのと全然違う。もっとこう……前世の電車の席を想像していたんだけど。何が違うんだ……何も知らない赤の他人じゃないから? いや、オクトール様がこんなにもおろおろしているからつられているのか。
「き、君こそ動揺しているじゃないか……」
顔を赤くしたオクトール様が顔を逸らした。……さ、作戦、考えなおすべき? こんな動揺していたら、今まで隠れて逢瀬を重ねてきた、なんて演出は出来ない。
い、いや、まだ時間はある!
わたしは動揺していた心を押さえ、気まずさを払拭するように、机の上に置いていた招待状を手に取った。そしてこのタイミングで、ちょっと距離を取る。子供が一人座れるくらいの間を開ければそこまで近くはない。
「だ、大丈夫ですわ! 一番近いものでも二か月半はあります。それまでに、もう少し触れ合いに慣れて動揺しないようになりましょう。なんとか日程を開けますので!」
わたしは彼に招待状を突き付けるようにして、日時を見せる。オクトール様はわたしの手から招待状を取ると、日時と開催する家名を確認しているようだった。
「……確かに、随分と先だな。ここの家は、もっと頻繁に夜会を開いていたように思うが……」
「あら、ご存じなの?」
「下位貴族ではあるけど、有名だからな。月に一回か二回もパーティーを開く財力がある家は、この国の貴族の中でもそうそうない」
成程。確かに、夜会を開催するこの家は、商会が大きくなって貴族の仲間入りをし、持っている土地にある街も貿易が栄えているので、商人の集まりとして、よくパーティーを開いているのだ。国内随一の商会グループを持っているので、財力だけならトップクラスの貴族家だろう。
新興貴族だから歴史は全然ないんだけど。
失敗したら、アインアルド王子に愛されなかったから、今度はオクトール様に媚びを売り始めた軽い女になってしまう。それだけは避けねばならない。今後に支障がでる。
「……少し距離を近くして、それに動揺しないところから始めればいいんじゃなくて?」
露骨にアピールしようとして失敗する未来が見える。要領が分からない最初のうちは、ごく軽い感じで十分だと思う……多分。やったことがないから確実なことは言えないけど。
「距離を近く……どのくらいだ?」
「えっ? ええと……」
細かいな、と思ったけれど、このくらい細かく設定を決めていかないと、咄嗟のときに困るだろう。実際、現状は別に愛し合っているわけじゃないから、互いに互いをフォローしようとして、逆に演技であるとバレる可能性がある。
わたしは少し考えて、向かい合って座っていたソファから立ち上がる。そのまま、「失礼」と、オクトール様が座っているソファの上、すぐ隣に腰を下ろした。丁度、肩が触れるくらいの距離で。
「――っ」
見なくても、オクトール様が動揺したのが分かる。
「だから動揺したら駄目だって――」
言いながら、彼の方を見て、わたしの方まで固まってしまった。思っていた以上に近い。肩がくっつくくらいの距離って、実際こんなに近いのか。思っていたのと全然違う。もっとこう……前世の電車の席を想像していたんだけど。何が違うんだ……何も知らない赤の他人じゃないから? いや、オクトール様がこんなにもおろおろしているからつられているのか。
「き、君こそ動揺しているじゃないか……」
顔を赤くしたオクトール様が顔を逸らした。……さ、作戦、考えなおすべき? こんな動揺していたら、今まで隠れて逢瀬を重ねてきた、なんて演出は出来ない。
い、いや、まだ時間はある!
わたしは動揺していた心を押さえ、気まずさを払拭するように、机の上に置いていた招待状を手に取った。そしてこのタイミングで、ちょっと距離を取る。子供が一人座れるくらいの間を開ければそこまで近くはない。
「だ、大丈夫ですわ! 一番近いものでも二か月半はあります。それまでに、もう少し触れ合いに慣れて動揺しないようになりましょう。なんとか日程を開けますので!」
わたしは彼に招待状を突き付けるようにして、日時を見せる。オクトール様はわたしの手から招待状を取ると、日時と開催する家名を確認しているようだった。
「……確かに、随分と先だな。ここの家は、もっと頻繁に夜会を開いていたように思うが……」
「あら、ご存じなの?」
「下位貴族ではあるけど、有名だからな。月に一回か二回もパーティーを開く財力がある家は、この国の貴族の中でもそうそうない」
成程。確かに、夜会を開催するこの家は、商会が大きくなって貴族の仲間入りをし、持っている土地にある街も貿易が栄えているので、商人の集まりとして、よくパーティーを開いているのだ。国内随一の商会グループを持っているので、財力だけならトップクラスの貴族家だろう。
新興貴族だから歴史は全然ないんだけど。
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