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それにしても、ノーディーニさんしか入れたことがない研究室って……。
「わたくしも入っていいんですの?」
彼の私室より、こっちのほうがオクトール様にとって、自分のテリトリーという意識が強いのでは、と思ったのだ。何度かこの部屋には通っているが、ここが研究室だということを教えてもらったのは、今日が初めてである。
わたしの予想は正しく、「本来ならあまり他人を入れたくないが……」と前置きをされた。
「だが、君の努力に応えようと思ったのだ」
「わたくしの?」
「僕は本でも十分理解できたが、君は実物を見た方が分かりやすいのでは、と」
「ほら入れ」と再度誘われたので、あまりここで言い合うのも無意味か、と、大人しく研究室へと入る。
研究室は、さっきまでわたしが勉強をしていたオクトール様の私室より広い――のだと思う。多分。
物が多い上に散らかっているので、狭く見えるが、中央にあるテーブルはなかなかのサイズだし、壁際にある棚や本棚、研究に使うのであろう道具の数々のサイズ感を考慮すると、かなりの大きさの部屋だと思う。
「こちらに来い」
わたしはオクトール様に呼ばれて彼の後をついていく。
たどりついた先には、さっきまで勉強していた魔法道具があった。前世で言う、電話の役割を持っているものだ。ちなみに固定電話のほう。
「いいか? 受話器を取ることによって、ここが上がるだろう。すると、中で――そう、この辺りで魔力が動いて……」
オクトール様は一つひとつ、丁寧に仕組みについて教えてくれる。本でも図解のための絵が載っていたのだが、実際に見た方が確かに分かりやすい。
実際に見たから完璧に分かるようになった! とは口が裂けても言えないが、少なくともさっきの倍よりは頭に入る。
「つまり、さっきの問題は、魔力の回路を右で繋げるか左で繋げるか、どちらのほうがより少量の魔力で動かせるか、ということだったのですね」
「そうだ。ちなみにどちらだと思う」
「……右、かしら」
魔力を繋げる回路は、長ければ長いほど、少量の魔力で魔法道具を動かせることができるそうだ。わたしからしたら、短いほうがすぐ必要な場所に届きそうでいいんじゃないの? と思ってしまうのだが、長い方が魔力が蓄積がしやすく、使うごとに魔力の使用量が減っていくらしい。
その感覚が全く理解できなかったのだが、こうして教えられると、なんとなく意味が分かったような気がする。
あっているかな、と、ちらっと彼を見ると、満面の笑みで、「正解だ」と言われた。
――……どうやら、魔法道具をいじっている間は人との関りへの苦手意識がなくなるみたい。
「わたくしも入っていいんですの?」
彼の私室より、こっちのほうがオクトール様にとって、自分のテリトリーという意識が強いのでは、と思ったのだ。何度かこの部屋には通っているが、ここが研究室だということを教えてもらったのは、今日が初めてである。
わたしの予想は正しく、「本来ならあまり他人を入れたくないが……」と前置きをされた。
「だが、君の努力に応えようと思ったのだ」
「わたくしの?」
「僕は本でも十分理解できたが、君は実物を見た方が分かりやすいのでは、と」
「ほら入れ」と再度誘われたので、あまりここで言い合うのも無意味か、と、大人しく研究室へと入る。
研究室は、さっきまでわたしが勉強をしていたオクトール様の私室より広い――のだと思う。多分。
物が多い上に散らかっているので、狭く見えるが、中央にあるテーブルはなかなかのサイズだし、壁際にある棚や本棚、研究に使うのであろう道具の数々のサイズ感を考慮すると、かなりの大きさの部屋だと思う。
「こちらに来い」
わたしはオクトール様に呼ばれて彼の後をついていく。
たどりついた先には、さっきまで勉強していた魔法道具があった。前世で言う、電話の役割を持っているものだ。ちなみに固定電話のほう。
「いいか? 受話器を取ることによって、ここが上がるだろう。すると、中で――そう、この辺りで魔力が動いて……」
オクトール様は一つひとつ、丁寧に仕組みについて教えてくれる。本でも図解のための絵が載っていたのだが、実際に見た方が確かに分かりやすい。
実際に見たから完璧に分かるようになった! とは口が裂けても言えないが、少なくともさっきの倍よりは頭に入る。
「つまり、さっきの問題は、魔力の回路を右で繋げるか左で繋げるか、どちらのほうがより少量の魔力で動かせるか、ということだったのですね」
「そうだ。ちなみにどちらだと思う」
「……右、かしら」
魔力を繋げる回路は、長ければ長いほど、少量の魔力で魔法道具を動かせることができるそうだ。わたしからしたら、短いほうがすぐ必要な場所に届きそうでいいんじゃないの? と思ってしまうのだが、長い方が魔力が蓄積がしやすく、使うごとに魔力の使用量が減っていくらしい。
その感覚が全く理解できなかったのだが、こうして教えられると、なんとなく意味が分かったような気がする。
あっているかな、と、ちらっと彼を見ると、満面の笑みで、「正解だ」と言われた。
――……どうやら、魔法道具をいじっている間は人との関りへの苦手意識がなくなるみたい。
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