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――足の痛みが引いてくると、代わりに羞恥心が勝ってくる。
「その、足を踏んで申し訳ありませんでした。オクトール様の方は、お怪我はありませんか?」
思いっきり踏み抜いた、という感触はなかったから、流石に足を折った、なんてことはないだろうが、痛くなかっただろうか。
「驚きはしたが、あのくらいなんともない。むしろ、避けられなくて情けない限りだ」
……そう言われてしまうと、ステップを間違えたわたしの立場がないのだが。いや、オクトール様に気を取られて足を踏んだわたしのほうが悪いのだから、しかたないんだけど。
「……兄上なら、あの場でフォローすることができたのだろうか」
間違えたのはわたしなのに、わたし以上にオクトール様が落ち込んでいる。
アインアルド王子だったら。あれだけいろんな女を引っ掻けてくるだけあって、パーティー慣れはしているから、フォローできたかどうかと問われれば、多分、できたとは思うけど……。元々ダンスもかなり上手な方だから。
でも。
「……フォローされなくても、オクトール様と踊った方が楽しかったですわ」
アインアルド王子と踊るときはいつだって、純粋に楽しんだことはなかった。原作の時間軸だったからハーレムエンドに向かうためにあれこれ考えないといけなかったし、アインアルド王子と開会のダンスを踊れていた時期はまだヒロインたちと王子がくっついていないとき――つまりは、わたしが貴族としてまだまだと言える時期だったこともあって、アインアルド王子についていくのに必死だった。
頭の中はいつもぐちゃぐちゃで、余裕がない状態で。……まあ、それは今とあまり変わりはないんだけど、いろんな意味で。
「そ、そうか」
動揺したようにオクトール様が眼鏡のブリッジを押し上げる。顔を隠すような位置の手ではあるが、頬と耳が赤くなっているのは、バレバレだった。
そこまで分かりやすく反応されてしまうと、こっちもどうしたらいいのか分からなくなる。
「あ、あの――」
何か声をかけなきゃ、と、口を開いたとき、ドアがノックされる音が聞こえた。
「オクトール殿下、ベルメ様、シャローネですわ。新しい靴をお持ちいたしました」
凄いタイミング、と思いながら、わたしは返事をする。……そういえば、ハイヒールのヒールが折れた、ってことで退出してきたんだった。
でも、オクトール様がついた、とっさの嘘だから、わたしのハイヒールは綺麗なままである。
シャローネは言いふらすような子じゃないし、素直に本当のことを言うしかないかな。
「その、足を踏んで申し訳ありませんでした。オクトール様の方は、お怪我はありませんか?」
思いっきり踏み抜いた、という感触はなかったから、流石に足を折った、なんてことはないだろうが、痛くなかっただろうか。
「驚きはしたが、あのくらいなんともない。むしろ、避けられなくて情けない限りだ」
……そう言われてしまうと、ステップを間違えたわたしの立場がないのだが。いや、オクトール様に気を取られて足を踏んだわたしのほうが悪いのだから、しかたないんだけど。
「……兄上なら、あの場でフォローすることができたのだろうか」
間違えたのはわたしなのに、わたし以上にオクトール様が落ち込んでいる。
アインアルド王子だったら。あれだけいろんな女を引っ掻けてくるだけあって、パーティー慣れはしているから、フォローできたかどうかと問われれば、多分、できたとは思うけど……。元々ダンスもかなり上手な方だから。
でも。
「……フォローされなくても、オクトール様と踊った方が楽しかったですわ」
アインアルド王子と踊るときはいつだって、純粋に楽しんだことはなかった。原作の時間軸だったからハーレムエンドに向かうためにあれこれ考えないといけなかったし、アインアルド王子と開会のダンスを踊れていた時期はまだヒロインたちと王子がくっついていないとき――つまりは、わたしが貴族としてまだまだと言える時期だったこともあって、アインアルド王子についていくのに必死だった。
頭の中はいつもぐちゃぐちゃで、余裕がない状態で。……まあ、それは今とあまり変わりはないんだけど、いろんな意味で。
「そ、そうか」
動揺したようにオクトール様が眼鏡のブリッジを押し上げる。顔を隠すような位置の手ではあるが、頬と耳が赤くなっているのは、バレバレだった。
そこまで分かりやすく反応されてしまうと、こっちもどうしたらいいのか分からなくなる。
「あ、あの――」
何か声をかけなきゃ、と、口を開いたとき、ドアがノックされる音が聞こえた。
「オクトール殿下、ベルメ様、シャローネですわ。新しい靴をお持ちいたしました」
凄いタイミング、と思いながら、わたしは返事をする。……そういえば、ハイヒールのヒールが折れた、ってことで退出してきたんだった。
でも、オクトール様がついた、とっさの嘘だから、わたしのハイヒールは綺麗なままである。
シャローネは言いふらすような子じゃないし、素直に本当のことを言うしかないかな。
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