ハーレム系ギャルゲの捨てられヒロインに転生しましたが、わたしだけを愛してくれる夫と共に元婚約者を見返してやります!

ゴルゴンゾーラ三国

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 オクトール様が魔法道具の開発を始めて半月が経った。婚約パーティーまでもう時間がないし、てっきり最低限会うだけになるかと思っていたのだが、意外とそんなことはなく、何度か勉強会を続けてくれていた。
 予定の詰め過ぎで倒れないだろうか、と心配したのは最初だけ。わたしより自己管理ができているようで、ベルデリーンに眼鏡を壊されたときの方がよっぽど酷い顔色をしていた。

 とはいえ、前のようにわたしの勉強をじっと見ている、ということはなくなって、わたしが問題を解いている間はオクトール様も何やら紙とにらめっこをしていた。
 ――今のように。

 もしかして、研究が上手くいっていないのかな、と思い、正面に座って何かをがりがり書き込んでいるオクトール様を、つい見てしまう。

「……分からないところでもあった?」

 そう言って顔を上げるオクトール様は、眼鏡をかけていなかった。伝説の魔女が先祖である、という話をしてくれてから、彼はわたしと二人きりのときは眼鏡をしなくなった。信用を勝ち取れたようで嬉しい半面、眼鏡をしていないオクトール様を見慣れなくて、変にドキドキしてしまう。眼鏡をかけていないと口調が砕けて幼くなるから、余計に。

「だ、大丈夫ですわ」

 わたしは慌てて自分のノートに視線を戻す。実際、分からないところはない。最近ようやく自分でも知識がついた自覚が出てきたところで、以前よりもずっと勉強がはかどっている自信がある。最低限の基礎ができてきた、というところだろうか。
 だから、勉強に対して必死さがなくなったのかもしれない。それとも、集中力が切れたのか、つい、彼の方を見てしまう。

「……研究は順調ですの?」

 わたしはペンを動かす手を止めて、つい聞いてしまった。話しかけたかった、とか、そういうわけじゃない。ただ、純粋に気になっただけ。それだけだ。
 わたしの質問に、オクトール様は深い溜息を吐いた。

「正直言うと、微妙なところ。再現自体はできそうなんだけど、魔力効率は悪いし魔法道具自体大きくなりそうで使いにくそうだしで、実用的じゃない」

 魔力効率とは、流した魔力に対してどれだけ稼働するか、というものだ。つまりは現状、燃費が悪くて馬鹿でかい魔法道具にしかならないということだ。
 しかし、この短期間で再現できると確信したところまでたどり着けたのは凄いことだと思う。婚約パーティーにまで間に合ってしまうのではないだろうか。

「どんな植物でも必ず育つ、という素晴らしい結果が得られる魔法であれば、多少使い勝手の悪いものでも需要があるのでは?」

 魔力効率が悪ければそれだけ使う人間を選ぶし、大きくなればお金もかかる。でも、研究所とか、専門家からしたらそんなことが問題にならないくらい欲しがるんじゃないだろうか。
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