ハーレム系ギャルゲの捨てられヒロインに転生しましたが、わたしだけを愛してくれる夫と共に元婚約者を見返してやります!

ゴルゴンゾーラ三国

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 他人が苦手で、いまだに婚約者がわたし一人しかいないオクトール様だったら、その野望も叶うかもしれないな、なんて、思っていた。
 でも、今は、オクトール様が、わたしの、一夫一妻の夢を叶えてくれそう、だからではなく、オクトール様だからこそ、わたしだけの夫でいてほしいと思うようになってしまっている。

 例え人が苦手でも、王族である以上、わたし以外の人を娶るかもしれないのに。期待して駄目だったときのことを考えたら、夢を見ない方がいいのに。
 そう、思っていたのに――。

「ベルメ、僕は君以外に妻を迎えないことを誓うよ」

 オクトール様が、わたしをまっすぐ見て、言った。驚きの言葉に、目を見開いてしまうのが、自分でも分かる。

「君は第二夫人、第三夫人を増やしてたまるか、なんて言っていたけれど――僕自身、そんな話を持ってこられても受け入れられない。……君がいるから」

 「君と同じように他の者を愛することはできない」とオクトール様は言う。
 どくどくと、心臓が高鳴る。
 オクトール様の一言ひとことを聞き逃さないようにと必死になるのに、どれもこれも、わたしの頭に入ってくるまで時間がかかる。
 こんな風に、言ってもらえると思っていなかったから。
 思わず手を握りしめれば、抱えていた花束の包装が、かさりと音を立てた。

「……わたくしが、オクトール様は一夫一妻の夢を叶えてくれそうな人だから、貴方を選んだとしてもいいとおっしゃるの?」

「その表情でそう言われても、あまり説得力がないよ」

 ……どんな表情を、今、わたしはしているのだろう。鏡がないから分からないし、仮にあったとしても、鏡なんて見ている余裕はない。
 ただ、顔が熱いことだけは、自覚していた。触らなくとも、分かってしまうくらいに、熱が集まっている。

「目的のための手段が好きになってしまってもおかしくないと言ったのは、君自身だよ」

 他人に認められるための手段として選んだ魔法道具の道を気に入っていることをおかしくないか、とオクトール様が言ったとき、確かにわたしはそう返した。
 まさか、あのときの言葉が今になってわたしに返ってくるなんて。

「……っ、そうよ! 好きよ! 貰ったドレスが似合うって言われたり、名前を呼んで手を繋がれたりしたら、オクトール様のことを考えて寝られなくなるくらい好き!」

 普段意識していたお嬢様口調は全部吹っ飛んだ。ありのままの、わたしの言葉。
 その言葉を聞いたオクトール様の顔が真っ赤になる。
 わたしの顔も、今、彼くらい赤いのかもしれない。

 ――ああ、認めて言ってしまった。わたしは恥ずかしさにしゃがみ込む。ドレスの裾が汚れるとか、もうどうでもいいや。これただの私服だから、近日中に着ないといけない用事があるわけでもないし。

「スカートが汚れてしまうよ」

「……分かってる」

 オクトール様から差し伸べられた手を取って、わたしは立ち上がる。花束を片手で持って、スカートの裾をはたいていると、「それが素のベルメ?」と軽くオクトール様に笑われた。
 ……しまった。すっかりお嬢様を忘れていた。
 わたしは扇の代わりに花束で口元を隠す。

「……がっかりしました?」

 わたしがそう言うと、オクトール様は「そんなことない」とほほ笑む。

「初めて君の素の顔を見れたな」

 楽しそうに笑うオクトール様。その笑顔に、きゅう、と心臓が締め付けられるような気持ちになる。
 ああ、わたしに向かって笑うその表情が好きだ。
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