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毒見係は、わたしの料理とは違い、顔をひきつらせていた。サラダならそこまで下手なことにはならないと思うけど……。見た目はともかく、食材を切るだけだし。
恐るおそる、という様子を隠しもせず、毒見係がクレメリア嬢の作ったサラダを口に運ぶ。
「――……これは、流石に、殿下に食べてもらうわけには……。毒ではありませんが」
思い切り顔をしかめて、毒見係がフォークを置いた。よっぽど悲惨な味だったらしい。
「妃に迎える迎えない以前に、条件を出したのはこちらなのだから、一口でも食べるべきではないか?」
そう言ったのはオクトール様だ。毒見係がストップをかけたのであれば、この勝負はわたしの勝ちと言っても過言ではない。それでも、オクトール様は義理を通そうとする。
しかし、その言葉に待ったをかけたのは、毒見係ではなく、クレメリア嬢だった。
「や、やはり、わたくしの作ったものでは殿下の口汚しにもならないのですね……。こちらはおさげします」
しょんぼり、という表情を隠しもせず、毒見係の前にあった皿を持つクレメリア嬢。そんな彼女を見て、オクトール様の護衛はかなりほだされていた。合格にしてしまってもよいのでは? とでも言いたげな表情を皆している。
……なるほど? 今更になって気が付いたが、これが彼女の作戦、ということなのか?
流石に料理初心者とはいえ、料理長に教わったのであれば、包丁を両手で持つわけがない。握り方がおかしくても片手で使うはずだ。
不慣れながらも、健気に料理を頑張るアピールをすることで、なんとか同情で合格を取ろう、ということか。これが天然だったら恐ろしいものだが、流石にこの歳の貴族令嬢が計算以外でそんなことをするわけがない。彼女の家にとっては、二人も娘が王族と婚約できるかもしれないのだ。作戦を練って挑むだろう。
一つの家から複数の娘を王族に嫁がせてはいけない、というのは暗黙のルールであり、チャンスがあれば、と考える家はきっと少なくない。
どうしたって、貴族令嬢が一週間二週間でまともな料理ができるレベルになるとは思えない。ならば、手を変えてくるまで。わたしだって、土壇場で手をわざと切って不慣れアピールするか、少し血迷うくらいだ。
現にオクトール様の護衛を見れば、その作戦が成功している風に見える。
――が。
「ならば、君は不合格で、ベルメの不戦勝ということでいいな?」
オクトール様はきっぱりと言い切った。
一瞬、クレメリア嬢が動揺したのが分かる。オクトール様もほだされると、本気で思っていたのだろう。
一度はオクトール様の出した、魔法道具のテストに合格しているのだから、なんとかなる、という考えがあったのだろう。
一夫多妻が当たり前。第二夫人、第三夫人を取ると思っているのなら、料理が作れなくとも、魔法道具のテストに合格しているから、うまくやれば料理ができなくとも、第二夫人の席に座れると。
恐るおそる、という様子を隠しもせず、毒見係がクレメリア嬢の作ったサラダを口に運ぶ。
「――……これは、流石に、殿下に食べてもらうわけには……。毒ではありませんが」
思い切り顔をしかめて、毒見係がフォークを置いた。よっぽど悲惨な味だったらしい。
「妃に迎える迎えない以前に、条件を出したのはこちらなのだから、一口でも食べるべきではないか?」
そう言ったのはオクトール様だ。毒見係がストップをかけたのであれば、この勝負はわたしの勝ちと言っても過言ではない。それでも、オクトール様は義理を通そうとする。
しかし、その言葉に待ったをかけたのは、毒見係ではなく、クレメリア嬢だった。
「や、やはり、わたくしの作ったものでは殿下の口汚しにもならないのですね……。こちらはおさげします」
しょんぼり、という表情を隠しもせず、毒見係の前にあった皿を持つクレメリア嬢。そんな彼女を見て、オクトール様の護衛はかなりほだされていた。合格にしてしまってもよいのでは? とでも言いたげな表情を皆している。
……なるほど? 今更になって気が付いたが、これが彼女の作戦、ということなのか?
流石に料理初心者とはいえ、料理長に教わったのであれば、包丁を両手で持つわけがない。握り方がおかしくても片手で使うはずだ。
不慣れながらも、健気に料理を頑張るアピールをすることで、なんとか同情で合格を取ろう、ということか。これが天然だったら恐ろしいものだが、流石にこの歳の貴族令嬢が計算以外でそんなことをするわけがない。彼女の家にとっては、二人も娘が王族と婚約できるかもしれないのだ。作戦を練って挑むだろう。
一つの家から複数の娘を王族に嫁がせてはいけない、というのは暗黙のルールであり、チャンスがあれば、と考える家はきっと少なくない。
どうしたって、貴族令嬢が一週間二週間でまともな料理ができるレベルになるとは思えない。ならば、手を変えてくるまで。わたしだって、土壇場で手をわざと切って不慣れアピールするか、少し血迷うくらいだ。
現にオクトール様の護衛を見れば、その作戦が成功している風に見える。
――が。
「ならば、君は不合格で、ベルメの不戦勝ということでいいな?」
オクトール様はきっぱりと言い切った。
一瞬、クレメリア嬢が動揺したのが分かる。オクトール様もほだされると、本気で思っていたのだろう。
一度はオクトール様の出した、魔法道具のテストに合格しているのだから、なんとかなる、という考えがあったのだろう。
一夫多妻が当たり前。第二夫人、第三夫人を取ると思っているのなら、料理が作れなくとも、魔法道具のテストに合格しているから、うまくやれば料理ができなくとも、第二夫人の席に座れると。
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