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ライブのはずが……
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「エントリーナンバー4!キャッチコピーはパパ活地雷ゴスロリ系アイドル!今茂 現(いましげ うつつ)!」
彼女は緊張した面持ちで前に出る。このオーディションに合格すれば、今をときめく異端派アイドル「きゅんはー」のメンバーになれる。私はこのグループに憧れて、今の所属しているグループを捨てて、このオーディションに応募した。
メンバーには「裏切り者」「いっしょに武道館目指そうって言ったじゃない」「現がそんな子だって思わなかった」と泣かれ、マネージャーにも「今のお前で受かる訳ないって。地道にこのグループで力量つけてこう、な?」と説得されたがもう止められなかった。もうすぐ23を超えてしまう。アイドルとしては消費期限切れだ。今、成功しなくちゃ駄目なのだ。焦りと承認欲求だけでその頃の彼女は動いていた。
「え~、まず、このキャッチコピー何?後、名前も独特だね。うちのカラーには合ってるけど」
芸人上がりだという、喋りも上手い、だが冷めた目の「きゅんはー」のプロデューサーを一目見た瞬間、敗北を悟った。この人にはきっとバレる。キャッチコピーと名前のお飾りだけの空っぽだってことが。
「えっと、その……地雷系やゴスロリの服が好きで、パパ活は正義だと思ってて」
「どうしてそう思うの?」
「えっと、その……女の子の権利だと思ってて」
「へぇ、なかなか興味深い事言うじゃない。犯罪も権利ってか!」
会場が失笑の渦に呑み込まれていく。完全にアウェイだった。
「君は「君を死ぬほど愛したい🖤」のメンバーだった子だよね。どうしてわざわざうちに?」
「えっと、売れてるから」言ってしまってからしまったと思ったがもう遅い。プロデューサーの目付きが更に数段冷たくなった。
「まあ、応募してくる位だから自信はあるんでしょ?これで実力無かったら、ねぇ…」
プロデューサーその他お偉いさん達が目配せし合う。
「アイドルの本質は歌と踊りだからね。とりあえずパフォーマンスしてもらおうか。ミュージック、スタート!」
きゅんはーの大ヒット曲、「踊れないならぶちかませ!」が流れ始める。彼女は歌うというより、叫んだ。踊りもアイドルというよりは地を這う獣のようだった。でももう夢中だった。アイドルになりたい。売れたい。注目で空っぽの自分を満たしたい。そんな時、
「うっつー!僕がちゃんと見てるよ。安心してね。君が前のグループを裏切ろうとも、僕は君だけが推しだし大好きだよー!一生追い続けていくから覚悟しとけよー!」
その声を聞いた瞬間、恐怖で全身が凍った。体が動かなくなる。あれだけ声量が出ていたのに、喉がカラカラに乾いて、声が出なくなる。突然止まってしまった彼女に、プロデューサー陣も、観客もひそひそし始める。
「…なんか訳ありなのね。もう君はいいよ。次の方ー!」
プロデューサーの一声で、彼女の青春は終わった。
彼女は緊張した面持ちで前に出る。このオーディションに合格すれば、今をときめく異端派アイドル「きゅんはー」のメンバーになれる。私はこのグループに憧れて、今の所属しているグループを捨てて、このオーディションに応募した。
メンバーには「裏切り者」「いっしょに武道館目指そうって言ったじゃない」「現がそんな子だって思わなかった」と泣かれ、マネージャーにも「今のお前で受かる訳ないって。地道にこのグループで力量つけてこう、な?」と説得されたがもう止められなかった。もうすぐ23を超えてしまう。アイドルとしては消費期限切れだ。今、成功しなくちゃ駄目なのだ。焦りと承認欲求だけでその頃の彼女は動いていた。
「え~、まず、このキャッチコピー何?後、名前も独特だね。うちのカラーには合ってるけど」
芸人上がりだという、喋りも上手い、だが冷めた目の「きゅんはー」のプロデューサーを一目見た瞬間、敗北を悟った。この人にはきっとバレる。キャッチコピーと名前のお飾りだけの空っぽだってことが。
「えっと、その……地雷系やゴスロリの服が好きで、パパ活は正義だと思ってて」
「どうしてそう思うの?」
「えっと、その……女の子の権利だと思ってて」
「へぇ、なかなか興味深い事言うじゃない。犯罪も権利ってか!」
会場が失笑の渦に呑み込まれていく。完全にアウェイだった。
「君は「君を死ぬほど愛したい🖤」のメンバーだった子だよね。どうしてわざわざうちに?」
「えっと、売れてるから」言ってしまってからしまったと思ったがもう遅い。プロデューサーの目付きが更に数段冷たくなった。
「まあ、応募してくる位だから自信はあるんでしょ?これで実力無かったら、ねぇ…」
プロデューサーその他お偉いさん達が目配せし合う。
「アイドルの本質は歌と踊りだからね。とりあえずパフォーマンスしてもらおうか。ミュージック、スタート!」
きゅんはーの大ヒット曲、「踊れないならぶちかませ!」が流れ始める。彼女は歌うというより、叫んだ。踊りもアイドルというよりは地を這う獣のようだった。でももう夢中だった。アイドルになりたい。売れたい。注目で空っぽの自分を満たしたい。そんな時、
「うっつー!僕がちゃんと見てるよ。安心してね。君が前のグループを裏切ろうとも、僕は君だけが推しだし大好きだよー!一生追い続けていくから覚悟しとけよー!」
その声を聞いた瞬間、恐怖で全身が凍った。体が動かなくなる。あれだけ声量が出ていたのに、喉がカラカラに乾いて、声が出なくなる。突然止まってしまった彼女に、プロデューサー陣も、観客もひそひそし始める。
「…なんか訳ありなのね。もう君はいいよ。次の方ー!」
プロデューサーの一声で、彼女の青春は終わった。
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