両性愛は人類愛!

真憂

文字の大きさ
8 / 17

ライブのはずが……

しおりを挟む
「エントリーナンバー4!キャッチコピーはパパ活地雷ゴスロリ系アイドル!今茂 現(いましげ うつつ)!」

彼女は緊張した面持ちで前に出る。このオーディションに合格すれば、今をときめく異端派アイドル「きゅんはー」のメンバーになれる。私はこのグループに憧れて、今の所属しているグループを捨てて、このオーディションに応募した。

メンバーには「裏切り者」「いっしょに武道館目指そうって言ったじゃない」「現がそんな子だって思わなかった」と泣かれ、マネージャーにも「今のお前で受かる訳ないって。地道にこのグループで力量つけてこう、な?」と説得されたがもう止められなかった。もうすぐ23を超えてしまう。アイドルとしては消費期限切れだ。今、成功しなくちゃ駄目なのだ。焦りと承認欲求だけでその頃の彼女は動いていた。

「え~、まず、このキャッチコピー何?後、名前も独特だね。うちのカラーには合ってるけど」

芸人上がりだという、喋りも上手い、だが冷めた目の「きゅんはー」のプロデューサーを一目見た瞬間、敗北を悟った。この人にはきっとバレる。キャッチコピーと名前のお飾りだけの空っぽだってことが。

「えっと、その……地雷系やゴスロリの服が好きで、パパ活は正義だと思ってて」

「どうしてそう思うの?」

「えっと、その……女の子の権利だと思ってて」

「へぇ、なかなか興味深い事言うじゃない。犯罪も権利ってか!」

会場が失笑の渦に呑み込まれていく。完全にアウェイだった。

「君は「君を死ぬほど愛したい🖤」のメンバーだった子だよね。どうしてわざわざうちに?」

「えっと、売れてるから」言ってしまってからしまったと思ったがもう遅い。プロデューサーの目付きが更に数段冷たくなった。

「まあ、応募してくる位だから自信はあるんでしょ?これで実力無かったら、ねぇ…」

プロデューサーその他お偉いさん達が目配せし合う。

「アイドルの本質は歌と踊りだからね。とりあえずパフォーマンスしてもらおうか。ミュージック、スタート!」

きゅんはーの大ヒット曲、「踊れないならぶちかませ!」が流れ始める。彼女は歌うというより、叫んだ。踊りもアイドルというよりは地を這う獣のようだった。でももう夢中だった。アイドルになりたい。売れたい。注目で空っぽの自分を満たしたい。そんな時、

「うっつー!僕がちゃんと見てるよ。安心してね。君が前のグループを裏切ろうとも、僕は君だけが推しだし大好きだよー!一生追い続けていくから覚悟しとけよー!」

その声を聞いた瞬間、恐怖で全身が凍った。体が動かなくなる。あれだけ声量が出ていたのに、喉がカラカラに乾いて、声が出なくなる。突然止まってしまった彼女に、プロデューサー陣も、観客もひそひそし始める。

「…なんか訳ありなのね。もう君はいいよ。次の方ー!」

プロデューサーの一声で、彼女の青春は終わった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

お姫様は死に、魔女様は目覚めた

悠十
恋愛
 とある大国に、小さいけれど豊かな国の姫君が側妃として嫁いだ。  しかし、離宮に案内されるも、離宮には侍女も衛兵も居ない。ベルを鳴らしても、人を呼んでも誰も来ず、姫君は長旅の疲れから眠り込んでしまう。  そして、深夜、姫君は目覚め、体の不調を感じた。そのまま気を失い、三度目覚め、三度気を失い、そして…… 「あ、あれ? えっ、なんで私、前の体に戻ってるわけ?」  姫君だった少女は、前世の魔女の体に魂が戻ってきていた。 「えっ、まさか、あのまま死んだ⁉」  魔女は慌てて遠見の水晶を覗き込む。自分の――姫君の体は、嫁いだ大国はいったいどうなっているのか知るために……

幼馴染以上、婚約者未満の王子と侯爵令嬢の関係

紫月 由良
恋愛
第二王子エインの婚約者は、貴族には珍しい赤茶色の髪を持つ侯爵令嬢のディアドラ。だが彼女の冷たい瞳と無口な性格が気に入らず、エインは婚約者の義兄フィオンとともに彼女を疎んじていた。そんな中、ディアドラが学院内で留学してきた男子学生たちと親しくしているという噂が広まる。注意しに行ったエインは彼女の見知らぬ一面に心を乱された。しかし婚約者の異母兄妹たちの思惑が問題を引き起こして……。 顔と頭が良く性格が悪い男の失恋ストーリー。 ※流血シーンがあります。(各話の前書きに注意書き+次話前書きにあらすじがあるので、飛ばし読み可能です)

いちばん好きな人…

麻実
恋愛
夫の裏切りを知った妻は 自分もまた・・・。

サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします

二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位! ※この物語はフィクションです 流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。 当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。

偽りの愛の終焉〜サレ妻アイナの冷徹な断罪〜

紅葉山参
恋愛
貧しいけれど、愛と笑顔に満ちた生活。それが、私(アイナ)が夫と築き上げた全てだと思っていた。築40年のボロアパートの一室。安いスーパーの食材。それでも、あの人の「愛してる」の言葉一つで、アイナは満たされていた。 しかし、些細な変化が、穏やかな日々にヒビを入れる。 私の配偶者の帰宅時間が遅くなった。仕事のメールだと誤魔化す、頻繁に確認されるスマートフォン。その違和感の正体が、アイナのすぐそばにいた。 近所に住むシンママのユリエ。彼女の愛らしい笑顔の裏に、私の全てを奪う魔女の顔が隠されていた。夫とユリエの、不貞の証拠を握ったアイナの心は、凍てつく怒りに支配される。 泣き崩れるだけの弱々しい妻は、もういない。 私は、彼と彼女が築いた「偽りの愛」を、社会的な地獄へと突き落とす、冷徹な復讐を誓う。一歩ずつ、緻密に、二人からすべてを奪い尽くす、断罪の物語。

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

旦那様、彼は仕事において必要不可欠なパートナーなのです

ましゅぺちーの
恋愛
伯爵夫人フルールは、夫である伯爵と愛人の秘書に長年頭を悩ませていた。 何度夫に苦言を呈しても「彼女は仕事において必要不可欠なパートナーだから」と一切聞く耳を持たない。 困り果てていたそのとき、彼女は突然前世の記憶を取り戻した。 このままだと夫と愛人の真実の愛の犠牲になってしまう。 それだけは御免だ。 結婚五年目にして、彼女はようやく夫を見限り、新たな事業を立ち上げた。 そして事業を成功させたフルールの隣には、いつも同じ男が立っていた。 その男は誰なのかと問い詰める夫に、フルールはニッコリ笑って言った。 「彼は仕事において必要不可欠なパートナーなのです」と。

不機嫌な侯爵様に、その献身は届かない

翠月 瑠々奈
恋愛
サルコベリア侯爵夫人は、夫の言動に違和感を覚え始める。 始めは夜会での振る舞いからだった。 それがさらに明らかになっていく。 機嫌が悪ければ、それを周りに隠さず察して動いてもらおうとし、愚痴を言ったら同調してもらおうとするのは、まるで子どものよう。 おまけに自分より格下だと思えば強気に出る。 そんな夫から、とある仕事を押し付けられたところ──?

処理中です...