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イマジナリーフレンドと致死性の恋
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「何で私が景品持つのよ…」ぶつぶつ言いながら上機嫌の啓の後ろを歩く。
「そういやインターホンに女の人が出たけど…」言葉に詰まる。「彼女?」
啓が答えないうちにアパートに着いてしまう。さっきの女の人らしき人物がでてくる。
「あんた誰?何」
「あなたは、啓の…」
口ごもっていると啓がその女の人に言った。
「あ~ごめん、これ元カノ。お前ちょっと外出てて」
女の人は不機嫌そうに敵意剥き出しで私を睨むと部屋を出ていった。
「…彼女?」「あ~違う違う。今日会ったばっかの女だよ。で、やっぱり戻ってきた訳ね」
私は絶句していた。物が少なくきちんとしていた部屋が思う存分荒れている。タバコの吸い殻と酒の空きビンだらけだ。女物の色んな香水や化粧品の匂いもぷんぷんする。啓はこんなにだらしなかったっけ?
「…指輪、もらったんだ。」
「ふ~ん、そこまでは我慢できたんだ」
「でもね…」苦笑する。「前の生活を思い出したら別の人と結婚なんてできなかった。」
私の中に焼き付いたイメージ。辛い夜にいつも思い出し、夢に見る。
私は寝ていて、日の光で目が覚める。陽当たりがとてもいい部屋。起き上がった先にいたのは、いてほしいのは___
筋トレしてる優一じゃなくて、頬づえついてゲームをしている啓だったんだ。
「だから別れる時最初からそう言ったじゃん。美智留は俺みたいなのじゃないと無理だって。また付き合う?結婚はできないけど。」
「…もう人生棒に振ってもいいんだ。」
私にとって啓への恋は毒だった。恋は病によく例えられるが、これはかなり致死性のものだ。しかし、自分の気持ちに嘘はつけない。健全な方向に行こうとすればするほど苦しいのだ。もう、私は…
啓と堕ちることを決めた。
「指輪、はめかけのまま持ってきちゃった。いる?」
「質屋に売ってパチンコの資金にする」
堕ちるとこまで墜ちてるな。不幸になるのは目に見えてる。でも…
健全そのもので優しい優一と一緒にいるよりも、ずっと心が落ち着くのは何でだろう。
…ああ、そうだ。健全な人を引きずり下ろす事はできない。健全さ故に本当の闇が分からないからだ。啓といると自分の中の闇を取り繕わなくて済む。私の闇を本当に肯定してくれるのはこの人しかいないんだ。
「間違ってるよ!」突然声が響き渡り、驚いて振り向くとカエデがいた。
「え…?カエデが何でここに…?」
「誰と喋ってんの?」
「え、女友達の子だよ。付き合ってた頃も話してた…」
「誰もいないけど」
戸惑う私にカエデは畳み掛ける。
「いい?私はあんたの指南役。今すぐ優一君のところに戻りなさい。その男は駄目。絶対不幸になる。」
「不幸…」私はしばらく考えていたが、とっくに結論はでている事に気づいた。
「カエデ。不幸から産まれる幸せでしか生きられない人間もいるの。それが私。私には太陽みたいな健全さに一生触れ続けるなんて拷問に等しい。それぐらい受け付けないの。今までアドバイスありがとう。でももう消えてほしい。」
カエデは憐れむような目をこちらに向けていたが、「自殺する事になっても知らないからね」と言って去っていった、ように私には見えた。もう自分の感覚に自信がない。
啓といえば、私が喋っているのも構わずにゲームをしていた。ああ、懐かしい。この人生捨ててる横顔。優一より何倍も色気を感じる。顔面で言ったら優一の方が絶対に勝ってるのに。
「啓」
「ん?」
「結婚できなくていいから、ずっと一緒にいよう。前みたいに私の部屋に来て。仕事はしてるの?」
「バイトめんどくさくて止めちった」
「じゃあただで住まわせてあげていいから。前みたいな関係に戻りたい。」
「いいよ~」ゲームから目を上げずに啓が言う。
「俺随分変わったけどね。それでも美智留がいいなら」
「啓は…変わってないよ、本質は。」
「とりあえずコンビニ行かね?俺酒呑みたい」
「行こっか」
「そういやインターホンに女の人が出たけど…」言葉に詰まる。「彼女?」
啓が答えないうちにアパートに着いてしまう。さっきの女の人らしき人物がでてくる。
「あんた誰?何」
「あなたは、啓の…」
口ごもっていると啓がその女の人に言った。
「あ~ごめん、これ元カノ。お前ちょっと外出てて」
女の人は不機嫌そうに敵意剥き出しで私を睨むと部屋を出ていった。
「…彼女?」「あ~違う違う。今日会ったばっかの女だよ。で、やっぱり戻ってきた訳ね」
私は絶句していた。物が少なくきちんとしていた部屋が思う存分荒れている。タバコの吸い殻と酒の空きビンだらけだ。女物の色んな香水や化粧品の匂いもぷんぷんする。啓はこんなにだらしなかったっけ?
「…指輪、もらったんだ。」
「ふ~ん、そこまでは我慢できたんだ」
「でもね…」苦笑する。「前の生活を思い出したら別の人と結婚なんてできなかった。」
私の中に焼き付いたイメージ。辛い夜にいつも思い出し、夢に見る。
私は寝ていて、日の光で目が覚める。陽当たりがとてもいい部屋。起き上がった先にいたのは、いてほしいのは___
筋トレしてる優一じゃなくて、頬づえついてゲームをしている啓だったんだ。
「だから別れる時最初からそう言ったじゃん。美智留は俺みたいなのじゃないと無理だって。また付き合う?結婚はできないけど。」
「…もう人生棒に振ってもいいんだ。」
私にとって啓への恋は毒だった。恋は病によく例えられるが、これはかなり致死性のものだ。しかし、自分の気持ちに嘘はつけない。健全な方向に行こうとすればするほど苦しいのだ。もう、私は…
啓と堕ちることを決めた。
「指輪、はめかけのまま持ってきちゃった。いる?」
「質屋に売ってパチンコの資金にする」
堕ちるとこまで墜ちてるな。不幸になるのは目に見えてる。でも…
健全そのもので優しい優一と一緒にいるよりも、ずっと心が落ち着くのは何でだろう。
…ああ、そうだ。健全な人を引きずり下ろす事はできない。健全さ故に本当の闇が分からないからだ。啓といると自分の中の闇を取り繕わなくて済む。私の闇を本当に肯定してくれるのはこの人しかいないんだ。
「間違ってるよ!」突然声が響き渡り、驚いて振り向くとカエデがいた。
「え…?カエデが何でここに…?」
「誰と喋ってんの?」
「え、女友達の子だよ。付き合ってた頃も話してた…」
「誰もいないけど」
戸惑う私にカエデは畳み掛ける。
「いい?私はあんたの指南役。今すぐ優一君のところに戻りなさい。その男は駄目。絶対不幸になる。」
「不幸…」私はしばらく考えていたが、とっくに結論はでている事に気づいた。
「カエデ。不幸から産まれる幸せでしか生きられない人間もいるの。それが私。私には太陽みたいな健全さに一生触れ続けるなんて拷問に等しい。それぐらい受け付けないの。今までアドバイスありがとう。でももう消えてほしい。」
カエデは憐れむような目をこちらに向けていたが、「自殺する事になっても知らないからね」と言って去っていった、ように私には見えた。もう自分の感覚に自信がない。
啓といえば、私が喋っているのも構わずにゲームをしていた。ああ、懐かしい。この人生捨ててる横顔。優一より何倍も色気を感じる。顔面で言ったら優一の方が絶対に勝ってるのに。
「啓」
「ん?」
「結婚できなくていいから、ずっと一緒にいよう。前みたいに私の部屋に来て。仕事はしてるの?」
「バイトめんどくさくて止めちった」
「じゃあただで住まわせてあげていいから。前みたいな関係に戻りたい。」
「いいよ~」ゲームから目を上げずに啓が言う。
「俺随分変わったけどね。それでも美智留がいいなら」
「啓は…変わってないよ、本質は。」
「とりあえずコンビニ行かね?俺酒呑みたい」
「行こっか」
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