短編集【異世界恋愛/婚約破棄】

柊木 ひなき

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婚約解消されたら、王様に寵愛される騎士になりました(年の差)

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「刀だわ……」

 一ヶ月後。私の刀が完成した。
 口からでまかせを言ったのに、この世界に、本当に日本に似た国があるなんて……。

「さすが、いい腕ね」

 騎士団の方々と刀の話をした翌週、何故かキリアン陛下が、国内に刀鍛冶がいることを突き止めてくださった。
 そして何故か陛下の同行で、私は刀のオーダーメイドをしたのだ。

 そこで購入した刀も良かったけれど、私の身体に合わせてオーダーメイドした刀は、自分の腕のように扱いやすい。
 それに。

「綺麗な刃文……。陛下にもお見せしたいわ」

 うっとりと見つめる。
 午後から陛下の護衛だから、タイミングをみてお見せしよう。




 庭園にいらっしゃると聞き、向かうと。

「あれはプライドが高い。一歩下がって後ついてくるオーガスタ嬢を気に入っていたのだから、今の彼女は受け入れがたいのだろう」

 あれ……とは、カイル殿下のこと?

「何と器の小さい……」

 同感です。悪い予想の通り、殿下は偉そうになるばかりで、剣術の稽古もやめてしまったと聞いた。

「私の騎士としたことでカイルがひねくれたなどと、彼女が気に病んでいなければ良いが……」

 全く気にしておりませんね……。
 頭は良いはずなので勉学と振る舞いで名誉挽回すればよろしいのに、としか。


「……カイルが更生した時のためにと、彼女をそばに置いているのだが」

 まさか……また私を、殿下と婚約させようと……?

「どうしたら良いだろうか。忠誠心もあり、騎士としても有能な彼女を、王太子妃にするのが勿体なく感じている」

 そうですよ。私は剣を持ってこそ真価を発揮するのです。

「だが、王太子妃としても有能だ。……お前は、カイルが王に相応しくなると思うか?」

 問われた宰相様は、しばらく思案する。
 いくら陛下の幼馴染みでご学友でも、すぐには回答できない内容。
 でも、わりと早めに答えが出たようで、にっこりと笑った。


「陛下がオーガスタ嬢とご結婚なさればよろしいかと」

 …………えっ?

「王妃殿下と離縁されてもう十年です。そろそろ新しい恋を始められてみては?」

 王妃でありながら他の男性に嫁ぎたいと言い出して、それを陛下は許した。彼女を愛していたからだと社交界で噂されていたのは、……本当らしい。

「恋という歳でもないだろう……」

 視線を伏せた陛下から、前王妃殿下への愛情を感じた。
 憂いを帯びた表情が、とても美しい人。


「それ以前に、誰が父親と同じ年頃の男に嫁ぎたがる?」
「年齢など関係ありませんわ」

 その言葉に、私は思わず歩み寄っていた。

「40歳など、私にとっては若者でございます」

 私は前世を合わせたら113歳ですので。とは言えないけれど。

「私の恋愛対象年齢は、35から80です」

 80でも33歳年下なので……。
 対象年齢を言ってから、ハッとする。
 陛下は目を丸くしていて、宰相様は口元を押さえて、笑いをこらえていた。


「申し訳ありません……。お話が聞こえてしまい……」

 立ち聞きしていた事実は変えられず、小さくなる。

「それは、良いのだが……」
「陛下。今のオーガスタ嬢は、ご年齢より大人びておられます」

 居心地の悪そうな陛下に、宰相様はそう声をかけた。

「19歳のカイル殿下の母君になられても、問題ないのでは?」
「19歳は赤子ですね」

 本音を言うと、宰相様は今度こそ吹き出した。


「だが……息子と、同じ年頃だ」
「今までは食事の量が足りませんでした。あと一年もすれば背も伸びますし、女性らしくなります」
「そういう問題では……」
「私は、憂いを帯びた美しいキリアン陛下に、今、一目惚れしました」

 今までこんな感情は抱いていなかった。
 この変化は全て、前世の記憶と……儚い表情のとても美しい、陛下のせいだ。

「不敬と処罰を覚悟で申し上げます。キリアン陛下。……私と、恋を始めていただけませんか」

 100年以上も生きていれば、怖いものはない。
 でも、前世でも、オーガスタに生まれてからも、言わないことで後悔した経験は何度もある。

 それに……。
 死は突然訪れる。欲しいものが生きているものならば、ためらうな。
 父がいつも口にしていた言葉だ。


「……私、は」
「陛下。理性的であるのは素晴らしいですが、オーガスタ嬢は大変魅力的な女性です。ためらっていては、すぐに奪われてしまいますよ?」

 宰相様、ありがとうございます。ですが、騎士たちに女傑と呼ばれ始めた私を娶りたいと言ってくれる男性は、今のところ辺境伯のご子息だけです。

「騎士たちの間では、辺境伯のご子息がそろそろご令嬢に求婚するのではないかと噂になっております。ご存知ですよね、オーガスタ嬢?」
「え? ええ、そろそろと申しますか……半月ほど前から……」

 強い女が好きだから嫁に来いと、顔を合わせる度に雰囲気も何もなく言われ続けている。




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