23 / 24
22
しおりを挟む
4月8日。
ホームルームで担任は言った。
「昨日……姫川早苗さんが殺されました」
俺は驚いた……姫川の〝死に方〟に。
現に今までは『事故』で処理されていた。
だが今回は明らかに誰かが殺意を持って、姫川を殺したことになる。
結果だけ見れば同じだが、中身は全く違う。
『事故』はあくまで『偶然』起きる為、そこに『殺意』は存在しない。
しかし殺人は『偶然』では起こらない。殺人は『偶然』ではなく、必然的に起こすもの、つまりそこに『殺意』が存在する。
仮に犯人がただの通り魔で『殺意』の対象が誰でもいいのなら、他者を囮にすることで対処できる。
しかし犯人の『殺意』が姫川に執着しているのだとしたら、最低でも犯人を俺自身で対処しなければならない。
「会長はどう思いますか?」
事の発端を話し、会長に意見を求める。
「姫川さん自身に『殺意』を持ってる人がいるとは考えづらいです。恐らく対象は誰でもよく、姫川さんは『偶然』殺された形になるでしょう」
「会長もそう思いますか……」
「恐らく『変動』を起こせば、『殺意』の対象は別の人に移るので問題ないでしょう」
「……他者を犠牲にする必要はないですよね?」
「犠牲にする必要があるんです」
驚きのあまり自分の耳を疑う。
「……今言ったこと嘘ですよね?」
僅かな希望を込めて聞き返す……だが現実は時に残酷である。
「嘘じゃないですよ……姫川さんを事故から救えば……必ず誰かが事故で死にます」
幾ら目を背けたところで、真実が変わることはない。
「じゃあ姫川を犯人から救えば……」
「必ず誰かが殺されます」
「……姫川を救う為には、無関係な人を犠牲するしかないってことですか?」
「はい」
最悪だ……
俺は顔を下げ、今後のことを考える。
当然一個人を救う為に、他者の命を犠牲にしていい道理はない。
人の命は皆平等で、優先順位など存在しないのだから。
俺の行いは一種の殺人と変わらない。
命に勝手に優劣をつけ、私情で姫川を生かしている。
俺は姫川を救う一方で……人を殺している。
「何落ち込んでいるんですか?」
「……現に関係ない人の命を一人犠牲にしてるんですよ?」
最初の事故の時点で一人は確実に死んでいる。
そしてこれからも犠牲を出し続けなければならない。
「貴方は一つ大きな勘違いをしています」
「……勘違い?」
「貴方が救うのは姫川さんです……その過程で誰が死のうが関係ない筈です」
俺は会長を軽蔑した。
ニュースで人の死を知るだけなら、ただの傍観者でいられた。
死に直接関与していない第三者だったから。
だが今回は当事者……俺の行動一つで無関係の人が死ぬ。
「……本来死ぬことのない人を殺してるんですよ?」
「生態系と同じですよ」
会長の表情は明るかった……〝不自然な程に〟
そこで俺は会長の行動の意図に気づく。
……俺はバカだ。
恐らく会長は、あえて挑発するような言葉選びをした。
自分自身にヘイトを向けさせ、罪に対する『罪悪感』を軽減させる為。
だからワザと自分を悪役に仕立て上げ、責任を押し付けやすい環境を作った。
「……会長に悪役は似合いませんよ?」
「バレちゃいましたか?」
「……ついさっきですけどね」
俺は冷静さを取り戻していた……これなら物事を冷静に見極めることが出来るだろう。
「……会長、何で初めに教えてくれなかったんですか?」
「教えたらやりましたか?」
「そ、それは……」
一概に『やった』とは言い切れない……事実言葉が詰まったのがその証拠だ。
「人は自分の欲望に忠実な生き物です。自分の欲望に従うのが本質であり普通なんです」
「会長は綺麗事言わないんですね……」
人は表面上『聖人』でいようとする。
仮に世間で『他者を犠牲にして救う命は正しいか?』と問いただせば、殆どの人が『間違っている』と答えるだろう……道徳心に基づいた教科書通りの答えで。
だが会長は違う。
会長は『最低限の犠牲』それを理解した上で、姫川を救うことを考えている。
そして人であるなら、会長の考えは正しい。
確かに世間的に見れば、人の命は皆平等かもしれない。
しかし俺一個人の感情だけで言えば、姫川の命は間違いなく最優先事項だ。
「誰かを助ければ誰かが犠牲になる。世界はこのようにバランスを保っています。私達の役目は、人の生の取捨選択をすることです」
「取捨選択ですか?」
「はい……人を救うには必ず、代わりになる『器』が必要なんです」
「……器?」
「簡単に言うと、呪いを肩代わりさせるってことです」
だから犠牲が必要なのか。
一つの死を回避するには、別の一人に死を肩代わりさせる必要がある。
死は本来回避できない……俺は今まで回避できてたと思い込んでいただけ。
本来死を回避するには、対価を支払い、見逃してもらう必要があるのだ。
そして『死の鎖』が切れるまで、対価を支払い続けなければならない。
「会長……俺達って何なんですか?」
別に慰めてもらいたかったワケじゃない……ただ純粋に会長の考えを聞きたかった。
「しいて言うなら……死神ですかね?」
「……死神ですか……確かにピッタリですね」
「私達はヒーローじゃないんです……全員助けてハッピーエンドには出来ません」
ホームルームで担任は言った。
「昨日……姫川早苗さんが殺されました」
俺は驚いた……姫川の〝死に方〟に。
現に今までは『事故』で処理されていた。
だが今回は明らかに誰かが殺意を持って、姫川を殺したことになる。
結果だけ見れば同じだが、中身は全く違う。
『事故』はあくまで『偶然』起きる為、そこに『殺意』は存在しない。
しかし殺人は『偶然』では起こらない。殺人は『偶然』ではなく、必然的に起こすもの、つまりそこに『殺意』が存在する。
仮に犯人がただの通り魔で『殺意』の対象が誰でもいいのなら、他者を囮にすることで対処できる。
しかし犯人の『殺意』が姫川に執着しているのだとしたら、最低でも犯人を俺自身で対処しなければならない。
「会長はどう思いますか?」
事の発端を話し、会長に意見を求める。
「姫川さん自身に『殺意』を持ってる人がいるとは考えづらいです。恐らく対象は誰でもよく、姫川さんは『偶然』殺された形になるでしょう」
「会長もそう思いますか……」
「恐らく『変動』を起こせば、『殺意』の対象は別の人に移るので問題ないでしょう」
「……他者を犠牲にする必要はないですよね?」
「犠牲にする必要があるんです」
驚きのあまり自分の耳を疑う。
「……今言ったこと嘘ですよね?」
僅かな希望を込めて聞き返す……だが現実は時に残酷である。
「嘘じゃないですよ……姫川さんを事故から救えば……必ず誰かが事故で死にます」
幾ら目を背けたところで、真実が変わることはない。
「じゃあ姫川を犯人から救えば……」
「必ず誰かが殺されます」
「……姫川を救う為には、無関係な人を犠牲するしかないってことですか?」
「はい」
最悪だ……
俺は顔を下げ、今後のことを考える。
当然一個人を救う為に、他者の命を犠牲にしていい道理はない。
人の命は皆平等で、優先順位など存在しないのだから。
俺の行いは一種の殺人と変わらない。
命に勝手に優劣をつけ、私情で姫川を生かしている。
俺は姫川を救う一方で……人を殺している。
「何落ち込んでいるんですか?」
「……現に関係ない人の命を一人犠牲にしてるんですよ?」
最初の事故の時点で一人は確実に死んでいる。
そしてこれからも犠牲を出し続けなければならない。
「貴方は一つ大きな勘違いをしています」
「……勘違い?」
「貴方が救うのは姫川さんです……その過程で誰が死のうが関係ない筈です」
俺は会長を軽蔑した。
ニュースで人の死を知るだけなら、ただの傍観者でいられた。
死に直接関与していない第三者だったから。
だが今回は当事者……俺の行動一つで無関係の人が死ぬ。
「……本来死ぬことのない人を殺してるんですよ?」
「生態系と同じですよ」
会長の表情は明るかった……〝不自然な程に〟
そこで俺は会長の行動の意図に気づく。
……俺はバカだ。
恐らく会長は、あえて挑発するような言葉選びをした。
自分自身にヘイトを向けさせ、罪に対する『罪悪感』を軽減させる為。
だからワザと自分を悪役に仕立て上げ、責任を押し付けやすい環境を作った。
「……会長に悪役は似合いませんよ?」
「バレちゃいましたか?」
「……ついさっきですけどね」
俺は冷静さを取り戻していた……これなら物事を冷静に見極めることが出来るだろう。
「……会長、何で初めに教えてくれなかったんですか?」
「教えたらやりましたか?」
「そ、それは……」
一概に『やった』とは言い切れない……事実言葉が詰まったのがその証拠だ。
「人は自分の欲望に忠実な生き物です。自分の欲望に従うのが本質であり普通なんです」
「会長は綺麗事言わないんですね……」
人は表面上『聖人』でいようとする。
仮に世間で『他者を犠牲にして救う命は正しいか?』と問いただせば、殆どの人が『間違っている』と答えるだろう……道徳心に基づいた教科書通りの答えで。
だが会長は違う。
会長は『最低限の犠牲』それを理解した上で、姫川を救うことを考えている。
そして人であるなら、会長の考えは正しい。
確かに世間的に見れば、人の命は皆平等かもしれない。
しかし俺一個人の感情だけで言えば、姫川の命は間違いなく最優先事項だ。
「誰かを助ければ誰かが犠牲になる。世界はこのようにバランスを保っています。私達の役目は、人の生の取捨選択をすることです」
「取捨選択ですか?」
「はい……人を救うには必ず、代わりになる『器』が必要なんです」
「……器?」
「簡単に言うと、呪いを肩代わりさせるってことです」
だから犠牲が必要なのか。
一つの死を回避するには、別の一人に死を肩代わりさせる必要がある。
死は本来回避できない……俺は今まで回避できてたと思い込んでいただけ。
本来死を回避するには、対価を支払い、見逃してもらう必要があるのだ。
そして『死の鎖』が切れるまで、対価を支払い続けなければならない。
「会長……俺達って何なんですか?」
別に慰めてもらいたかったワケじゃない……ただ純粋に会長の考えを聞きたかった。
「しいて言うなら……死神ですかね?」
「……死神ですか……確かにピッタリですね」
「私達はヒーローじゃないんです……全員助けてハッピーエンドには出来ません」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
少しの間、家から追い出されたら芸能界デビューしてハーレム作ってました。コスプレのせいで。
昼寝部
キャラ文芸
俺、日向真白は義妹と幼馴染の策略により、10月31日のハロウィンの日にコスプレをすることとなった。
その日、コスプレの格好をしたまま少しの間、家を追い出された俺は、仕方なく街を歩いていると読者モデルの出版社で働く人に声をかけられる。
とても困っているようだったので、俺の写真を一枚だけ『読者モデル』に掲載することを了承する。
まさか、その写真がキッカケで芸能界デビューすることになるとは思いもせず……。
これは真白が芸能活動をしながら、義妹や幼馴染、アイドル、女優etcからモテモテとなり、全国の女性たちを魅了するだけのお話し。
俺が宝くじで10億円当選してから、幼馴染の様子がおかしい
沢尻夏芽
恋愛
自他共に認める陰キャ・真城健康(まき・けんこう)は、高校入学前に宝くじで10億円を当てた。
それを知る、陽キャ幼馴染の白駒綾菜(しらこま・あやな)はどうも最近……。
『様子がおかしい』
※誤字脱字、設定上のミス等があれば、ぜひ教えてください。
現時点で1話に繋がる話は全て書き切っています。
他サイトでも掲載中。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
ト・カ・リ・ナ〜時を止めるアイテムを手にしたら気になる彼女と距離が近くなった件〜
遊馬友仁
青春
高校二年生の坂井夏生(さかいなつき)は、十七歳の誕生日に、亡くなった祖父からの贈り物だという不思議な木製のオカリナを譲り受ける。試しに自室で息を吹き込むと、周囲のヒトやモノがすべて動きを止めてしまった!
木製細工の能力に不安を感じながらも、夏生は、その能力の使い途を思いつく……。
「そうだ!教室の前の席に座っている、いつも、マスクを外さない小嶋夏海(こじまなつみ)の素顔を見てやろう」
そうして、自身のアイデアを実行に映した夏生であったがーーーーーー。
クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について
沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。
かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。
しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。
現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。
その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。
「今日から私、あなたのメイドになります!」
なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!?
謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける!
カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる