思惑交錯チョコレート

秋野小窓

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「ええっと、じゃあつまり、トーコさんは二人のことを応援したかっただけってことですか?」
「そ、そういうことです……」
「なぁ~んだ!」

 私が頷くと、小松君に負けないくらいの大声で妹さんが言った。この子、顔は全然お兄さんに似てないのに、背が高いところと声の大きさはちょっぴり小松君と似ている気がする。

 こちらからすれば妹さんが二人の関係を知っているということの方が驚きなのだが。現にケイ君も、妹さんの存在は知っていたようだが、自分の恋心が彼女にバレないようにと必死な様子だった。小松君が呆気なく「こいつならチョコのことも全部知ってるぞ」と暴露するまでは。
 もう、それなら早く言ってよ!という話なのだが、小松君が口を挟もうとするたびに妹さんから「バカ兄ィは黙ってて!」と制止されるものだから、ややこしかった。

「だって、先生もトーコさんもどう見ても隠し事してるし!意味深な視線送りあってるし!めちゃくちゃ怪しかったですからね!?」
「それはその、私も嘘ついちゃったし、それをどこまで小松君……お兄さんが知ってるのか分からなかったから……」

 助けてケイ君、と思い横目で彼を見るが、助けを必要としているのはむしろケイ君のようだった。耳を塞ぐように両手で顔を挟んでしゃがみ込んでいる。

「ケイ君?大丈夫?」
「小松さんが……知ってた……4年前から……」
「おーい、ケイ。戻ってこーい」

 小松君が隣に腰を落として揺さぶっている。なかなかにカオスな状況だ。

「まあ、妹さんも、二人のことは賛成なんだもんね?」
「そうですよ!二人にはさっさとくっついてほしかったんですから!」

 よかった。それなら何も問題ないじゃないか。
 ホッとして笑みをこぼす。

「あの!もしかして」
「ん?」

 ぐいっと二の腕を引かれ、顔を近づけられる。何かと思ったら、「トーコさんも腐ってます?」と小声で囁かれた。

 クサッテ……?
 私、高校生の女の子に、人間腐ってるって言われたの!?
 投げつけられた単語の意味を理解した途端、フツフツと怒りが沸いてきた。

「なんで初対面のあなたにそんなこと言われなきゃいけないんですか?」
「え、あの」
「そりゃ、決して褒められた人間ではないですけど!そこまで言われるような筋合いは……」
「すみません!そうじゃなくて!」

 なんなの、この失礼な子!謝って許されることとそうじゃないことがあるよ!

「帰ります!ケイ君、お幸せにね。小松君、ケイ君のことよろしくお願いします。あと、妹さんの教育もきっちりお願いしますね!」
「え!?トーコさん?」
「それじゃ」

 まったく、人のことを舐めるのも大概にしてほしい。深夜の路地裏で、私は一体何に巻き込まれていたのか。
 これで幸せにならなかったら怒るからね、ケイ君!
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