ひとりで生きたいわけじゃない

秋野小窓

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【3】セブにて

3-5:城崎side

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 メッセージの着信音で起きる。寝ぼけた頭でも、直居君が一人で出かけようとしていることを瞬時に理解し引き留めた。過保護かもしれないが、こんな早朝に一人歩きさせるのは心配だ。

 昨日完全にオフモードに切り替わってしまったせいで、なかなか脳が起きてくれない。のろのろと身支度し、直居君についていく。
 少し前を歩く直居君は、ぴょこぴょことはしゃいでいてとても可愛い。花を見たり、景色をスマホで撮影したりしながら進んでいく。ときどき振り返ってこちらの様子を見てくるのが、散歩中に飼い主を見上げる小型犬みたいで愛おしい。一人で行かせなくて本当によかった。

 ビーチに着くと、直居君が俺の手を握って誘導してくれる。俺から触れたことは今まで何回かあったが、彼から触れられるのは初めてだ。波が足に当たった瞬間そのことに気づきハッとする。

「起きました?」

 手を握ったまま、首を傾げて顔を覗き込んでくる直居君。何のご褒美だろうか。

「城崎さん、あれ何ですかね?」

 波と戯れていた直居君が指差す先を見ると、デッキにパラソル付きのベッドが並んでいる。

「ああ、コレ、自由に使っていいみたいだね。あそこで寝ながら海を見てられるよ」
「えー!すごい!映画みたい!」

 たしかに、白で統一されていておしゃれだ。直居君があそこで寝そべっていたら、絵になるだろうな。

「あとでのんびりしたいときに行ってみようか」
「はい!」
「そろそろ朝食行こう」

 シャワーで足元の砂を流し、サンダルのままレストランに向かう。朝食のビュッフェにも直居君は一つひとつ感動している。

「散策したいところはさっきので行けた?」

 咀嚼していたオムレツを飲み下しながら横に首を振る。

「まだです。あっちのメインの建物の方にショップもあるみたいですし、プールも入りたいですし……」

 すっかりこのホテルを気に入ったようだ。

「あ、でも、今日全部じゃなくて大丈夫です!朝早く起こしちゃってすみませんでした」
「いや、早起きしてよかったよ」

 可愛い姿が見られて、手まで握ってもらって。早起きは三文の徳とはよく言ったものだ。

「まだ眠いんじゃないですか?」
「ちょっとね。食べ終わったら、部屋で休んでもいい?」
「ゆっくり休んでください」
「直居君は?散歩してくる?」

 早朝のビーチは心配だったが、もう他の観光客も従業員もたくさんいる。人目のあるところならホテル内を探検してもらっても大丈夫だろう。

「んー、僕もお部屋でゴロゴロします」
「退屈じゃない?」
「はい。お散歩はまた、一緒に行きましょう」

 気を使わせてしまったか。まあでも、一緒の方が安心なのは間違いない。

 それから部屋に戻り、2時間ほど眠った。昼からは、土産物の調達にスーパーマーケットへ向かう。
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